原水禁大会
2004.8 

被爆59周年原水爆禁止世界大会基調

I.はじめに

 20世紀の「核と戦争の時代」を終え、21世紀こそ「核と戦争のない社会」を願った私たちは、今年、ビキニ被災50周年を迎え、被爆・戦後60周年を目前に控えたいまでも、いまだ核の存在や戦争という暴力に直面しています。あらためて今年こそこの暴力の連鎖を断ち切る契機の年にしたいと考えています。
 59年前の筆舌に尽くしがたい、地獄のような体験をした被爆者も高齢化しています。彼らの願いである核兵器廃絶・反戦・平和の声を、いまこの時こそ高く掲げる必要があります。悲惨な体験の実相を世界に伝え、後世に継承していくことがもっとも必要となっています。
 私たちは、今年、来年に渡ってビキニ被災50周年、ヒロシマ・ナガサキ被爆60周年をつないで、様々な非核・平和の動きを充実させ、暴力の連鎖を断ち切る努力を集中し、「核と戦争のない社会」を求めていきます。

II.平和・核軍縮を確立する取り組みについて

1.世界平和に逆行するアメリカと進まぬ核軍縮への取り組み

 (1) 2001年、アメリカで起こった9.11事件により、世界のスーパーパワー国家アメリカのアフガニスタンへの武力攻撃に引き続き、イラクへも「大量破壊兵器の存在」という虚構のうえに侵略戦争が進められました。このイラク侵攻は、国際法も無視した、アメリカのあまりにも身勝手な単独行動主義の最悪のものでした。そしていま、イラクは「テロ」や破壊、侵略の暴力が吹き荒れています。イラクの「民主化」を掲げながらも、人権抑圧を一方で続けている占領軍の撤退は何より必要です。形の上では主権が移譲されましたが、いまだ多国籍軍によるイラク占領には変わりなく、主権のイラク人への完全なる移譲が求められています。
 (2) ブッシュ政権の反動的な政策は、核戦略にも見られ、「国家安全保障戦略」注1、「大量破壊兵器と戦う国家戦略」、「核態勢の見直し」注2など次々と、核兵器の保有の正当化や先制核攻撃、小型核や地中貫通爆弾の開発、ミサイル防衛(MD)注3の推進など新たな核軍拡の流れを創り出そうとしてきています。また米ロ間のABM条約の一方的脱退など、新たな緊張を生み出しています。さらに未臨界核実験や核実験再開の動きなど、CTBT(包括的核実験禁止条約)体制の軽視をしています。
 また、米ロなどは「削減」された核弾頭を将来に備えた「貯蔵」に回すなど核弾頭の備蓄を進め、いまだ核警戒態勢は解かれておらず、偶発的核戦争の危険も去っていません。米国のミサイル防衛の推進は、ロシアとの緊張を高めるばかりか、日米の共同展開によって中国の核軍拡にも拍車をかけ、際限ない核軍拡へ道を開くものです。
 (3) 一向に進まない保有国の核軍縮は、2000年のNPT(核拡散防止条約)再検討会議注4で約束した「核廃絶の約束」を破るものであり、2005年の再検討会議に向けて国際的な核軍縮の枠組みの強化が求められています。現在、核保有国は、テロリストや5ヵ国以外への核拡散を問題視していますが、同時に核保有国の核軍縮を実施させることが必要です。インド、パキスタン、イスラエルなどといったすでに核保有が明確なっている国々や「疑惑国」に対しても核開発の放棄や非核地帯など具体的な非核政策を求めることが必要です。
 そのためにも各国の政府やNGOに働きかけ、連携して核保有国を国際的な核軍縮の枠組みに入れることが重要となっています。特にアメリカの動きは、世界の核軍縮の流に逆行しています。あらためてNPT再検討会議など国際的な流れに乗せ、核軍縮の国際的なルールを守るよう要求することが必要です。すでに平和都市市長会議など多くの取り組みが開始されています。
 そのためにも、国内外の核軍縮進める団体や運動体とのネットワークの強化を目指しNPT再検討会議に対し、連合・核禁会議と共同して日本政府への要求や署名運動、派遣団を送るなどその具体的取り組みを開始します。
 また全国の自治体に対して非核自治体宣言の100%達成にむけた取り組みや非核・平和条例の制定など自治体の非核政策の充実を求める運動が重要です。
 (4) また、いまだNPT未加盟のインド・パキスタン・イスラエルなどの新たな核保有国の核の脅威に対して国際的な監視と核兵器を放棄させる動きを創り出すことも重要です。朝鮮民主主義人民共和国の核開発やNPT脱退をめぐって東北アジアの緊張が高まっています。特に日本政府に対しては、日朝平壌宣言に沿い、国交正常化交渉を進め、日朝友好条約の締結など、東北アジアの緊張緩和に向けた動きを加速させることが必要です。9月末の6ヵ国協議に向け、参加国に東北アジアの非核平和の確立を求めていくことが重要です。

