核兵器に手をかすメガネのHOYA
2001.5.9

2001年5月9日

関西電力社長 石川 博志 様
関西電力
大阪市北区中之島3丁目3番22号

グリーン・アクション 代表 アイリーン・美緒子・スミス
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 議長 岩松 繁俊

公開質問状その2

 貴社の深く関わるICFフォーラム(現IFEフォーラム)のシンポジウム(1998年3月4日)の結論が、HOYAによって米国の核兵器研究施設(NIF)への製品納入の正当化の根拠として使われている件に関する私たちの公開質問状に対する貴社の回答(4月26日付け)は、社会的責任をまったく無視したものであり、許し難いものといわざるを得ません。私たちは、貴社がこのような態度をとっていることに対し、強く抗議し、下記の質問に再度回答を求めます。

なお、回答は、広報部長名ではなく社長名で出してくださるようお願い申し上げます。

1)シンポジウム自体にIFEフォーラム座長として出席していた伊藤氏は、報告書を読んでいたのか。
2)HOYAは、「『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得て」いると述べているが、貴社は、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」と考えるか。
 この「結論」が正しいと考える場合は、その根拠を示されたい。
3)上記「結論」が間違いであるとの答えである場合、そのような間違いをシンポジウムの結論として出してしまったことについて、IFEフォーラムの座長を出している会社としてどう考えるか。

 貴社の回答は、「このような国際シンポジウムにおける個々の講演者の発言の中身にまで立ち入る立場にはありません」と述べている。
 しかし、私たちが前回質問1で問題にしたのは、IFEフォーラム副幹事長である大阪大学レーザー核融合研究センター山中龍彦教授(現センター長)が、シンポジウムの報告書で「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点であろう(4ページ)」としていることである。これは、個々の講演者の発言などではなく、貴社の伊藤俊一常務取締役(当時)が座長を務めるIFEフォーラムの結論と理解できるものである。
 貴社は、「国際シンポジウムの開催は、レーザー核融合エネルギー開発の現状を広く社会へ発信する一環」だとしている。IFEフォーラム副幹事長によるシンポジウムの報告書は、その社会への発信の中核をなすものであり、それが事実にまったく反するものであることを私たちは問題にしたのである。つまり、フォーラムが社会に対して虚偽の発信をしてしまったことを、座長を出している会社としてどう考えているかと私たちは問いかけたのである。

山中教授は、4月9日付けの回答の中で次のように述べている。

「説明が舌足らずでご質問の引用文のようになりましたが、本来の意味は、『今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画が新たな核兵器の開発につながるものではなく、国防技術の維持・管理を目的にしたものであり、拡大を目的とした計画ではないことが明らかになった点であろう』であります。」

 元の表現では、「NIF計画は、国防技術の維持も拡大も中心課題ではなく、民生用研究が中心である」としか取りえない。関西電力という公益事業に携わる大会社の関わったフォーラムの開いたシンポジウムの「結論」を引用することにより、HOYAは、マスコミや国民に、NIFは核兵器とあまり関係ない施設だとの印象を与えることに成功したわけである。

 シンポジウム自体にIFEフォーラム座長として出席していた伊藤氏が報告書を読んでいて、明らかな虚偽の発表を放置していたとしたら責任は重大である。読んでいなかったとしたら、座長の責任をまったく果たせていないということになる。関西電力の常務取締役として座長に就任するということは、IFEフォーラムに関西電力の信用を提供していることになることはいうまでもない。自分が座長を務めるフォーラムが社会への発信の一環として開いたシンポジウムの報告書の結論を読むのは当然の責任である。それができなければ座長など務めるべきではない。(会社側として、それだけの責任が取れないのであれば、現座長の森詳介常務取締役は即刻座長の座を退くべきである。)
 いずれにしても、結果として、IFEフォーラムが全くの虚偽の社会的発信をすることに貴社が荷担してしまったことに変わりない。「個々の講演者の発言の中身にまで立ち入る立場にはありません」などという言い逃れが許されるものではない。
 貴社は、IFEフォーラムは、「意見を社会に広く発信するとともに、レーザー核融合研究を振興するため」「産学が協力して設立した組織」だとしている。そこには、HOYAも入っている。明らかな核兵器用の施設にHOYAが製品を納入するための根拠を提供するために、産学が共同して全くの虚偽の「結論」を捏造した形となっていることの重みを理解するべきだろう。そして、その「結論」の誤りが明らかになった後も、その捏造にほおかむりする貴社の姿勢は、MOXデータ捏造事件を想起させる。
 前回も指摘したとおり、このような態度をとり続けるならば、貴社の原子力計画と核兵器との関係、貴社が推進に協力している日本のレーザー核融合研究と核兵器との関係についても疑念が深まることを申し添えておく。


平成13年4月26日

原水爆禁止日本国民会議 議長 岩松 繁俊 様
原子力資料情報室 共同代表 伴 秀幸 様
グリーン・アクション 代表 アイリーン・美智子・スミス 様

関西電力株式会社
地域共生・広報室
エネルギー広報部長 庄野 徹

公開質問状に対するご回答


 IFEフォーラムは、レーザー核融合に代表される慣性核融合エネルギー開発(IFE:Inertial Fusion Energy)を実現するための研究推進方策を議論し、その意見を社会に広く発信するとともに、レーザー核融合研究を振興するため、1992年に産学が協力して設立した組織であります。
 核融合は将来有望なエネルギーの1つとして期待できるものでありますので、弊社役員がIFEフォーラムの座長に就任しているものです。

