核兵器に手をかすメガネのHOYA
2001.4.23

4月23日付けプレスリリース

リバモアからの回答で納入決定の根拠崩れる!  マスコミに誤解を与える発言を続けるHOYA

 HOYAが米国の核兵器研究所の水爆研究用レーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」に特殊ガラスを納入している問題で、HOYAがローレンスリバモア研究所に、NIFの実験の80%が平和利用であると明言して欲しいと要請したが、研究所がこれに応じていないことが同社が4月20日に原水禁事務所を訪れて提供した資料で判明した。一方、米国会計検査院(GAO)が下院国防委員会軍事調達小委員会委員長らに提出した報告書(2000年8月8日付け。B-285985)は次のように述べている。「DOEの計画によると、施設の実験の約85%が核兵器物理のためのものである。残りの実験は、核兵器の影響に関する研究と基礎及び応用科学のためのものである。」
 さらに、HOYAは、NIFが核兵器の開発に直接つながらないと主張してきたが研究所の回答は、「相当に新しい核弾頭の設計概念や進んだ兵器概念を伴うもの」以外の「新しい核兵器」を開発するのにNIFが使われることを否定していない。

 原水禁は、NIFが核兵器とあまり関係のない研究をする施設であるかのように主張し、それを根拠に納入を決めたとしていたHOYAは、その根拠が明らかに崩れたいま、納入を直ちに禁止すべきだとする公開質問状を4月23日HOYAに再度送った。

 また、4月20日の話し合いの中で、HOYAは、長崎新聞(4月18日付け)で同社の発言として報じられている部分−−「研究は現存核兵器を放置する危険を避け、安全性、信頼性、性能を確認しつつ維持・管理するものと、当社も認識していた。」−−は、NIFに直接関係したものではないと認めた。NIFがないと「現存核兵器を放置する危険が」どのようにしてでてくるのか具体的に示すようにという原水禁の質問に対し、HOYAは、これはNIFの役割として述べたのではなく、米国の核兵器維持管理計画が核兵器の安全性、信頼性を維持するものだということをいったにすぎないと応えた。NIFとHOYAの関わりについて問題にしている時に、NIFの直接の役割でないことに触れて応じるというのは、問題の焦点をぼかそうとするものとしか考えられない。長崎の被爆者でもある岩松繁俊原水禁議長は、「一般的にいって、大企業がマスコミの取材に誠実に対応すべきことは言うまでもないが、とりわけ被爆地長崎の新聞に対し、この問題でわざとごまかしているとしか思われない説明をするのは、被爆者を愚弄するものであり断じて許せない」と語った。

経過説明

2月6日付共同 HOYAがNIFへガラスを納入と報道。
2月9日      HOYA出荷の見合わせを発表。
2月20日    HOYAは同日付け回答で「NIFでの研究は、垂直、水平いずれの方向でも核の拡散につながらない」、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」との「結論をもとに、今回のNIFへのレーザーガラスの供給を決定しています。以上のことから、HOYA株式会社では、レーザーガラスのNIFプロジェクトへの供給は、核兵器の開発に直接関わるものではないと認識いたしております」と説明。

3月13日    「レーザーガラスのNIF納入に関する公開質問状(その2)」をHOYAに送り「NIFは国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」とする根拠を求める。(未回答)
3月22日   CTBTの批准を拒否し、いつ核実験を再開するやもしれない核保有国の核兵器協力するとことが、CTBTを批准した日本の義務に反することになる可能性についてHOYAに質問。(未回答)
3月22日    IFEフォーラムに「結論」の根拠を問う質問状。(未回答)
3月22日    HOYAは同日付け回答で3月26日づけて納入を再開すると通告。
4月4日     3団体、山中教授に、いかなる根拠に基づき「結論」を書いたのかと問う質問状同時に、フォーラムに深く関わる関西電力と大阪大学にも「結論」を支持するのかとの質問状。(未回答)
4月9日付け  山中教授の回答。実際に届いたのは、10日、HOYAとの話し合いの後。
4月10日    原水禁、HOYA事務所を訪れ、納入再開に抗議。
4月17日    山中教授へ再質問。「結論」の誤りについてHOYA及び長崎・広島両市長に説明するとともに、不明な点をさらに明確にするよう要請。