2.アメリカに追随し憲法改悪に進む小泉政権に対決する取り組み

 (1) 小泉政権は、アメリカとの軍事同盟をより強化しようとしています。周辺事態法からテロ対策特別措置法、イラク特措法と憲法でも禁じられている自衛隊の海外派兵の拡大の道を進んできました。そして今度は、集団的自衛権の行使も指摘される多国籍軍への参加と、戦後一貫してきた「(紛争を)武力で解決しない」という日本国憲法そのものを国民的議論もないまま大きく踏み越えようとしています。憲法の空洞化は、小泉政権になってますます拍車がかかり、その先に憲法改悪や教育基本法の改悪を狙っており、危険な動きを続けています。私たちはイラクからの自衛隊の撤退を求めると同時に、有事体制づくり、憲法9条を改悪させない広範な国民運動をつくりあげる必要があります。
 (2) アメリカの世界的な国防体制見直しの中で、米軍はアジアの基地の再編強化を目指し、特に日本の基地の強化を打ち出しています。冷戦崩壊以後の軍縮の流れは、日本を素通りしている感があります。米軍のミサイル防衛に参加し、08年に向けた原子力空母の横須賀母港化など、東北アジアを不安定化させる動きが強まっています。
 私たちは、あらためて日本政府に対して、被爆国としての責務を自覚させ、非核三原則の堅持や平和基本法の制定など積極的な平和と核軍縮政策を求めることが必要となっています。また、東北アジアの平和の障害となるミサイル防衛や原子力空母の母港化の阻止注5の闘いは、東北アジアの緊張緩和にとって絶対に必要です。自衛隊が保有しているクラスター爆弾等の非人道兵器の廃棄やアメリカなどが使用した劣化ウラン弾を含めた非人道兵器注6の禁止に向けた国際的な取り組みを強化していきます。
 (3) 冷戦終結後、アメリカ一極の支配に対して、厳しい状況の中でも平和運動の果たす役割は重要です。国際的な平和・核軍縮の連携を強化し、アメリカをはじめとする核保有国を包囲する陣形をつくりあげることが必要です。CND(核廃絶キャンペーン・英)やピースアクション(米)、UFPJ(平和と正義のための連合・米)などの各国の平和勢力との連携と連帯を中心に、国内においても、政府や各市民団体に働きかけ、共通の核軍縮へのネッワークと運動の強化が重要となっています。

