原水禁大会
2003.8 

被爆58周年原水爆禁止世界大会基調

I.はじめに

 ヒロシマ・ナガサキに原子爆弾が投下されたあの暑い夏の日から58回目の8月を迎えました。私たちは、アジアへの侵略戦争の反省とともに、あの惨劇を再びこの地球上に起こしてはならないと決意し、世界に向かって非核・平和、核廃絶、核被害の根絶などを訴えてきました。こうした私たちの願いは世界の共通の願いをもつ人々を結びつけ、政府や国際社会を動かす力となってきています。
 しかしこのような私たちの願いと行動にもかかわらず、世界はいまだ「核」と「戦争」の間をさまよっています。21世紀こそ20世紀の負の遺産を精算し、「核も戦争もない世紀」にしようとの決意も、アメリカ・ブッシュ政権の登場によって打ち砕かれ、世界に混乱と不安がもたらされています。
 また、地球上には、いまだ3万発ともいわれる核弾頭(注1)が存在し、人類は破滅の危機から脱却できずにいます。あらためて私たちに、「いかなる国のいかなる核にも反対する」原水爆禁止運動の原点を踏まえ、平和・核廃絶・脱原発・ヒバクシャ援護などの力強い運動を推進する必要があります。

II.平和・核軍縮への課題

1.世界に破壊と混乱・不安をもたらすアメリカ・ブッシュ政権

(1)単独行動主義をとる超軍事国家アメリカ
 02年度のアメリカの軍事費は約98兆円、世界の軍事費の43%を占めるほどの超軍事国家になっています。ブッシュ政権は、その世界最強の軍事力を背景に自国の価値観や利益を優先し、単独行動主義をとり続けている好戦的な政権です。それを支えているのがネオコン(新保守派) (注2)といわれる軍事優先主義者グループです。
 9.11事件を契機に、アフガニスタンへ武力攻撃を行い、ついで大量破壊兵器の脅威を取り除くという口実の下にイラクに侵攻し、占領を続けています。イラク攻撃は国際世論や国連、国際法を無視した行動で、攻撃の口実とした大量破壊兵器はいまだに見つかっていません。それどころか、侵攻した米英軍によって劣化ウラン弾やクラスター爆弾、燃料気化爆弾など非人道兵器を大量に投下し、多くのイラク国民が傷つき、殺されました。

(2)新たな戦争の危機を高めるブッシュの世界戦略
 ブッシュ政権は、「国家安全保障戦略」、「大量破壊兵器と闘う国家戦略」、「核態勢の見直し」(注3)などによって核兵器保有を正当化するだけでなく、先制核攻撃さえ公然と表明するにいたりました。そして5キロトン以下の小型核兵器研究への意欲が示すように、核兵器使用の危険を強めています。
 アメリカが「悪の枢軸」と名指ししたイラクの次にターゲットにあげている国は、イランや朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮と略)です。北朝鮮はNPT体制(注4)から離脱宣言し、核保有を明言しています。またイランにも核開発の疑惑が浮上してきました。しかしそのことがアメリカの武力行使を正当化する理由にはなりません。とくに北朝鮮への軍事的圧力は、北朝鮮のいっそうの核兵器開発、さらには軍事的暴発の危険を伴います。武力でなく、対話による解決こそ最善の方法であることを私たちは確認しなければなりません。

2.消えぬアメリカ・ロシア間の核戦争の危険

 冷戦が終えんし、ソ連邦の消滅により米ロ間の核戦争の危険は去ったように見えます。
 しかし、両国は依然として戦略核の警戒態勢(アラート)を維持し続けています。戦力的には圧倒的にアメリカがロシアより優位に立っているのですが、逆にそのことがロシアへの強い圧力となっています。
 大陸間弾道弾は米ロ間の到達に30分の時間が存在しますが、原子力潜水艦の場合はわずか10分ほどで到達が可能と言われています。このためレーダーの故障を始めとするさまざまな事故による偶発的な核戦争の危険が、常に存在しています。私たちは、米ロ両国が警戒態勢の停止、戦略核ミサイルから核弾頭の取り外しなどを求めていかなければなりません。