 国際シンポジウムの開催は、レーザー核融合エネルギー開発の現状を広く社会へ発信する一環としまして開催されているもので、学会活動と同レベルのものであります。

 従いまして、弊社はこのような国際シンポジウムにおける個々の講演者の発言の中身にまで立ち入る立場にありません。

以上


2001年4月17日

センター長 山中龍彦 教授 様
大阪大学レーザー核融合研究センター
565-0871 大阪府吹田市山田丘2-6

グリーン・アクション 代表 アイリーン・美緒子・スミス
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 議長 岩松 繁俊

公開質問状その2

 HOYAが米国の核兵器研究所であるローレンス・リバモア国立研究所の核兵器研究用レーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」にガラスを納入している問題で、同社が、1998年3月4日に開かれたICFフォーラム(現IFEフォーラム)のシンポジウムについての教授の結論−−「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」−−を引用して、その納入を正当化しようとしていることに関して差し上げた公開質問状に対するお返事を頂き、ありがとうございます。

 「説明が舌足らず」だったが、NIF計画が「国防技術の維持・拡大をメインに据えたものではない」と述べたのは、実は、「NIF計画が新たな核兵器の開発につながるものではなく、国防技術の維持・管理を目的にしたものであり、拡大を目的とした計画ではない」と言いたかったのだとのご説明ですが、この両者の間にはあまりにも大きな隔たりがあり、単に説明不足という言葉ですまされるようなものではありません。

 前者の表現では、「NIF計画は、国防技術の維持も拡大も中心課題ではなく、民生用研究が中心である」としか取り得ません。日本のレーザー核融合の権威であられる教授のこの「結論」を引用することにより、HOYAは、マスコミや国民に、NIFは核兵器とあまり関係ない施設だとの印象を与えることに成功したわけです。

 実際は、教授も良くご存じのとおり、NIFは、米国が、その核兵器維持管理計画(ストックパイル・ステュワードシップ・プログラム=SSP)のかなめとして推進してきた計画であります。日本で比較的知られている未臨界実験が、水爆において引き金の役割を果たす第一段階の装置(プライマリー=原爆)に関する主要な実験の一つであるとするなら、NIFは、プライマリーから得られるエネルギーを利用して核融合を起こす第二段階部分(セカンダリー)についての主要な実験を行うものといえます。

 つまりNIFは、水爆のエネルギーの大半を出す部分についての研究を行う施設であり、水爆研究施設というべきものであることは、ご承知の通りです。また、NIFがエネルギー省の国防部門の予算で建設が進められている計画であるのも、周知の事実であります。
 IFEフォーラムが1999年11月9日に開いたシンポジウムでも、電力中央研究所研究顧問の苫米地顕氏が、「米国では、IFEの計画というのは、NIFの建設をベースに作られており、NIFは防衛計画のためにエネルギー省から資金が調達されています。そして、予算の非常に少ない枠組みだけが、慣性核融合エネルギー開発の方に投じられていると言うことであります。」と述べられています。

 米国エネルギー省(DOE)の2001年度予算説明書では、慣性核融合全体について次のような説明がされています。「DOEは、過去20年に渡ってICF(慣性核融合)を、核実験のモラトリアム下で核兵器の設計能力を維持するための主要手段とみなしてきた。」

 レーザー核融合の権威である教授の「結論」が与えた誤った印象が、NIF・HOYA問題についての事実に基づいた議論を妨げることになってしまったと言わざるを得ません。広島、長崎の両市長が被爆都市の市民の声を代表して抗議の声明を発表しているにも関わらず、HOYAが両市長に返答をする必要さえ感じていないらしいことも、教授の「結論」の影響が少なくないと思われます。

 従って、科学者としての責任を果たすために、次の二つのことを実行されるよう要望します。

1.HOYA並びに広島・長崎両市長を初めとする関係者に次の二点についての説明をはっきりとすること。

(1)シンポジウム報告書にある教授の「結論」は誤りであり、正しくは、「NIFは国防技術の維持・管理を目的にしたものである」と考えるとグリーンアクション、原子力資料情報室、原水爆禁止日本国民会議に伝えたこと。
(2)教授の表現に従えば、さらに正しくは、「国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画だが、『まったく新しいタイプ』の核兵器の開発を目指したものでないらしい」と言うべきであったこと。

 HOYAが教授の「結論」を含むシンポジウム報告書とともに送付してきたエネルギー省の文書(The National Ignition Facility (NIF) and the Issue of Nonproliferation, Final Study Prepared by the U.S. Department of Energy, Office of Arms Control and Nonproliferation (NN-40), December 19, 19951)(以下DOE文書)は、「核兵器維持管理計画(SSP)におけるNIFの主たる役割は、もっと一般的な意味で核兵器に関連した物理に関する中核的な知的・技術的能力を維持することにあるが、セカンダリーやブースト型プライマリー過程の一部に関連したコンピューター・コードの予測能力の改善のための特定のデータを提供することもできる。」と述べています。技術の何かの側面で改善や進歩があればそれは技術の拡大でしょう。

 また、米国がW87(大陸間弾道弾ピースキーパー用に開発されたもの)、W76(原子力潜水艦発射のトライデント・ミサイル用)、W80(巡航ミサイル用)、B61(飛行機搭載用核爆弾)など既存の核弾頭の設計に「改善」を加え、作り変える計画を持っており、そのための生産施設がロスアラモスに建設されていることは秘密でも何でもありません。その開発と認証にNIFが貢献するとされていることはご存じの通りです。

 DOE文書が強調しているのは、「新しいタイプの核兵器(進んだ核兵器の概念)の開発」をしないことであって、設計変更をまったくしないとは言っていません。そして、このタイプというのは定義の幅のある言葉です。

 実際、昨年4月11日の米国上院軍事委員会での証言においても「新しい核兵器のタイプを設計し、配備する能力は、核兵器維持管理計画の欠くことのできない部分である」と米政府は述べています。