III.原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けての取り組みについて

1.プルトニウム利用政策の転換から脱原発へ

 (1) 珠洲原発計画や巻原発計画の撤退、東京電力などの事故隠し、名古屋高裁のもんじゅ判決、MOX利用計画の頓挫などは、原子力政策の行き詰まりを示しています。政府の試算でも原子力のバックエンドコスト注7が100%順調にいった場合でも、約19兆円もかかることなど、05年には第三次の電力自由化を控え、電力需要の低迷とあいまって原子力政策の転換が求められています。すでに電力関係者や自民党の一部からも原子力政策の転換を求める声もでてきており、幅広く連携できるすそ野が広がってきています
 海外でもドイツをはじめベルギー、スウェーデンなどの国々も、脱原子力を政治選択するようになり、脱原子力が世界的潮流になりつつあります。私たちは、その流れをさらに推し進めて行く必要があります。
 (2) 原子力推進派は、プルトニウム利用路線注8が破綻しているにもかかわらず六ヶ所再処理工場の建設やプルサーマル計画を止めようとはしていません。
 再処理工場は、原発とはケタ違いに放射能をまき散らし、核兵器の材料になり、使い道のないプルトニウムを大量に作り出す工場で、必要ないばかりか、周辺国に対しても日本の核武装の脅威と疑惑を与えるものです。また、政府や電気事業連合会などが行った試算でも使用済み核燃料の直接処分との比較で再処理に経済性がないことが明らかになっていたにもかかわらず試算データを隠ぺいするという、これまでもたびたび繰り返してきた原子力業界の隠ぺい体質が、いまだ改められていないことも問題です。
 六ヶ所再処理工場では、06年7月の操業に向けて、ウラン試験を強行しようとしています。また、原発推進派は、高浜原発や伊方原発、玄海原発などでのプルサーマル計画や、もんじゅ再開の動きが活発化しようとしています。それらの動きを押しとどめることが、プルトニウム利用政策の転換に向けてここ数年の重要なポイントとなっており、取り組みの強化が求められています。また、フルMOX原発計画が進められる大間原発を止めるために予定地中心に風車建設注9をする取り組みは、プルトニウム利用計画を具体的に止めていく重要な取り組みです。全国的支援のより一層の強化を図ることが重要です。
 (3) プルトニウム利用政策の転換とともに、原発の新増設の問題や放射性廃棄物処分問題、浜岡原発などの原発震災問題も含め脱原発に向けた課題も山積しています。上関や大間、泊3号や川内3号など原発の新増設を許さない取り組み、高レベル放射性廃棄物の処分場や中間貯蔵施設を誘致させない運動など地元の運動と連携して強化していくことが重要です。また、私たちの日常生活の場に放射能が紛れ込む、放射能のスソ切りのための法改正に対して、国会での働きかけの強化と世論喚起を行うことも重要となっています。
 (4) 今年はJCO臨界事故5周年にあたり、事故を風化をさせない取り組みも重要となっています。5周年集会の開催やJCO臨界事故総合評価会議の研究報告などをまとめ、風化に抗する運動と原子力防災や被害者の会との連携強化をより一層進めていくことが必要です。
 2004年1月、多発性骨髄腫で苦しむ長尾光明さんの原発労災認定を勝ち取りました。いままで闇に隠されていた被曝労働の実態を明らかにしていくことは、核被害者の権利を求めることにもつながり、原発被曝労災問題への取り組みの強化も重要です。
 (5) 他にもITER(国際熱核融合炉)の六ヶ所村誘致反対の取り組みや08年と言われる原子力空母の横須賀母港化問題など、核被害を生み出す動きに対抗していくことが必要です。あらためて「核と人類は共存できない」という原点に立ち帰り、運動を進めていくことが必要です。

2.脱原発から再生可能エネルギーの拡大

 2005年には、第三次電力自由化が一段と進む中で、再生可能なエネルギーの普及が拡がってきています。原発に代わる分散型エネルギーとして積極的に自然エネルギーを拡大していくことが必要です。同時に消費者の側の省エネに対する意識変革も求められています。省エネルギー政策の充実や行動を求める動きの強化に合わせて再生可能エネルギーの普及・拡大をはかる運動を展開することが必要です。「エコロジー社会構築プロジェクト」の成果を生かし、各地で具体化していく取り組みを進めていきます。
 政府はすでに原子力長期計画の改訂注10に向け動き出しており、破綻したプルトニウム利用政策の変更を迫る取り組みが重要になっています。具体的には、巨大な税金の無駄遣いとしての六ヶ所再処理工場中止や、もんじゅの廃炉、高レベル廃棄物問題などは緊急の課題で、取り組みの強化が求められています。再生可能エネルギー政策の推進とともに、各地のたたかいに連帯する運動を作り上げて行きます。