詳細説明


1.HOYAが4月20日に原水禁に提出した文書(英文)
1)『HOYAの情報請求に対する国立点火施設(NIF)プロジェクトの応答』
2001年3月19日付け
HOYAの説明によると元はE-メールによるもので、差出人は、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)同プロジェクトのDeputy Associate Director (Acting)であるブルース・ワーナー氏。10項目の質問に応えたもの。

2)80%に関する問答
問題の部分は、7〜9番の質問にまとめて応えたもの。
「LLNLは、研究の80%が平和目的のために当てられると確認できるか」との質問を含むものである。

答え:
「NIFは、星や、惑星、ブラックホール、核兵器のなどの天体物理学的現象で起きる基礎科学を理解するための方法である。[原文のandの位置などからするとこういうふうにしか訳せない。原水禁注]この文脈においては、NIFの機密の実験も機密でない実験もともに核兵器物理の理解の改善に役立つ。この同じ基礎科学は、慣性核融合を含む多くの問題についての理解を深める。科学の最終用途は異なるが、科学は同じである。しかし、NIFがストックパイル・ステュワードシップ・プログラム(核兵器維持管理計画)を支援するものであり、米国のCTBTの受け入れに必須であることを覚えておくことが重要である。」
 要するに80%が民生用だとは確認できないのである。

 HOYAはこの質問をした段階では、NIFの研究の80%が平和目的のためのものと信じていたと考えられる。
 HOYAは原水禁に対する2月20日付回答で「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」との「結論をもとに、今回のNIFへのレーザーガラスの供給を決定しています」と述べている。この「結論」というのは、ICFフォーラム(現IFEフォーラム)が1998年3月4日に開いたシンポジウムの報告にあるものだが、問題の「結論」を書いた大阪大学レーザー核融合研究センターの山中龍彦センター長は、4月9日付けの回答の中で、「結論」が誤りであることを認めた。
 山中教授は、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大をメインに据えたものでない」と書いたのは「説明が舌足らず」だったが、本来の意味は、NIF計画は「新たな核兵器の開発につながるものではなく、国防技術の維持・管理を目的にしたものであり、拡大を目的にしたものではない」というものだったと述べている。実際には、元の文章なら、NIFは、国防技術の維持も拡大も中心に据えておらず、民生用研究を中心にしているとしかとれないことは言うまでもない。
 「結論」を最初に書いた山中教授本人は、書き間違ったといえても、それを読んで、表現のとおり理解したはずのHOYAが本来の意味はこうであったというような説明ができないことは明らかである。HOYAは、1)表現通り理解する国語能力がない、2)間違いと知りつつ引用した、3)間違いとは知らず「結論」を信じていた、のどれかとしか考えられない。
 研究所に宛てたHOYAの質問は、3)であったことを示唆している。
 実は1985年に、NIFの前身に当たるノバにHOYAがガラスを提供していることが問題になった際も、HOYAは、ノバは科学的なものと考えると述べている。これは、SDIとの関連についての記事で、焦点はノバがレーザーを直接破壊用に使う兵器の開発に利用されるかどうかというものだった。85年4月12日の朝日新聞の記事は次のようにいう。「HOYAによると、レーザーガラスはローレンス・リバモア研究所から直接、要請を受けて開発したもので、同社としては、あくまで核融合反応を起こさせるための起爆源など、エネルギーの平和利用のために使われる、と信じているという。」ノバの核融合研究が核兵器用のものだったことは明らかで、当時は、研究の詳細のほとんどが公表されておらず、現在よりも、ずっと秘密主義の強い時代のことである。ところがこのときもHOYAは、ノバが平和利用のためのものだと信じていると述べているのである。
 素直にとると、この時も、それから山中教授の結論を引用したときも、研究所に質問を出したときも、ずっとノバやNIFは平和利用中心だと考えていたととれる。とすると研究所の答えを見てそれが確認できないことを悟ったHOYAは、納入再開を断念すべきであった。
 ノバの時も、教授の結論を引用したときも、ずっと、この研究が核兵器を主要テーマとしたことを知っていたとするなら、それは大問題である。ずっと嘘をつき続けてきたことになるからである。