 そもそも米国の核政策の根幹となっている1994年の「核態勢見直しNuclear Posture Review」がDOEに対し「新しい核弾頭を設計し、製造し、認証する能力を維持する」ことを義務づけているのです。そして、この能力の維持は、米国上院が第二次戦略核兵器削減条約(START2)を批准した際の決議(1996年)においても再確認されています。

 また、米国が新しい型の核兵器の開発に至る可能性のあることは、今年3月27日にも、米国の三つの主要核兵器研究所の一つサンディア国立研究所のポール・ロビンソン所長が「核安全保障政策決定者フォーラム」において小型で威力の比較的小さな核兵器(ミニニューク)の開発の必要を訴えたことでも明らかです。


2.下に挙げるような補足説明をすること。

 HOYAは、1970年代初めに研究開発に着手したのは、大阪大学工学部レーザー工学研究施設(現レーザー核融合研究センター)からレーザーガラスの供給を求められたことを契機とするものであり、その研究開発は、「HOYAがレーザーガラス材料を開発試作し、各研究機関が試作レーザーガラスの評価[を]するという共同研究を軸に進められている」としており、HOYAと貴センター(及びローレンス・リバモアの核兵器研究所)との関係の深さを窺わせます。また、HOYAは、教授が中心的役割を果たしてこられたIFEフォーラムの賛助会員にもなっています。そのような近しい関係にある専門家として、また、最初にNIF問題に関する誤解を生じさせた専門家として、正しい情報を伝える責任があると考えます。

(1)HOYAのガラスを使って「維持」された能力は、CTBTの批准を拒否している米国の核実験に利用される可能性があること。そして、そのことは、日本が批准したCTBTの第一条第2項にある「締約国は、更に、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発の実施を実現させ、奨励し、又はいかなる態様によるかを問わずこれに参加することを差し控えることを約束する。」との義務に違反する可能性が濃厚だということ。

 DOE文書が、「NIFの主たる目的は、核兵器に関連した物理学の専門家集団を米国で維持することにある」としていますが、これは、上述の1994年の「核態勢見直し」の要求に沿ったものであります。また、DOEの2001年度予算説明書が、ICF(慣性核融合)は核兵器設計の設計能力を維持するための主要手段としているのは、先に見たとおりです。米国が核実験を再開するようなことになれば、この能力が活かされることになる可能性があります。また逆に、NIFの不十分なデータを使って設計に変更を加えていく中で、その設計を検証するために核実験が必要だということになってしまう可能性もあります。

 上院の共和党議員らが、1999年にCTBTの批准拒否という暴挙にでたことは周知の通りです。この批准拒否の先頭に立った上院外交委員会のジェシー・ヘルムズ委員長は、パウエル国務長官に出した3月12日付けの書簡の中で、CTBTの署名を取り消し、地震のモニタリングなどの責任を負うCTBTの準備機関への分担金の納入を中止すべきだと述べています。ブッシュ政権もCTBTに批判的です。

(2)NIFは、核兵器の期待通りの威力の発揮を保障する「信頼性」の向上には役立つかもかもしれないが、核兵器が事故等で爆発することを防止する「安全性」の向上とはまったく、あるいは、ほとんど関係ないこと。

 DOEは「信頼性」と「安全性」を同じセンテンスに並べて使うため、HOYAの広報担当者らもこれらを混用しており、同じものだと信じているようですが、これらはまったく異なる概念であります。教授もご承知の通り、「安全性」とは、プライマリーが予期せぬ時に爆発することに関連したもので、セカンダリーの研究を中心とするNIFと直接の関係のないことはいうまでもなありません。DOE文書においても、SSP全体の信頼性・安全性向上への貢献について触れた後、NIFについては、信頼性維持に役立つことを強調するなど、この点について議論の余地はありません。つまり、NIFの役割は、もしあるとすれば期待通りの殺傷力を保障する「信頼性」に関するもので、事故などによる被害を防ぐ「安全性」の向上とは関係がありません。

 科学者としての責任を重視し、以上の要望の沿った行動を速やかにとるとともに、どのような措置を取られたかお知らせいただくようお願い申し上げます

 HOYAは、どのような根拠に基づいて教授の「結論」を支持するのかという問い合わせについて明確な文書による回答をしておりません。また、CTBTの下における日本の義務との関連をどう考えるかという質問にも答えておりません。(これはNIFにおける「爆発」がCTBTに違反するかどうかという議論とは別のものです。)NIFが安全性と関係がないという点については口頭で説明し、確認するよう求めましたが、HOYAからの返答は得ていません。その意味でも、HOYAに対する教授の説明は重要な意味を持ってきます。

 なお、教授は回答の中で、「米国は、『NIFは、新たな核兵器開発を目指すものではない』と発言しています」と述べられたり、別の場所でNIFの研究者の言い分を紹介されたりして、すでに米国の核政策について発言をなさっている訳ですから、米国の核政策やその中におけるNIFの役割については良く知らないなどという回答をされることのないようお願い申し上げます。これは、教授が、ご自身について、核兵器を作るための研究をしていないと主張されるのとはまったく別のことであることを申し添えておきます。


Institute of Laser Engineering
Osaka University
2-6 Yamada-oka
Suita Osaka, 565-0871, Japan

平成13年4月9日

 岩松 様 

前略
   ご依頼のございました公開質問状に対する回答を同封致しますので、よろしくご査収下さい。

草々

大阪大学
レーザー核融合研究センター
センター長 山中 龍彦

2001年4月9日

グリーン・アクション 代表 アイリーン・美智子・スミス 様
原子力資料情報室 共同代表 伴 秀幸 様
原水爆禁止国民会議 議長 岩松 繁俊 様

大阪大学レーザー核融合研究センター
センター長・教授 山中 龍彦

公開質問状に対する回答

 大阪大学レーザー核融合研究センターは、レーザー核融合エネルギー開発の基礎、および応用に関する研究を行うことを目的としたものであり、レーザー核融合エネルギーの平和利用目的研究を行うことを、かねてより国内外に表明してきました。米国に於ける核兵器の維持・管理を目的としたNIF計画とはまったく異なるものであります。平和利用推進には、国際原子力機関(IAEA)、国際エネルギー機構(IEA)を通じた国際協力が有効でありその推進を提案してきました。高エネルギー密度状態の物性、流体力学的安定性など基礎科学としての共通する部分があると考えられるが、その科学的知見のみによって核兵器を作れるものではなく、これらの知見は広く公開されているものであります。

