原水禁大会パンフ
2002年大会パンフ

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  ミサイル防衛

 NPRは、冷戦時代の核の三本柱は、大陸間弾道弾(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、爆撃機だったが、これからは新三本柱で行くとしています。そこでは、旧三本柱からなる核戦力と非核戦力を合わせたものが、一つの柱となります。後の二つの柱は、新しい事態の出現に対応できるようなインフラ、そしてミサイル防衛です。三本柱の一つとなったミサイル防衛ですが、明確な計画があるわけではありません。「ミサイル防衛は、多層で行うのがもっとも効果的である。つまり、いかなる射程の弾道ミサイルも飛翔のあらゆる段階で迎撃できることである」。発射直後の燃料が燃えている段階(ブースト段階)、大気圏外を飛んでいる中間軌道(ミッドコース)段階、大気圏内に落ちてくる最終(ターミナル)段階のすべてで迎撃を試みるというわけです。しかし、「ミサイル防衛は、他のあらゆる軍事システムと同様、一〇〇%有効でなくてもいい」と弱気です(敵が攻撃を断念することを期待しているようですが、敵が逆に、弾頭やミサイルの数を増やして応じれば軍拡競争の始まりです)。そして、陸上配備の低高度地域防衛用改良型パトリオット「PAC3以外、配備するシステムの選択を行っていない」と言います。米国全体を長距離弾道ミサイルから守る全土ミサイル防衛(NMD)と、展開した米軍などの狭い範囲を中・短距離弾道ミサイルから守る戦域ミサイル防衛(TMD)というクリントン政権時代の分類で行くと、PAC3は後者です。ブッシュ政権は、TMDも全土防衛用に組み入れる計画ですが、PAC3はそのためには開発されていませんから、決定済みというのはTMD用のことです。日本全土を北朝鮮からの攻撃に対してPAC3だけでカバーするには一〇〇カ所に配備が必要との国防省の試算がありますが、実際に迎撃できるかどうかは別問題です。
「緊急ミサイル防衛能力を提供しうる中・長期(二〇〇三年〜二〇〇八年)オプションがいくつか検討中である」として次のような例をあげています。

(1)
ブースト段階用レーザーシステム搭載機一機(あらゆる射程に対処)、
(2)
初歩的地上配備中間飛翔段階用システム(全土防衛用に少数配備)、
(3)
イージス艦システム一隻(短・中距離射程に対する初歩的中間飛翔段階用)。緊急というのは実用性を無視して配備してみるということですが、それさえ定かではありません。
 
(2)
はクリントン政権下で開発されてきたNMDの迎撃ミサイルを実験用と称してアラスカに五基ほど置いておいて、いざとなったら防衛にも使うとの計画ですが、役に立つような状態では全くありません。
(3)
は、日本が関係しているNTW(海軍海域防衛)と呼ばれてきたシステムです。ただ、NTWは、ブロックIと
II
の二段階に分けて開発されており、日本が技術協力をしているのは
II
の方で、米国が急いで配備しようとしているのはIです。もっともIは、開発を中止して、
II
に集中するとの話が出ては消えているので、最終的にどうなるかはわかりません。ブッシュ政権は、海上配備の米国全土防衛システムに
II
を組み入れる意向を示しています(移動式のNMDを禁止したABM制限条約からの脱退を米国が決めた一つの理由です)。この場合日本との再交渉が必要になると米国側も述べています。TMDとNMDはまったく別物だと国民に説明してきた日本政府は、直ちに米国に協力中止を申し入れる責任を国民に負っています。
 次のページに、TMDの開発状況を示してあります。一九九四年〜二〇〇一年まで国防次官補として、ミサイル防衛の実験・評価の責任を負っていたフィリップ・コイルの論文をまとめたもので、一年前の計画と現在の計画を比べる形をとっています。コイルは、開発そのものに反対しているわけではありませんが、現実に存在しない防衛に基づいて戦略決定をすべきではないと言います。そして、一九九九年に北朝鮮を訪れミサイルの開発・実験の中止を説得したペリー元国防長官こそ、米国がこれまで開発したもっとも費用効果の高いミサイル防衛システムだと述べています。

主要TMD(戦域ミサイル防衛)システムの開発状況

 

THHAD(高高度広域防衛)

NTW(海軍戦域防衛)

PAC3(改良型パトリオット)

NAD(海軍地域防衛)

陸上 上層(40km以上)

海上 上層(100km以上)

陸上 下層

海上 下層

防衛対象 軍隊、近くの市民、インフラ 航空母艦戦闘群、近くの領土、市民
狭い地域の米軍及び同盟軍の軍隊
前方展開の海軍艦船
迎撃対象 短・中距離ミサイル(終末段階) 中距離ミサイル(中間飛翔段階)
短距離ミサイル(スカッド)飛行機、巡航ミサイル 短距離ミサイル飛行機、巡航ミサイル
配備計画
(1年前)

2007−8年に本格生産
(2年以上の遅れ)

ブロックII本格生産2007年春。配備2010年末前

2001年末、本格生産決定
2001年12月14日中止発表
(ABM条約脱退声明の翌日
原因:コスト増大とスケジュールの遅延
(何らかの形で復活と予想されている)
配備計画  
(現在)
2010年以降に配備
(改良型の迎撃実験は2004年以降。)
配備2010年末以降
(ブロックIを2005年緊急配備?)
2002年末、本格生産決定
(これは運用実験完了前)2005年頃本格配備。
少数がすでに配備用に提供。(実験終了前)
迎撃実験 1995−1999年: 11回開発飛翔実験。(8回迎撃実験)
6回連続失敗。99年に2回成功。その後中止して、改良型ミサイルの開発中
1月にブロックI最初の実験「成功」
 ブロックIIはNMD用とする可能性も 海上配備中間飛翔段階または、ブースト段階用。
1997−2001年に11回飛行実験。 (4回迎撃実験)
一度に2〜3のターゲットを対象。2回は一つずつミス。
2月に運用実験開始。
Arms Control Today, May 2002 より作成

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