3.アメリカに追随する日本・小泉政権の動きと私たちの取り組み課題

(1)北東アジアの緊張緩和にむけた課題
 アジアでは、北朝鮮を含む北東アジアの緊張緩和と相互安全保障の枠組みを確固としたものにすることが求められています。北朝鮮のNPT脱退と核兵器の開発は、北東アジアの緊張を高めています。北朝鮮に対して日本は、日朝ピョンヤン宣言に基づく国交正常化交渉の進展と対話による核問題や拉致問題の解決、核開発政策の放棄を強く求めるべきです。
 しかしそのための積極的なイニシアチブをとるべき立場にある日本の小泉政権は、一貫した政策をもっていません。むしろ北朝鮮敵視政策に傾いているとみえます。
 ヒロシマ・ナガサキのヒバクを体験した日本は、北東アジアの非核地帯化実現のために積極的に提案し、行動すべきです。そのためにもアジア各国の市民との連帯した取り組みが必要です。とくに北東アジア非核地帯化構想は、原水禁世界大会のなかで長年にわたって取り上げ、議論し、行動に結びつけてきました。今年も主要なテーマとして取り上げ、議論を深めていきます。

(2)軍事強化と日米同盟の強化がすすむ日本
 小泉政権は、有事関連三法案とイラク特措法を成立させ、自衛隊海外派兵の準備を進めています。すでに日本は、軍事費においても世界第3位となる軍事大国となり、日米軍事同盟強化も進んでいます。
 中でもMD(ミサイル防衛)システムの導入は問題です。MDに関してはこれまで研究だけに限定していましたが、パトリオット(PAC3)とイージス艦発射型の2段階防衛システムをアメリカから購入しようとしています。しかしMDシステムは技術的にはきわめて不安定、未完成の技術で、費用も膨大で、防衛費の大幅な増額をもたらすのは確実で、その負担は国民にまわってきます。また日本がMDシステムを導入することによって、北朝鮮との緊張を高めるだけでなく、中国・韓国を含むアジア全体の軍事力強化と不安定をもたらすでしょう。私たちは、MDシステムについても議論を深め、反対運動を広げていかなければなりません。
 一方、横須賀、佐世保、ホワイトビーチに原子力潜水艦(以下「原潜」)の出入港が繰り返されています。原子力艦船の事故は、海洋や寄港地周辺で深刻な核被害を引き起こすことが指摘されています。2008年には、空母キティーホークの後継艦として原子力空母が横須賀を母港としようとしています。30万KW級とも言われる原子炉を搭載した空母が、往来の激しい東京湾などで動き回ることは危険極まりないものです。原潜の出入港とともに原子力空母の母港化に反対していくことは重要な課題です。

(3)核廃絶・平和を求める私たちの課題
 こうした日本の軍事力強化は、北朝鮮の脅威を口実としていますが、アメリカのネオコンに共鳴する日本の保守派の台頭も無視してはなりません。日本の核武装を主張する政治家が現れ、またそのことに強い拒否感をもつ政治家が少なくなっていることに、私たちは強い警戒心をもたなくてはなりません。
 世界で1000万人以上の人々がアメリカのイラク侵攻に反対し、反戦・平和の行動を起こしました。日本でも多くの人たちが立ち上がりました。私たちはこうした平和を求める人々とさらに連帯を強め、核廃絶・平和の運動を広げていかなければなりません。私たちは、憲法前文や9条の改憲を許さず、非核三原則の堅持と法制化、非核自治体運動の強化などの非核政策の強化を求めると同時に、有事法制の発動を許さない運動などをねばり強く続けていくことが重要です。
 

4.核拡散防止体制のほころびと国際的な連帯運動の必要性

(1)核拡散への懸念と核戦争の危険
 アメリカは核軍事力をますます強固なものにしょうとしていますが、それに刺激されてロシア、中国の核軍拡が懸念されます。台湾もパトリオットの導入を決めました。日米台のMD構想進展のなかで、中国はミサイルや核兵器などの近代化を急ぐでしょう。ロシアでは、廃棄すべき戦略ミサイルの処置に困る一方で、核兵器の近代化を進めています。さらに核物質、核技術の国外流失も大きな問題です。そしてなにより問題なのは、米ロの間で偶発的核戦争の可能性がいまだ存在していることです。
 インド、パキスタン、イスラエルといったNPT未加盟国の核兵器についても、廃棄の具体的な道筋は見えてきません。インド・パキスタンでは、領土問題・民族・宗教問題などが絡み合い、緊張と緊張緩和の動きを繰り返しています。核兵器が完全放棄されない限り、核戦争の危険は絶えず存在し続けます。
 また北朝鮮の核開発問題に示されるように、ほころび始めている核拡散防止体制をどう立て直すかは大きな課題です。核兵器の垂直と水平の拡散を押しとどめ、核軍縮・核廃絶を実現するために、核の「平和利用」という抜け道を使った核兵器開発許さない、核絶対否定の立場に立った行動が、いまほど求められるときはありません。