3)「新しい核兵器」の定義
HOYAは、NIFが核兵器の開発に直接つながらないと主張してきた。これは、1992年にブッシュ政権が新しい核兵器を開発しないと宣言したことに関連している。これについて、HOYAの質問2及び3に対する研究所の答えが説明している。
 「新しい核兵器というのは、普通、相当に新しい核弾頭の設計概念や進んだ兵器概念を伴うものである。」つまりエネルギー省は、こういう定義に入らない「新しい核兵器」を開発することを否定していないのである。
 上述の会計検査院の文書は、次のようにいう。「保有核兵器のうちの二つ−−W76とW80−−の刷新(refurbishments)は、向こう10年の間に予定されている。NIFは、この刷新過程に役に立つだろう。提案されている変更が核兵器の安全性及び信頼性にとって持つ可能性のある影響について核兵器科学者が研究することを可能にするからである。」(24−25ページ)これは会計検査院が勝手に言っているのでないのはもちろんで、エネルギー省の言い分を紹介しているのである。実際、W76という潜水艦発射のミサイル用の変更案は3つでていて、その一つは、これまでにない設計を新たに行うものである。
 さらに、現在軍部が威力5kt程度の小型核の開発を検討していることは、ワシントンポストが4月15日に報じたとおりである。小型核の開発案を出しているのは、ロスアラモス国立研究所核兵器研究責任者のスティーブン・ヤンガー副所長やサンディア国立研究所のポール・ロビンソン所長らである。米国の核兵器開発に当たってきた主要研究所は3つしかない。米国の核兵器核部門の設計の担当が、リバモアとロスアラモス、そして、核以外の電子機器などの担当がサンディアである。
 核兵器の研究で生きてきた人々が、自分達の研究が必要となるような核兵器開発計画を考え出して提案する。そして、場合によっては軍部のために報告書を書いてしまう可能性もある。HOYAがバイブルのように掲げる1995年のエネルギー省の文書(The National Ignition Facility (NIF) and the Issue of Nonproliferation, Final Study Prepared by the U.S. Department of Energy, Office of Arms Control and Nonproliferation (NN-40), December 19, 1995)というのも、実はNIFのリバモア研究所の宣伝係が書いたものである。HOYAは、自分達がつき合っている相手はそういう人々であることを肝に銘じ、研究所のPR係になったかのような発言をしない方が身のためだろう。
 小型核の研究は、1994年の法律によって禁じられてきたが、この法律を変えようという動きがあり、ポストの記事は、その準備作業として国防省がエネルギー省の協力を得て行っている研究に関するものである。
 このように方針や法律はいつでも変えられる。定義も好きなように解釈できる。
 どのような定義を使おうと、米国が新しい核兵器を開発する可能性は常にあり、その中でNIFが役割を果たすことになっていることは明らかである。
 HOYAが原水禁に送付してきたエネルギー省の上記文書自体も次のように述べている。
 「NIFの主たる目的は、核兵器に関連した物理学の専門家集団を米国で維持することにある。」8ページ:
「核兵器維持管理計画におけるNIFの主たる役割は、もっと一般的な意味で核兵器に関連した物理に関する中核的な知的・技術的能力を維持することにあるが、セカンダリーやブースト型プライマリー過程の一部に関連したコンピューター・コードの予測能力の改善のための特定のデータを提供することもできる。」14ページ:
 このような形で維持された設計集団が、核兵器を設計し、CTBTの批准を拒否している米国がその実験を行った場合、HOYAはどう言い訳をするつもりだろうか。
 HOYAは、CTBTを批准を拒否した米国の核兵器研究に協力すれば、米国が核実験を行った場合、核実験には協力しないというCTBTの下での義務に日本が違反することになる可能性についてどう考えるかという私たちの質問にまだ答えていない。

4)HOYAが強調した答え

質問10
「LLNLは、NIFが破壊的目的のために使われないと公式に宣言できるか」
答え:
「NIFは、核兵器の開発の手段ではない。NIFは兵器ではない。NIFは、核兵器、核融合エネルギー、宇宙の起源などについての理解を科学者が深めるのに役立つ研究道具である。NIFは、建設的な目的のために使われる:核実験をしないで安全性と信頼性を維持する;安全で、クリーンで豊富な形のエネルギーへ近づく;宇宙の起源の秘密をあかす。」

HOYAは、この最初のセンテンスを強調した。HOYAは気づいていないかもしれないが、HOYAの質問は、NIFが直接兵器となるかと聞いているようにもとれる。そこからNIFは兵器ではないという答えがでてくるのかもしれない。フットボールほどの大きさの施設が直接兵器に使えないことは明らかである。このような曖昧な質問と曖昧な答えの中の一つのセンテンスだけ引き出して、NIFが核兵器と関係ないかのように主張してもなんの説得力もない。