 大阪大学レーザー核融合研究センターにおけるレーザー核融合研究が、一切の軍事研究にかかわることなく、エネルギー源として将来の人類に役立つ、科学の進展に役立つ、という信念を持って研究を行っていることは言うまでもありません。そのためにも、研究者が科学的知見の応用に対してセンシティブでなくてはならないと考えています。すなわち、原子力に関する知見が核兵器開発に使われてきた事実、また、科学・技術が諸刃の刃であることを認識し、研究者が常に自分たちの研究成果がどのように使われていくかについて注視し、発言していくべき立場にあると考えています。また、社会に対して常に適切な情報を提供する努力が必要と考えています。

 ご質問に対する回答は以下のとおりです。

1.シンポジウムにおける誰のどのような発言に基づいて、この結論(すなわち、「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画が我が国のマスコミで報道されているような国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点であろう」)を書かれたのか? 

 NIF(National Ignition Facility)は、核兵器の維持管理に関する研究を行うこと、またエネルギー開発と基礎科学研究を行うことを目的とした装置であると認識しています。一方、米国は、「NIFは、あらたな核兵器開発を目指すものではない」と発言しています。
 説明が舌足らずでご質問の引用文のようになりましたが、本来の意味は、「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画が新たな核兵器の開発につながるものではなく、国防技術の維持・管理を目的にしたものであり、拡大を目的とした計画ではないことが明らかになった点であろう」であります。

2.このシドニー大学の先生とは誰で、具体的にどのようなことを発言されたのか?

 これは、スタンフォード大学の名誉教授であり、スタンフォードリニア加速器センターの理論物理教授であったSidney D. Drell博士の間違いです。彼は、フーバ研究所の研究員でもあります。ホーガン氏のシンポジウムでの発言では、彼は1994年のJASONパネルのメンバーであり、パネラーは機密事項についても調査し、ICFターゲット実験は核兵器の爆発とは異なっており、両者を同一視することは間違いであると指摘しています。またJASONパネルは、慣性核融合エネルギー(IFE)に関する国際協力は核不拡散条約の目的に適合するものであると結論しています。


2001年4月4日

関西電力社長 石川 博志 様
関西電力
大阪市北区中之島3丁目3番22号

グリーン・アクション 代表 アイリーン・美緒子・スミス
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 議長 岩松 繁俊

公開質問状

HOYAが米国の核兵器研究所であるローレンス・リバモア国立研究所のレーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」にガラスを納入している問題で、同社は、貴社が深く関わるICFフォーラム(現IFEフォーラム)が1998年3月4日に開いたシンポジウムにおいて、「『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得て」いると述べ、納入を正当化しようとしています。この件について2点質問させて頂きますので、文書で回答くださいますようお願い申し上げます。

1.貴社は、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」と考えるか。

2.IFEフォーラムが1999年11月9日に開いたシンポジウムの報告書によると、ローレンス・リバモア国立研究所のウイリアム・ホーガン氏が「ICFターゲットに関してシドニー大学の先生が核兵器の爆発に関係していないんだということを明確に発言しています」と述べたことになっているが、このシドニー大学の先生とは誰で、具体的にどのようなことを発言されたのか。

 米国エネルギー省の核兵器部門から予算の全額がでており、そこで行われる実験の約85%が核兵器物理のためのもので、残りの実験が、核兵器の影響に関する研究と基礎及び応用科学のためのものという施設の計画を、「国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」と主張するのであれば、貴社の原子力計画について貴社が核武装計画に関係したものでないと主張しても、説得力を欠くことになるということを申し添えておきます。また、明確な回答を避けるようであれば、それもまた貴社の計画について疑念を呼ぶことになるでしょう。
 なお、上記の質問は、HOYAのNIFへのガラス納入問題そのものについて貴社の見解を問うものではなく、貴社が深く関係しているシンポジウムの結論とされているものについて、釈明を求めるものであります。従って、「他社の問題について口を挟むことはできない」というような回答をされる必要はありませんので、誤解なきようお願い申し上げます。

以下、事実関係についての理解を述べておきますので、貴社の関わる組織間の関わりなどについて誤解があればご指摘頂き、財団法人レーザー技術総合研究所、レーザー核融合技術振興会、IFEフォーラムの構成、役員、相互関係などについて詳しい説明を頂ければ、幸いです。