(2)市民の活躍が求められる国際的な核廃絶・平和運動
 国際的な核軍縮の議論の中に、アメリカや北朝鮮などを引き戻すことが重要になっています。そのためにも2005年のNPT再検討会議は数少ない国際的な議論の場です。NPT体制の機能が「解体」しつつあるなかで、再度国際的な議論と共通認識をつくりあげることが必要です。
 国際的な核軍縮議論には、政府だけではなくNGOなど市民の活躍が求められています。イラク反戦での1000万を超える市民の行動、対人地雷禁止条約を成立させた市民の運動、ハーグ平和アピール会議、反グローバリゼーションの運動など、さまざまな運動と反核運動が結びつき、協力し、何よりもまずアメリカの好戦政策や核軍拡政策に反対すること、国際的な核廃絶・平和運動を大きく飛躍させることが求められています。

III.脱原発に向けた課題

1.原発にたよらないエネルギー政策の確立とプルトニウム利用の放棄

(1)脱原発にむけた世界の流れ
 核兵器廃絶とならんで脱原発の課題も原水禁運動の柱です。ヒバクシャをこれ以上作り出さないことは、核の「平和利用(商業利用)」と言われている分野においても同じです。イラク攻撃で使用された劣化ウラン弾の一部は、核の「平和利用」で生み出された核のゴミを利用して製造されています。こうした核の軍事利用、平和利用の区別があいまいになっているなかで、世界のヒバクが広がっているのです。
 原子力「平和利用」の象徴である原子力発電(以下原発)に対しては、ドイツ、ベルギーなどヨーロッパでは脱原発の動きとして定着しつつあります。また隣国の台湾でも、政権与党の中で脱原発の新たな動きが生まれています。脱原発は、着実に世界の流れとなりつつあります。

(2)硬直した原子力政策に固執する日本
 日本では、硬直した原子力政策にいまだ固執し、現在52基の原発を持ち、核燃料サイクル(注5)路線を放棄していません。
 昨年、8月29日の東京電力の原発事故隠しの発覚に端を発した一連のトラブル隠しは、あらためて原発の安全神話を崩壊させ、日本の原子力行政の欠陥を示しました。現在も東京電力の原発が十数基停止したままです。政府・電力会社はこの停止によりこの夏の電力危機キャンペーンを展開し、原発の必要性を訴えていますが、私たちは、省エネ・節電を進めると同時に、生活・社会の質を見直すよう訴え、これ以上原発が必要ないことを、この夏、証明しようではありませんか。
 また、一連のトラブル隠しによる欠陥原発への維持基準の導入(注6)は、住民の求める安心・安全に応えるものではないばかりか、原子力安全行政の後退であり、認めるわけにはいきません。特に老朽化原発が増え続けるなかで、東海地方をはじめ各地で大地震が予測され、原発震災に結びつくことが懸念されています。老朽化原発の廃炉をめざすとともに維持基準の導入に反対していきます。

(3)行き詰まりをみせるプルトニウム利用路線
 すでに、日本の核燃料サイクル路線は、福島、新潟、福井の各県でMOX利用計画が頓挫し、「もんじゅ」では、昨年の名古屋高裁判決で、司法が初めて「もんじゅ」の欠陥を認め、安全審査に瑕疵があることを指摘し、安全審査のやり直しを求める画期的な判決が出されました。また、六ヶ所再処理工場では、使用済み燃料貯蔵プールの欠陥工事が露呈し建設も停滞しています。まさにプルトニウム利用路線は行き詰まりをみせています。
 にもかかわらず原発推進派は、六ヶ所再処理工場の建設を依然として進め、いまだMOX利用計画も放棄していません。また、国は「もんじゅ」の高裁判決を不服として上告し、その間、改良工事を進めるなど、既成事実を積み上げようとしています。これらは硬直した核燃料サイクル路線が引き出したもので、国際公約上、核武装につながる余剰プルトニウムを持たないという立場からでて来る、矛盾した政策です。すでに破綻が明らかになったプルトニウム利用路線からの完全撤退を求めることが現実的であり、核武装への道を閉ざす道へのひとつでもあります。

