資料
( 1976 )

被爆31周年原水爆禁止世界大会での主催者代表演説

(原水爆禁止日本国民会議代表委員・森瀧市郎)


 海外からはるばる参加された外国代表のみなさん!
 日本国内の各地から御参加のみなさん!
 本大会に御参加下さったことに対してまず心からの感謝の意を表明いたします。
 今年は一九四五年八月、ヒロシマ、ナガサキに原爆が投下されてから三十一年目に当ります。たった二発の爆弾が二つの都市を壊滅させ、数十万人を一瞬にして殺し、さらに三十数万人の被爆生存者に後れた死をせをわせたあの歴史的な日から三十一年を経たのです。しかし私たち人類は、この最も非人道的な平気である核兵器をいまなお廃棄できずにいるのであります。

 第二次大戦後、私たちはたしかに戦争に核兵器が使われることだけは阻止してきました。朝鮮戦争でも、一九六二年のキューバ危機の際にも核の使用だけは許しませんでしたし、ベトナム戦争での核兵器は使わせませんでした。
 そこには、私の尊敬するバートランド・ラッセル卿をはじめ多くの偉人の努力や核戦争に反対する世界民衆の世論が大きく貢献しておりました。
 だがしかし、今世紀の三分の一に近い年月米ソを始めとする核保有国は、核兵器の開発とその運搬手段の増強のために、気狂いじみた努力をつづけてきました。核軍拡競争にたずさわる者達は、すでに人類を数十回も殺しつくせる核兵器をもっているにもかかわらず、なおも核の増強を追求しています。
 原爆被爆の悲惨な状況を直接体験した私には、このような核軍拡競争は狂気としかいいようがありません。核兵器の破壊力をみれば明らかなように、この兵器は、国家目的を達成したり、外交政策を展開する手段としては役立ちません。核戦争となれば、その瞬間的な破壊力だけではなく放射能汚染という重大な結果に見舞われます。被害は国境を越えて世界各国に波及してゆくでしょう。もはや政治的目的以上の破滅的被害が人類を襲うことは明らかです。

 私はここで特に放射線障害の恐ろしさに触れたいと思います。ヒロシマ、ナガサキの生き残った被爆者のなかには、まず白血病にかかる者が多数あらわれ、そして死んでゆきました。さらに年を経てから各種のガンを発病する者が増え、死を宣告されました。また、得体の知れない疲れと健康定価をきたす者が後を絶ちません。三十年経た今日でもこの傾向は止んでいないのです。
 皆さん! この放射線被曝による障害の特殊性に是非注目して下さい。
 と申しますのは、核エネルギーの「平和利用」とよばれる原子力発電もまた、人間にこの放射線障害という過酷な被害を与えるからであります。今日、世界各地でつくられている原発は、少なくとも次のような問題を抱えています。

  1. 原発の安全性が確証されていないということ。
  2. 放射性廃棄物の捨て場がないということ。
  3. 原発のつくりだすプルトニウムの毒性を防護する手段も、管理の体系も確立されていない。またそれを核兵器に転用することを阻止する方法もないということ。

 この結果、原発をつくってゆく限り、放射能による環境汚染がすすみ、多数の人びとがその被害者にされる機会がふえようとしています。日本ではすでに、原発の作業に従事していた労働者、数名が急性白血病で死亡するという事故も起こっています。その病状は原爆被爆者の場合と相似したものだったと報告されています。
 さらにつけ加えますと、私たちは核分裂反応を利用した原発に反対するとともに、いまや核融合炉にも批判的とならざるを得ません。核融合の場合にも、人間の遺伝子に甚大な影響を与えるトリチウムが大量に環境中に放出されるし、放射化した大量の金属をつくりだすからです。また巨大な炉にならざるを得ない核融合炉は、必然的に熱公害をもたらすといわれています。

 こうしてみてくると、私たちは核兵器即ち核の「軍事利用」に反対するとともに、核の「平和利用」にも反対し、「核絶対否定」の立場を貫く以外はありません。
 このことは今日、とくに重要と思われます。
 現在、世界中で各国が競って原発を輸入したり、建設したりしています。開発途上国への原発輸出も活発です。これらの原発は近い将来に、これらの国ぐにに大量のプルトニウムを蓄積することになりますが、これが軍事利用に転用されないという保証はありません。恐らく、ある国が核兵器をもてば、対立関係にある隣国も核兵器をつくることになるでしょう。わらに第三国もまた核保有への衝動をつよめ、とめどのない核拡散の連鎖反応を引き起こしてゆくでしょう。この恐るべき核拡散を潜在的に準備しているのが現在の原発輸出競争ともいえます。
 これから二〇世紀最後の二十五年間に、人類はこうした核の無政府的状況に突入しなくてはならないのでしょうか。核開発を手がけた人類は、このような恐るべき世界を創りだしてしまうのでしょうか。
 私は、今世紀最後の四分の一世紀こそ、人類が核全面否定の立場を貫き、誤れる科学・技術文明を根本的に転換させる機会にしなくてはならないと思います。これが人類が生きのびるための最後の機会だと信じています。
 このような観点から本会議の議題を次の三つにすることに致しました。

  1. 核兵器の危険性とその被害
  2. 核の平和利用の危険性
  3. 核兵器の拡散の阻止

 これら三つの議題を通じて、私たちが核廃絶をめざし人類の生存を確保しようとする共同行動を全世界に展開する方途を探ろうではありませんか。
 各国から参加された代表の皆さん、それに日本の代表の方がたが以上の趣旨をご理解いただき、御協力下さることを願って、私の発言を終わらせていただきます。
 どうもご静聴ありがとうございました。

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