 HOYAは、2月20日付けで原水爆禁止日本国民会議に対して回答を送付し、その中で、1998年3月4日午後に開かれたICFフォーラムの国際シンポジウム「慣性核融合エネルギー開発の展望と国際協力」に触れ、この「シンポジウムにおいて、国際的視点から慣性核融合エネルギー開発に関する議論が展開され、ICFの研究内容は広く公開されており、『その情報から核兵器を作ることはできない』こと及び『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得ています。」としています。そして、ICFフォーラムの機関誌、「Forum Flash」(1998年5月23日付け)を同封してきております。
 シンポジウム開催時のICF(IFE)フォーラムの座長は、貴社の伊藤俊一常務取締役であり、1999年からの座長は、貴社の森詳介常務取締役となっています。さらに、同フォーラムの賛助会員には、HOYA及びHOYAコンテニュアムと並んで、貴社の名前も挙がっています。また、同フォーラムの母胎と思われる財団法人レーザー技術総合研究所の理事長は、同研究所のホームページによると、貴社の宮本一取締役副社長となっていて、その研究部は、尼崎市にある貴社の総合技術研究所におかれています。貴社の公式見解を求めるのは、ICF(IFE)フォーラムとのこのような密接な関係のためです。
 「Forum Flash」(1998年5月23日付け)は、、実質6ページのシンポジウム報告書となっていますが、半日の会議のパネル討論の参加者は、日本側の他は、ローレンス・リバモア国立研究所のウイリアム・ホーガン氏と国際原子力機関(IAEA)のトーマス・ドラン氏のみで、とても国際的視点から議論が展開されたといえるようなものではありません。そして、ホーガン氏の発言は9行でしか紹介されておらず、軍事研究については、「米国は国際エネルギー機関(IEA)に対し、IFEの国際協力を働きかけており、これが実現されればIEAの活動はIFE開発に一層集約され、軍事応用研究との分断も確立されることになるはずである。」と述べているにすぎません。
 ところが、同文書にあるフォーラム副幹事長で大阪大学レーザー核融合研究センター山中龍彦教授(現センター長)の報告では、「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点であろう(4ページ)」となっています。どうしてこんな結論になってしまったのか、質問1への答えと合わせて、具体的にご説明ください。 
 NIF計画が「国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でない」などと決していえないことは、この計画について少しでも知るものなら明らかであり、議論の余地などないと思いますが、念のため、下にいくつかの文書から引用をしておきます。


1.HOYAが上述の文書と同時に送付してきたエネルギー省の文書(The National Ignition Facility (NIF) and the Issue of Nonproliferation, Final Study Prepared by the U.S. Department of Energy, Office of Arms Control and Nonproliferation (NN-40), December 19, 19951)


 「NIFの主たる目的は、核兵器に関連した物理学の専門家集団を米国で維持することにある。」8ページ:

「核兵器維持管理計画におけるNIFの主たる役割は、もっと一般的な意味で核兵器に関連した物理に関する中核的な知的・技術的能力を維持することにあるが、セカンダリーやブースト型プライマリー過程の一部に関連したコンピューター・コードの予測能力の改善のための特定のデータを提供することもできる。」14ページ:

 原水爆禁止日本国民会議は、3月13日付けでHOYAに送付した公開質問状において、これら二つの文書の間の矛盾を指摘し、HOYAがどのような根拠に基づき「NIF計画は国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でない」との結論を支持するのか釈明を求めていますが、3月26日からの納入再開を通告してきた同社の回答では、この質問については一言も触れておりません。元々、この「結論」を根拠に納入をすることにしているとの説明はHOYAの方から自発的に出されたものですが、都合が悪くなって、質問を完全に無視しているととらざるを得ません。貴社は、もっと社会的責任を重視した態度をとられることと期待しております。

2.ICFフォーラムシンポジウム「レーザー核融合研究開発の進め方」報告書(当日の発言をそのまま載せたもの。平成12年3月31日、ICFフォーラム・レーザー核融合技術振興会)

1999年11月9日午後に開かれたこのシンポジウムで電力中央研究所研究顧問の苫米地顕氏は、ホーガン氏に次のように質問しています。

「米国では、IFEの計画というのは、NIFの建設をベースに作られており、NIFは防衛計画のためにエネルギー省から資金が調達されています。そして、予算の非常に少ない枠組みだけが、慣性核融合エネルギー開発の方に投じられていると言うことであります。しかし、このIFEあるいはICFの国際協力ということを念頭において、私が伺いたいのはこの軍事に直接関連するものと、そうでないもの、つまりこの核融合エネルギー科学と区別することができますか?」(43ページ)
 質問2にあるホーガン氏の発言は、この問いに対する答えの中ででてきたものです。ホーガン氏は、「ええまったくそれは違うものです」と答えた後、シドニー大学の先生に触れております。1998年のシンポジウムで「最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点」とした専門家集団のICF(IFE)フォーラムであれば、当然、ホーガン氏が言及したシドニー大学の先生の発言について知っていたか、あるいは、後から内容を確認して、報告書を作成したものと考えられますが、ご説明ください。

3.GAO/RCED・00・271
(米国会計検査院から下院国防委員会軍事調達小委員会委員長らに宛てた報告書、2000年8月8日)

「DOEは、NIFを、その何十億ドルもかかる核兵器維持管理計画(SSP)にとって欠くことのできない要素とみなしている。SSPは、核実験なしで核兵器の安全性と信頼性を保障する任務を負っているものである。SSPは、NIFに加えて、古い研究・製造施設のインフラにとって代わるための他の科学施設を建造・運営し、既存の核兵器を刷新refurbishする。」3ページ


「NIFの主要な目的は、エネルギー省(DOE)の核兵器維持管理計画(SSP)を支えることにある。SSPは、米国の核兵器を、科学的研究と定期的な核兵器兵器刷新によって、無期限に維持するためのものである。1990年に米国科学アカデミーは、核兵器の科学者達が核実験なしに核兵器の振る舞いを評価することができるように、熱核状態をシミュレートすることが可能なレーザーをDOEは作るべきだと提言した。1993年にDOEは、このレーザーの計画を承認した。これが、いま国家点火施設(NIF)と呼ばれている。」6ページ

「NIFは、DOEの「慣性閉じ込め核融合プログラム」によって管理されている。このプログラムは、DOEの国防計画局の一部である。[現在は国家核安全保障局と名称変更]同局は、NIF計画の必須部分の研究を行っている。DOEの計画によると、施設の実験の約85%が核兵器物理のためのものである。残りの実験は、核兵器の影響に関する研究と基礎及び応用科学のためのものである。」6ページ