(4)行き場のない核のゴミ
 むつ市をはじめ各地で中間貯蔵施設建設が進められようとしていますが、使用済み核燃料の再処理を前提とした政策の破綻が明らかないま、そのまま核のゴミ捨て場にされる可能性すらあります。50年後に搬出するという具体的見通しがないまま、補助金を当てに作られようとする無責任極まる中間貯蔵に対し、建設反対を訴えることが必要です。
 原発は、当初から「トイレなきマンション」と言われていたほど、核のゴミ問題を根本的に抱えていました。昨年から原子力環境整備機構が、高レベル放射性廃棄物の受け入れ自治体を探すために全国に公募をかけています。地下深く埋め捨てる処分方法にも問題があると指摘されるうえに、いまだ国民的議論も行われていません。各地に核のゴミ捨て場を作らせないように運動を強めていきます。

(5)脱原発にむけた取り組み課題
 原子力政策の転換とプルトニウム利用路線からの撤退を求めるのと同時に、原発の新増設(泊、大間、東通、浜岡、上関、川内など)や六ヶ所村へのITER(国際熱核融合実験炉)の誘致、そして台湾やアジアへの原発輸出など、世界の脱原発の流れから孤立する動きに歯止めをかけることが必要です。
 国際的な連帯を強め、新たな危険が作り出されることを訴えていかなければなりません。同時にJCO臨界事故など、事故の教訓を風化させず、被害者の補償を実現すること、また原発労働者の被爆労働裁判に対しても、支援と連帯を広げていくことが重要になっています。

2.脱原発にむけたエネルギー政策の確立へ

(1)求められる社会構造の変革
 現在の社会が抱える根本的な問題は、大量のエネルギーを浪費していることです。大量生産、大量消費という社会のあり方をまず変える必要があります。そのためにも省エネルギーや節電を心がけると同時に、大量生産、大量消費を支える社会構造の変革もなされなければなりません。特に東京電力の事故隠し以来、多数の原発の停止の中で迎える夏場の電力消費について、これを契機に原発の見直しについて議論を起こし、原発に頼らない社会像を描くことが必要です。

(2)再生可能なエネルギーへの転換
 地球温暖化を防ぐために京都議定書で示されたCO2の削減をクリアーし、さらにそれ以上の排出制限を達成することが、国際的にも求められています。そのためにもエネルギー多消費型社会からの転換が急がれています。
 原発にかわるエネルギーの開発・普及もこれからの運動の重要なポイントになります。国内外の太陽光、風力、バイオマスなど再生可能なエネルギーの実践に学び、国内での展開の道すじをつけることが必要です。
 8月5日の国際会議や分科会での報告、そして平和フォーラム主宰の「エコロジー社会構築プロジェクト」(注7)の成果などを運動に結びつけ、脱原発社会に向けたエネルギー政策の転換をはかることが重要です。

IV.ヒバクシャへの援護と連帯の課題

1.早急な対応が求められる被爆者援護法の改正

 現在、広島・長崎の原爆被害の被爆者は、279,052人(2003年3月31日)が被爆者健康手帳を取得しています。そして、いまもなお1000人前後の人々が新たに被爆者健康手帳を取得してヒバクシャとなっています。そのヒバクシャも年々高齢化し、悲願である国家補償の明記や在外ヒバクシャの援護の問題など被爆者援護法の改正は緊急の課題となっています。
 特に在外ヒバクシャ問題は、日本の戦争責任と戦後補償の課題とあいまって、いままで不十分な対応しかしてこなかった日本政府に対し、在外ヒバクシャの願いを実現させなければなりません。郭貴勲さんの大阪高裁判決(2002年12月)など一連の在外ヒバクシャ裁判で国の被爆者援護法の適用が認められた画期的な判決では「ヒバクシャはどこにいてもヒバクシャ」であると断じ、日本国外に居住するヒバクシャにも被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給が認められました。
 しかし、適用に当たっては、高齢化し病弱の在外ヒバクシャにも来日し、申請や更新をしなければならないことを条件としたり、葬祭料が遡って支給されないなど、その扱いは実態にそぐわない内容です。被爆者援護法を在外ヒバクシャの実態に見合った制度とし、国内同様の措置にする人道的対応を求めることが必要です。
 なお、廣瀬方人裁判や李在錫裁判(注8)などでも国に支払いを命じましたが、国側が不当な控訴をしています。ヒバクシャを苦しめる国・厚生労働省の対応に抗議し、裁判支援をしていくことが求められています。また、北朝鮮のヒバクシャに対する課題も未解決なままです。政治問題と切り離して、人道上の問題として解決をはかっていく必要があります。