核兵器研究施設が破壊的ではなく、建設的だというのは、ジョージ・オーウェルの『1984年』にでてくるオセアニア国の公用語「ニュースピーク(新語法)」を想起させる。
「戦争は平和である。自由は屈従である。無知は力である。」

 核兵器研究所の研究者らは、民生用の研究をしている科学者の会合に行けば、自分達も仲間だという顔をして、受けのいいことをいう。HOYAに対しても、そういう態度をとるだろう。だが、そのような発言の中から、HOYAにとって都合のいいことを引き出してきても意味はない。問題は、議会で予算を出させる時に、国防省に自分達の研究の重要性を訴える時になんと言っているかである。このような時の発言と矛盾する発言をHOYAがいくら引っ張り出してきても、それは、研究所がうそつきだということの証明になりこそすれ、NIFが核兵器研究に役立つという元の発言を取り消すことにはならない。
 2001年度予算説明書は述べている。「DOEは、過去20年に渡ってICF(慣性核融合)を、核実験のモラトリアム下で核兵器設計の設計能力を維持するための主要手段とみなしてきた。」実験を再開するときに備えているのである。米国議会はCTBTの批准を拒否し、ブッシュ大統領もCTBTを批判していることを忘れてはならない。

2.誤解を与える発言
4月18日の長崎新聞は次のように報じている。

 「一方、HOYA総務部は『研究は現存核兵器を放置する危険を避け、安全性、信頼性、性能を確認しつつ維持・管理するものと、当社も認識していた。これは最終的には核兵器削減につながる』」と説明。山中教授の見解訂正には『より正確な表現に直されたということだと思う。それによる当社の方針への影響はない』としている。」
 そもそも、山中教授の「結論」の書き方が、マスコミや一般の人々の誤解を招くものであったことが問題になっているときにこのような発言をして、また焦点をぼかそうとするHOYAの態度は許し難い。
 原水禁は、4月10日にHOYAを訪れた際、NIFが、核兵器の偶発的爆発防止に役立つかのような発言は、その根拠を示せない限り、しないように要請している。このとき原水禁は、信頼性とは何であり、安全性とは何であり、その維持のためにNIFがどのように役に立つのかHOYAの考えを聞いている。答えは、詳しいことは知らないが、信頼性と安全性を区別して考えていないというものだった。
 そこで、原水禁側は次のように説明した。安全性を保つというのは、偶発的爆発を防止することであり、水爆の引き金になる核分裂装置(原爆)に関連したものだから、水爆の核融合の部分の研究をするNIFとは関係ない。リバモア研究所も、語呂がいいからという程度で、信頼性・安全性と続けていっているだけで、詳細な説明をする場合には、NIFが安全性のためのものだと主張しておらず、信頼性の維持・向上に役立つといっているだけである。信頼性があるというのは、期待したときに期待通りの爆発が起きるということであって、HOYAが心配するようなことではない。
 原水禁は、このように説明した後、この両者を一緒に使って、あたかもNIFがなければ倉庫にしまってある核兵器が次々と爆発してしまうような間違った印象を与えるような発言をするのをやめるよう要請した。このような要請をしたにも関わらず、HOYAが長崎新聞に対して上のような発言をしたのは、原水禁だけでなく、マスコミや市民をも馬鹿にしたものとしか考えられない。
 HOYAはこれからは、NIFが何かの役に立つという場合、具体的にどのような形で役に立つのか説明すべきである。核兵器の専門家でないから詳しいことは分からないと主張するかもしれないが、その程度のことが説明できないのなら、納入再開の決定を急いですべきでなかったということである。そもそも、納入を一時見合わせて、検討したというのが、最終的に誰が、どのような情報を元に判断を下したのか具体的に説明すべきだろう。単にNIF関係者からこのような説明を受けましたというだけでは、HOYA独自の判断をしたことにはならない。現在まで、HOYAが自社製品と核兵器との関連についてまともに考えて判断を下したという節はまったく窺われない。

問い合わせ先:
原水爆禁止日本国民会議  電話 03-5289-8224 /FAX 03-5289-8223
(フレーム対応でないブラウザでは、http://www.jca.apc.org/gensuikin/hoya.htm 
へ直接に)

HOYAが提供したローレンス・リバモア国立研究所からHOYAに宛てた返答原文へ