「保有核兵器のうちの二つ−−W76とW80−−の刷新(refurbishments)は、向こう10年の間に予定されている。NIFは、この刷新過程に役に立つだろう。提案されている変更が核兵器の安全性及び信頼性にとって持つ可能性のある影響について核兵器科学者が研究することを可能にするからである。」26ページ
[注:この文章からrefurbishmentというのが既存の核兵器の設計に変更を加えて改良することを指していることが分かる。NIFはそのために必要だと言っているのである。]
「いくつかの大学の科学者等は、NIFのコスト超過のため、民生用研究のための資金が削減されると恐れていると我々に語った。」28ページ

4.Applications of High Power Lasers to Science-Based Stockpile Stewardship (U)," First Edition, CLY-96-0037, held in Las Vegas, Nevada, March 1996.
(非公開シンポジウムの報告書の機密解除された部分)

「NIFの設計者の多くは、直接的核兵器活動に関わる。」24ページ

「高出力のレーザーは、熱核兵器の威力に影響を与える主要な物理学的問題を扱うことができる。」25ページ
「NIFは、これまでのものと比べ、100倍もエネルギーが大きいから、シミュレーションと実際の核兵器の振る舞いのギャップを相当縮めることができる。」25ページ

5.DOE Research and Development Portfolio
(2001年度予算説明書)
「DOEは、過去20年に渡ってICFを、核実験のモラトリアム下で核兵器設計の設計能力を維持するための主要手段とみなしてきた。」

私たちは、DOEの宣伝文句をそのまま鵜呑みにしている訳ではありません。実際、上記の会計検査院の文書は、NIFの責任者らが、予想される費用や、研究開発・建設の進捗状況についてDOEや議会に嘘をついていたことを報告しています。レーザーの責任者は、虚偽の報告と学歴詐称のために辞任を余儀なくされました。しかし、そのことと、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」として、NIFがあたかも民生用が中心であるかのようなことを言うのとは、まったく別の問題だと考えます。
以上の点を考慮して、誠実にお答え頂くよう再度お願い申し上げます。

(回答先: 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館5F 原水禁 電話03-5289-8224 FAX 03-5289-8223)


2001年4月4日

大阪大学総長 岸本 忠三 様
大阪大学
565-0871 吹田市山田丘1-1 電話 06-6877-5111

グリーン・アクション 代表 アイリーン・美緒子・スミス
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 議長 岩松 繁俊

公開質問状

HOYAが米国の核兵器研究所であるローレンス・リバモア国立研究所のレーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」にガラスを納入している問題で、同社は、貴大学が深く関わるICFフォーラム(現IFEフォーラム)が1998年3月4日に開いたシンポジウムにおいて、「『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得て」いると述べ、納入を正当化しようとしています。この件について2点質問させて頂きますので、文書で回答くださいますようお願い申し上げます。

1.貴大学は、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」と考えるか。

2.IFEフォーラムが1999年11月9日に開いたシンポジウムの報告書によると、ローレンス・リバモア国立研究所のウイリアム・ホーガン氏が「ICFターゲットに関してシドニー大学の先生が核兵器の爆発に関係していないんだということを明確に発言しています」と述べたことになっているが、このシドニー大学の先生とは誰で、具体的にどのようなことを発言されたのか。

 米国エネルギー省の核兵器部門から予算の全額がでており、そこで行われる実験の約85%が核兵器物理のためのもので、残りの実験が、核兵器の影響に関する研究と基礎及び応用科学のためのものという施設の計画を、「国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」と主張するのであれば、貴大学のレーザー核融合計画が核武装計画に関係したものでないと主張しても、説得力を欠くことになるということを申し添えておきます。また、明確な回答を避けるようであれば、それもまた貴大学の計画について疑念を呼ぶことになるでしょう。
 なお、上記の質問は、HOYAのNIFへのガラス納入問題そのものについて貴大学の見解を問うものではなく、貴大学が深く関係しているシンポジウムの結論とされているものについて、釈明を求めるものであります。従って、「HOYAの問題について口を挟むことはできない」というような回答をされる必要はありませんので、誤解なきようお願い申し上げます。

以下、事実関係についての理解を述べておきますので、貴大学の関わる組織間の関わりなどについて誤解があればご指摘頂き、財団法人レーザー技術総合研究所、レーザー核融合技術振興会、IFEフォーラムの構成、役員、相互関係などについて詳しい説明を頂ければ、幸いです。

 HOYAは、2月20日付けで原水爆禁止日本国民会議に対して回答を送付し、その中で、1998年3月4日午後に開かれたICFフォーラムの国際シンポジウム「慣性核融合エネルギー開発の展望と国際協力」に触れ、この「シンポジウムにおいて、国際的視点から慣性核融合エネルギー開発に関する議論が展開され、ICFの研究内容は広く公開されており、『その情報から核兵器を作ることはできない』こと及び『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得ています。」としています。そして、ICFフォーラムの機関誌、「Forum Flash」(1998年5月23日付け)を同封してきております。
 シンポジウム開催時のICF(IFE)フォーラム副幹事長は、貴大学レーザー核融合研究センター山中龍彦教授(現センター長)であり、上記結論を書いたのは同教授であります。さらに、同フォーラムの母胎と思われる財団法人レーザー技術総合研究所の副理事長は、同研究所のホームページによると、山中千代衛貴大学名誉教授であります。ホームページの研究所概要には、事務部(大阪科学技術センタービル)、研究部(関西電力総合技術研究所内)と並んで、貴大学核融合研究センターの地図が載っています。貴大学の公式見解を求めるのは、ICF(IFE)フォーラムとのこのような密接な関係のためです。この問題は単にレーザー核融合研究センターだけのものではなく、貴大学全体の信用に関わるものと考えます。
 「Forum Flash」(1998年5月23日付け)は、実質6ページのシンポジウム報告書となっていますが、半日の会議のパネル討論の参加者は、日本側の他は、ローレンス・リバモア国立研究所のウイリアム・ホーガン氏と国際原子力機関(IAEA)のトーマス・ドラン氏のみで、とても国際的視点から議論が展開されたといえるようなものではありません。そして、ホーガン氏の発言は9行でしか紹介されておらず、軍事研究については、「米国は国際エネルギー機関(IEA)に対し、IFEの国際協力を働きかけており、これが実現されればIEAの活動はIFE開発に一層集約され、軍事応用研究との分断も確立されることになるはずである。」と述べているにすぎません。
 ところが、同文書にあるる山中龍彦教授の報告では、「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点であろう(4ページ)」となっています。どうしてこんな結論になってしまったのか、質問1への答えと合わせて、具体的にご説明ください。 
 NIF計画が「国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でない」などと決していえないことは、この計画について少しでも知るものなら明らかであり、議論の余地などないと思いますが、念のため、下にいくつかの文書から引用をしておきます。