2.原爆症認定にむけた取り組み

 原爆症認定の集団申請、集団訴訟が2003年から全国的に始まっています。しかし、認定基準の機械的適用や形式的審査により認定率が20%台となっており、原爆被害を否定しようとする傾向が顕著となっています。現在、原爆症未認定のヒバクシャは、認定基準の改善が進まないなか、集団大量申請、集団訴訟で争い、認定基準の壁を破ろうと、ヒバクシャの身をもって核の被害を告発しています。ヒバクシャの権利確立のための集団申請・集団訴訟を支援していくことも重要な課題となっています。
 同時に、被爆二世、三世についても被爆者援護法の中に付帯決議があるだけで、その実態に対応する施策が欠けています。全国被爆二世団体協議会を中心とした取り組みを支え、組織拡大を追求し、実態に即した対応を求めていくことが必要です。

3.「平和利用」のもとで生み出される新たなヒバクシャ

 原子力の「平和利用」の名の下でもヒバクシャは生み出されてきました。特にチェルノブイリ原発事故の影響はいまだ深刻です。日本に於いてはJCO臨界事故で、2名の労働者の命が失われ、600名を超すヒバクシャが生み出されたことは、広島・長崎、ビキニとともに決して忘れてはならない出来事です。JCO臨界事故を風化させないことと同時に、このような事故を再発させてはなりません。
 現在、原水爆禁止日本国民会議と原子力資料情報室とで立ち上げたJCO臨界事故総合評価会議が、トヨタ財団の助成を受け、第二期目の調査研究として事故原因と責任や影響の総合的調査・研究が進められています。これらの成果をもとにJCO臨界事故の原因と責任を明らかにし、生みだされたヒバクシャとの連携を強めた取り組みが必要です。
 また、原子力産業で働く労働者のヒバクも忘れてはいけません。「平和利用」の中で行われるヒバク労働の実態を明らかにし、援護の取り組みも強化する必要があります。

4.世界の核被害の実態を明らかにする

 あらゆる核(原子力)開発の過程で生み出されるヒバクシャの実体を明らかにし、救援運動や連帯運動を強化も求められています。太平洋の核被害者やチェルノブイリのヒバクシャ、その他特に辺境の地で核被害に苦しんでいる人々の実体を明らかにし、人権を守ることが急務です。
アメリカによるイラク攻撃では、大量の劣化ウラン弾(注9)が、先の湾岸戦争に続き、今回も使用されました。劣化ウランという放射性物質が大量に使用されたことは、住民の健康への影響が懸念されます。国際的な健康影響調査、劣化ウラン弾の破片や不発弾の回収、劣化ウラン弾の製造・使用禁止を求める運動を広げていかなければなりません。

V.おわりに

 核をめぐる状況は、核・軍事巨大国アメリカの存在によって、困難な局面を迎えていますが、これまで核戦争を阻んできた人類の英知は、必ず核廃絶を実現させるでしょう。
 そのためにもヒロシマ、ナガサキのヒバクの実相を継承し、若い世代に引き継ぐ運動が求められています。ヒバクシャ自らの証言を記録に残す運動、原爆展の開催など様々な取り組みの強化が求められています。今大会の「メッセージfromヒロシマ」などへの子どもの派遣や親子参加も今後も強化していかなければなりません。未来へ希望をつなぐための取り組みが非核社会を切り開くはずです。
 ナショナルセンターである連合や核禁会議も平和・核軍縮の取り組みを強化しています。また、「6.7原発やめよう全国集会2003」(注10)に代表されるように、多くのNGOや市民団体も脱原発、平和・核軍縮などに取り組んでいます。そして2004年はビキニ被災50周年、2005年は被爆60周年の節目でもあり原水禁運動のより一層の取り組みの強化が求められています。
 世界の人々も反戦・平和に大きなエネルギーを注ごうとしています。それはイラクへの軍事攻撃に対する行動で示されました。私たちの希望は世界の人々と共にあります。
 被爆58周年原水爆禁止世界大会で、核も戦争もない平和な21世紀の展望を示し、行動していきましょう。