IV.ヒバクシャの権利確立の取り組みについて

1.ビキニ被災50周年、被爆60周年、チェルノブイリ原発事故20周年

 今年は、ビキニ被災から半世紀。JCO臨界事故からも5周年を迎える年となります。来年は被爆60周年。さらに06年はチェルノブイリ原発事故から20周年という節目を迎え、あらためてヒバクの問題をクローズアップさせる契機にしなければなりません。核実験や原発事故、被曝労働、ウラン採掘などのあらゆる核開発の流れの中で生まれた2000万人以上ともいわれるヒバクシャの大半は、いまだ放置されており、核被害に苦しみ、差別や偏見の中にあります。そのことを踏まえ、国際的な運動としてヒバクシャへの連帯と補償制度や権利の確立を進めることが今後の原水禁運動の重要な柱です。同時に核の商業利用の中で生み出された原発・被爆労働者のヒバク実態の把握と連携の強化も重要になっています。
 今年の長崎大会の国際会議では、ヒバクシャの現状と補償問題に光を当てます。そして来年は、ヒバクシャの権利確立を人権問題として国際的な課題とするために「ヒバクシャ国際会議」の開催を目指していきます。また、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の呼びかけている「ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ」の被爆者会議(05年7月開催)に協力していきます。これら核被害者の補償と連帯の強化に向けて、原水禁運動を進めていきます。

2.広島・長崎の被爆者の現状と戦後補償問題の解決に向けて

 (1) 被爆60周年を目前に控え、被爆者の高齢化が進んでいます。被爆の実相の継承の課題や広島・長崎の被爆者の残された課題を解決する時間は限られています。被爆者援護法への国家補償の明記、特に在外被爆者に対する補償の充実は、日本の戦争責任と戦後補償の実現とあいまって重要な取り組みです。これまで在外被爆者裁判で勝ち取った成果注11などを、残された在外被爆者裁判へ活かし、被爆者援護法の改正を政府に要求していきます。中でもこれまで放置されてきている在朝被爆者への補償施策の実施を求めていくことも戦後責任を果たす意味で重要です。また、全国各地で取り組まれている被爆者集団訴訟の運動を支援していきます。とりわけこの課題は、日本被団協や連合、核禁会議その他支援グループと連携を強化し、取り組みを強めます。
 (2) また被爆二世・三世への補償をはかることも必要です。全国被爆二世団体連絡協議会と連携しながら二世・三世の組織化と行政に対する被爆二世健康手帳の発行や健康診断の通年化、被爆二世健康影響調査の充実の要求を積み上げていくことが求められおり、取り組みを一段と強化していきます。
 (3) 被爆の実相を継承する取り組みを強化します。各地で被爆者からの聞き取りや映像などの記録収集を進め、若い世代へ被爆の実相を継承していく取り組みの強化をはかります。

V.非核未来にむけて

 ビキニ被災50周年─被爆60周年─チェルノブイリ原発事故20周年と、連続した取り組みを行い、残された課題の解決や運動強化を図ると同時に、右傾化する動きに対して、あらためて反戦・平和の運動の強化とその内実が問われています。憲法前文や9条そして非核三原則や武器輸出3原則など戦後一貫して守ってきた平和主義を守り、さらに理念の具体化を推し進めていかなければなりません。いま、「戦争への道」か「平和への道」かの選択が迫られています。核を頂点とする暴力、抑圧、管理などを象徴する社会から平和や共生、連帯、エコロジーなどを基調とする社会への転換をビキニ50周年─広島・長崎被爆60周年を機に大きく進めていきましよう。
 とりわけ来年は被爆60周年であり、NPT再検討会議が開催される年です。連合・核禁会議との連帯を強化します。そしてそのための運動強化と拡大に向け、現在進めているカンパ運動の取り組みを広げましょう。
また、平和・核軍縮を目指す取り組みは世界的にも国内的にも多くの平和団体、市民団体、労働組合、政党などによって担われています。平和・核軍縮をさらに進めるためには、大きく連帯の輪を拡大していきましょう。



被爆59周年原水爆禁止世界大会スローガン

〈メインスローガン〉

核も戦争もない平和な21世紀に!

〈サブスローガン〉