1.HOYAが上述の文書と同時に送付してきたエネルギー省の文書(The National Ignition Facility (NIF) and the Issue of Nonproliferation, Final Study Prepared by the U.S. Department of Energy, Office of Arms Control and Nonproliferation (NN-40), December 19, 19951)


 「NIFの主たる目的は、核兵器に関連した物理学の専門家集団を米国で維持することにある。」8ページ:

「核兵器維持管理計画におけるNIFの主たる役割は、もっと一般的な意味で核兵器に関連した物理に関する中核的な知的・技術的能力を維持することにあるが、セカンダリーやブースト型プライマリー過程の一部に関連したコンピューター・コードの予測能力の改善のための特定のデータを提供することもできる。」14ページ:

 原水爆禁止日本国民会議は、3月13日付けでHOYAに送付した公開質問状において、これら二つの文書の間の矛盾を指摘し、HOYAがどのような根拠に基づき「NIF計画は国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でない」との結論を支持するのか釈明を求めていますが、3月26日からの納入再開を通告してきた同社の回答では、この質問については一言も触れておりません。元々、この「結論」を根拠に納入をすることにしているとの説明はHOYAの方から自発的に出されたものですが、都合が悪くなって、質問を完全に無視しているととらざるを得ません。貴大学は、もっと社会的責任を重視した態度をとられることと期待しております。

2.ICFフォーラムシンポジウム「レーザー核融合研究開発の進め方」報告書(当日の発言をそのまま載せたもの。平成12年3月31日、ICFフォーラム・レーザー核融合技術振興会)

 1999年11月9日午後に開かれたこのシンポジウムで電力中央研究所研究顧問の苫米地顕氏は、ホーガン氏に次のように質問しています。

「米国では、IFEの計画というのは、NIFの建設をベースに作られており、NIFは防衛計画のためにエネルギー省から資金が調達されています。そして、予算の非常に少ない枠組みだけが、慣性核融合エネルギー開発の方に投じられていると言うことであります。しかし、このIFEあるいはICFの国際協力ということを念頭において、私が伺いたいのはこの軍事に直接関連するものと、そうでないもの、つまりこの核融合エネルギー科学と区別することができますか?」(43ページ)
 質問2にあるホーガン氏の発言は、この問いに対する答えの中ででてきたものです。ホーガン氏は、「ええまったくそれは違うものです」と答えた後、シドニー大学の先生に触れております。1998年のシンポジウムで「最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点」とした専門家集団のICF(IFE)フォーラムであれば、当然、ホーガン氏が言及したシドニー大学の先生の発言について知っていたか、あるいは、後から内容を確認して、報告書を作成したものと考えられますが、ご説明ください。

3.GAO/RCED・00・271
(米国会計検査院から下院国防委員会軍事調達小委員会委員長らに宛てた報告書、2000年8月8日)

「DOEは、NIFを、その何十億ドルもかかる核兵器維持管理計画(SSP)にとって欠くことのできない要素とみなしている。SSPは、核実験なしで核兵器の安全性と信頼性を保障する任務を負っているものである。SSPは、NIFに加えて、古い研究・製造施設のインフラにとって代わるための他の科学施設を建造・運営し、既存の核兵器を刷新refurbishする。」3ページ


「NIFの主要な目的は、エネルギー省(DOE)の核兵器維持管理計画(SSP)を支えることにある。SSPは、米国の核兵器を、科学的研究と定期的な核兵器兵器刷新によって、無期限に維持するためのものである。1990年に米国科学アカデミーは、核兵器の科学者達が核実験なしに核兵器の振る舞いを評価することができるように、熱核状態をシミュレートすることが可能なレーザーをDOEは作るべきだと提言した。1993年にDOEは、このレーザーの計画を承認した。これが、いま国家点火施設(NIF)と呼ばれている。」6ページ

「NIFは、DOEの「慣性閉じ込め核融合プログラム」によって管理されている。このプログラムは、DOEの国防計画局の一部である。[現在は国家核安全保障局と名称変更]同局は、NIF計画の必須部分の研究を行っている。DOEの計画によると、施設の実験の約85%が核兵器物理のためのものである。残りの実験は、核兵器の影響に関する研究と基礎及び応用科学のためのものである。」6ページ


「保有核兵器のうちの二つ−−W76とW80−−の刷新(refurbishments)は、向こう10年の間に予定されている。NIFは、この刷新過程に役に立つだろう。提案されている変更が核兵器の安全性及び信頼性にとって持つ可能性のある影響について核兵器科学者が研究することを可能にするからである。」26ページ
[注:この文章からrefurbishmentというのが既存の核兵器の設計に変更を加えて改良することを指していることが分かる。NIFはそのために必要だと言っているのである。]
「いくつかの大学の科学者等は、NIFのコスト超過のため、民生用研究のための資金が削減されると恐れていると我々に語った。」28ページ