注1: 3万発ともいわれる核弾頭 アメリカの核弾頭数は7650発を配備し、3000発を配備に戻せる状態で保存。ロシアは8600発を配備し1万発を保存。中国は400、フランス350、イギリス200発。他にイスラエル200発、インド30〜35発、パキスタン24〜48発という推測がなされている。
注2: ネオコン(新保守派) 「ネオ・コンサーバティヴ」で、「新保守主義」とも訳される。ラムズフェルド、チェイニー、ウォルフォヴィッツら、ブッシュ政権の中枢で大きな影響をもち、イラク攻撃を推進した人々のことを指している。
注3: 「核態勢の見直し」 02年1月に米国防総省が議会に提出した報告書で、核保有国の中国、ロシア、のちに「悪の枢軸」と呼んだ、北朝鮮、イラク、イランに加え、シリア、リビアも核兵器使用の計画対象とした。核兵器を通常兵器やミサイル防衛などと一体化して運用することを目指す。核兵器の開発・製造施設の強化、そのための人材育成に力を入れることも謳う。
注4: NPT 1970年に発効した核拡散防止条約で、現在締約国は188カ国。インド、パキスタン、イスラエルなどが未締約国。03年、北朝鮮が脱退宣言をした。アメリカ、ロシア、英国、フランス、中国の5核兵器国に核の保有を認める差別性があるが同時に、核拡散・核軍縮の義務を課している。
注5: 核燃料サイクル 使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを取り出して使用することで燃料のサイクルを成立させるという国策。高速増殖炉計画の崩壊でエネルギー政策としても無意味になっている。ウラン採掘から核燃料の製造、原子炉で燃やした後の使用済み燃料や放射性廃棄物の後始末までの全過程のこと。
注6: 維持基準の導入 原子力発電所を運転すると発生する傷、摩耗などが安全性に問題ないかを判断する「維持基準」の導入が進められている。これまでは、運転中の原発は建設段階(新品)の状態を維持するものとされていたが、多くの原発に傷・欠陥があることが明らかになった後、傷や老化があっても運転させるために導入した維持基準は、安全上明らかな後退。経済産業省原子力安全・保安院は、2004年度を目途に法令改正を進めている。
注7: 「エコロジー社会構築プロジェクト」の成果 エネルギー問題を中心に、持続可能な循環型社会のありようを構想し、提言をすることを目的として、01年10月に発足した原水禁・平和フォーラムのプロジェクト(座長・藤井石根・明治大学理工学部教授)。脱原子力社会にむけたエネルギー政策、自然エネルギーの開発・利用、省エネルギー、資源問題などを含めて検討し、03年2月に中間報告を発表。
注8: 廣瀬方人裁判や李在錫裁判 日本に住む被爆者の廣瀬方人(ひろせ まさひと)さんが、日本語教師として中国に赴任した際、一方的にうち切られた「健康管理手当」の支給を求めて提訴した。広島で被爆した李在錫(イ・ジェソク)さんは、95年に「原爆症認定」をうけ、01年1月、渡日治療後帰国したとたん「特別手当」の支給をうち切られ、大阪地裁に提訴した。03年3月に両裁判は勝訴した。
注9: 劣化ウラン弾 天然ウランを濃縮し、核兵器用物質や、原発の燃料を作る過程で大量に出されるウラン(U238)で安価。アルファー線を放出し、半減期は45億年。劣化ウランは鉄の約1.7倍も比重が重く、砲弾の弾心に使用すると、頑丈な戦車をも貫通する。着弾の衝撃により、酸化ウランのエアロゾル(微粒子)が飛散、それを肺など体内に取り込むと、放射線や強い化学毒性による影響で、ガンなどの健康障害を引き起こす。
注10: 6・7原発やめよう全国集会2003 6月7日、東京・代々木公園に、全国各地から「脱原発」を進める住民・市民運動を担う人々5,000人が結集し、原子力政策の転換を訴えた。