4.Applications of High Power Lasers to Science-Based Stockpile Stewardship (U)," First Edition, CLY-96-0037, held in Las Vegas, Nevada, March 1996.
(非公開シンポジウムの報告書の機密解除された部分)

「NIFの設計者の多くは、直接的核兵器活動に関わる。」24ページ

「高出力のレーザーは、熱核兵器の威力に影響を与える主要な物理学的問題を扱うことができる。」25ページ
「NIFは、これまでのものと比べ、100倍もエネルギーが大きいから、シミュレーションと実際の核兵器の振る舞いのギャップを相当縮めることができる。」25ページ

5.DOE Research and Development Portfolio
(2001年度予算説明書)
「DOEは、過去20年に渡ってICFを、核実験のモラトリアム下で核兵器設計の設計能力を維持するための主要手段とみなしてきた。」

私たちは、DOEの宣伝文句をそのまま鵜呑みにしている訳ではありません。実際、上記の会計検査院の文書は、NIFの責任者らが、予想される費用や、研究開発・建設の進捗状況についてDOEや議会に嘘をついていたことを報告しています。レーザーの責任者は、虚偽の報告と学歴詐称のために辞任を余儀なくされました。しかし、そのことと、「NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」として、NIFがあたかも民生用が中心であるかのようなことを言うのとは、まったく別の問題だと考えます。
以上の点を考慮して、誠実にお答え頂くよう再度お願い申し上げます。

(回答先: 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館5F 原水禁 電話03-5289-8224 FAX 03-5289-8223)


2001年4月4日

センター長 山中龍彦 教授 様
大阪大学レーザー核融合研究センター
565-0871 大阪府吹田市山田丘2-6
電話 06-6879-8703 ファクシミリ 06-6877-4799

グリーン・アクション 代表 アイリーン・美緒子・スミス
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 議長 岩松 繁俊

公開質問状

HOYAが米国の核兵器研究所であるローレンス・リバモア国立研究所のレーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」にガラスを納入している問題で、同社は、ICFフォーラム(現IFEフォーラム)が1998年3月4日に開いたシンポジウムにおいて、「『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得て」いると述べ、納入を正当化しようとしています。これは、教授がフォーラム副幹事長として書かれたシンポジウムの報告書にある「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点であろう(4ページ)」を引用したものと思われますので、この件について2点質問させて頂きますので、文書で回答くださいますようお願い申し上げます。

1.シンポジウムにおける誰のどのような発言に基づいて、この結論を書かれたのかご説明下さい。

2.IFEフォーラムの1999年11月9日のシンポジウムの報告書によると、ローレンス・リバモア国立研究所のウイリアム・ホーガン氏が「ICFターゲットに関してシドニー大学の先生が核兵器の爆発に関係していないんだということを明確に発言しています」と述べたことになっています。教授もパネリストして参加されており、報告書の作成にも中心的に関わられたと思いますが、このシドニー大学の先生とは誰で、具体的にどのようなことを発言されたのか、お教え下さい。

 米国エネルギー省の核兵器部門から予算の全額がでており、そこで行われる実験の約85%が核兵器物理のためのもので、残りの実験が、核兵器の影響に関する研究と基礎及び応用科学のためのものという施設の計画を、「国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない」と主張するのであれば、貴センターのレーザー核融合計画が核武装計画に関係したものでないと主張しても、説得力を欠くことになるということを申し添えておきます。また、明確な回答を避けるようであれば、それもまた貴センターの計画について疑念を呼ぶことになるでしょう。
 なお、上記の質問は、HOYAのNIFへのガラス納入問題そのものについて教授の見解を問うものではありませんので、「HOYAの問題について口を挟むことはできない」というような回答をされる必要はありませんので、誤解なきようお願い申し上げます。
 HOYAは、2月20日付けで原水爆禁止日本国民会議に対して回答を送付し、その中で、1998年3月4日午後に開かれたICFフォーラムの国際シンポジウム「慣性核融合エネルギー開発の展望と国際協力」に触れ、この「シンポジウムにおいて、国際的視点から慣性核融合エネルギー開発に関する議論が展開され、ICFの研究内容は広く公開されており、『その情報から核兵器を作ることはできない』こと及び『NIF計画は、国防技術の維持・拡大を中心に据えたものではない』との結論を得ています。」としています。そして、ICFフォーラムの機関誌、「Forum Flash」(1998年5月23日付け)を同封してきております。

 「Forum Flash」(1998年5月23日付け)は、実質6ページのシンポジウム報告書となっていますが、ホーガン氏の発言は9行でしか紹介されておらず、軍事研究については、「米国は国際エネルギー機関(IEA)に対し、IFEの国際協力を働きかけており、これが実現されればIEAの活動はIFE開発に一層集約され、軍事応用研究との分断も確立されることになるはずである。」と述べているにすぎません。
 ところが、同文書にある教授の報告では、「今回のパネル討論で得た最大の収穫は、NIF計画がわが国のマスコミで報道されている様な国防技術の維持・拡大をメインに据えた計画でないことが明らかになった点であろう(4ページ)」となっています。この結論の根拠を具体的にお教え下さい。ホーガン氏のペーパーの引用であれば、原文も提示していただくようお願い申しあげます。
 NIFは「国防技術の維持・拡大をメインに据えたものでない」という主張を変えられない場合には、その主旨を日英両国語のメモにしていただけますか。米国エネルギー省及び議会に送ってコメントを求めたいと思います。
 なお大阪大学総長には、同封のような公開質問状を別にお渡していますので、申し添えておきます。
(回答先: 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館5F 原水禁 電話03-5289-8224 FAX 03-5289-8223)