資料
1996.8

核兵器廃絶のためのキャンベラ委員会報告書


1996年8月14日提出

オーストラリア大使館広報部

キャンベラ委員会

「核兵器の廃絶のためのキャンベラ委員会」は、核兵器のない世界実現に向けて取るべき実際的な段階を、これに移行する時期およびその目的達成後の安定と安全保障維持に関連する問題を含めて提案するため、1995年11月オーストラリア政府が設置した独立の委員会である。

キャンベラ委員会声明

核兵器の破壊力は強大である。その如何なる使用も悲惨である。

核兵器は全人類とその居住環境に絶えがたい脅威を与えているが、未だに何万もの核兵器が、強い敵愾心が充満した異常な一時期に構築された兵器庫の中に残っている。あのような時代は既に過ぎ去ったのに、核兵器の効用についての主張はまだ続いている。

こうした事実は明白であるが、その意味するところは曖昧である。世界の人たちが核兵器固有の危険性とその使用が及ぼす結果についてより深く理解すれば、彼等は核兵器を拒絶し、たとえ正当な自衛のためといえども、彼等のために政府が保有を続けたり、入手しようとすることを許しはしないであろう。

核兵器は、こうした兵器には独特の安全保障上の利点があると主張し、しかもそれを持つ権利を自分たちだけに限ろうとする、一握りの国家が保有している。このような状態は極めて差別的であり、従って不安定である。長続きはしないであろう。如何なる国家により核兵器の保有も、絶えずその他の国の所有欲を駆り立てる。

世界は核拡散と核によるテロの脅威に直面している。こうした脅威は増大している。排除されなければならない。

このような様々な理由から、核兵器は全ての国家の安全保障を縮小しているというのが、一つの重要な現実である。事実、核保有国は自分たち自身が核兵器の目標になっているのである。

恐らく前例はないであろうが、今や世界が核兵器抜きで、国連憲章の原則に則って問題を処理できるようになるための、新しく明確な選択をするチャンスが存在している。

キャンベラ委員会のメンバーは、アメリカ、ロシア、イギリス、フランスおよび中国に、あらゆる核兵器の廃止を明確に決意して先鞭を付けることを要求する。かかる決意は、最も端的かつ想像力に富んだ方法で、その過程を促進するであろう。その他の全ての政府は、この決意に加わり、その実現に貢献すべきである。

委員会は、直ちに実行され、その結果世界がより安全になるであろうと思われる一連の段階を明確にした。

委員会はまた、核兵器の検証可能な廃絶と軍事使用可能な核物質の、完全な安全管理実現のための実際的な措置を画策した。

核兵器のない世界は政治的決意によって得られ、維持され、永続的な責任のある法的枠組みの中で保つことが可能であろう。

以上

核兵器廃絶のためのキャンベラ委員会報告書
1996年8月14日提出
要旨

キャンベラ委員会は、核兵器とその及ぼす脅威を世界から除去するため、即時の断固とした努力が必要であると信じている。核兵器の破壊力は強大である。その如何なる使用も破滅的である。

核兵器が永久に保存され、しかも偶然によっても、決定によっても、決して使用されることはないとする主張には信頼の余地がない。唯一完璧な防御法は、核兵器の廃絶と絶対に二度と作らないという確約しかない。

二極対決の終焉で核災害の危機が去った訳ではない。ある意味では、偶発的、あるいは誤算による使用の危険が増加している。核兵器保有国における政治的動揺や国家権威の低下は、核兵器や兵器資材の安全な運用、管理を保障する現在の制度を無能にし、惨事の確率を増加させかねない。核能力がそれほどには進んでいないその他の諸国や国に準じた集団、あるいは将来このような能力を保持したいと望んでいる国々も、同様の運命に見舞われる可能性がある。

永らく核兵器は、戦場で個別の目標を捕捉するには、余りにも破壊力が強く、無差別すぎると思われてきた。核兵器の破壊力が極めて強大であるため、相手の核兵器使用を抑止できると信じる以外に、同等な軍備の相手に立ち向かえる軍事的に有効なものは何も存在しない。核兵器を保有することによって、これまで様々な地域で、大国が直接、関接に関与してきた戦争を防止出来ていない。これらの大国が屈辱的な交代を余儀なくされた時ですら、核兵器の使用は適さないと思われた。

どの核保有国も、未だに国の政策として、化学兵器や生物兵器の使用に対抗して、核兵器を使用すると公言したり、使用しようとしてはいない。このような懸念に対する解決は、御しがたい開発の早期発見に特に重点を置いた、化学兵器禁止条約および生物兵器禁止条約の強化と効果的実施ならびにその世界的な遵守にかかっている。如何なる違反に対する反応も多国間でなされるべきである。

こうすれば、核兵器に対して残る唯一の軍事的効用は、他国の使用を抑制することにある。この効用があることは、核兵器が継続して存在することを意味する。核兵器がなくなれば、この効用も完全に消滅する。

新しい行動環境
核兵器には独特の安全保障上の利点があると主張し、しかもそれを持つ権利を自分たちだけに限ろうとする、一握りの国家だけだ核兵器を保有している。このような状態は極めて差別的であり、従って不安定である。永続しないであろう。如何なる国家による核兵器の保有も、絶えずそれ以外の国の保有欲を駆り立てる。

1960年代に、核保有国が何ダースにも増える可能性を察して、世界はこれを嫌悪し、反対した。その結果が、こうした兵器のない世界の実現を約束した、1968年の核拡散防止条約(NPT)であった。NPTやその他の核不拡散条約の全体的な成功は満足すべきであるが、その締結は困難であったし、何の保証もない。水平的拡散再開の見通しは現実のものとなっている。

核兵器の拡散は国際社会が直面している最も緊急の安全保障課題の一つである。国際的核不拡散体制の影響にも関わらず、幾つかの国が核兵器の開発を行い、あるいは製造を継続したり、密かに開発に努力しているという現実には当惑する。核兵器や核物質をテロ集団が入手する可能性は、国際社会に対する脅威を増大させている。

冷戦の終焉は、核兵器を廃絶しようとする国際的行動の新しい環境、新しいチャンスを生み出した。これは即刻促進しなければならない。さもないとこの機会は失われる。

核兵器の廃絶は全ての国を含めた全世界的な努力でなければならない。このためのプロセスは、どの国にも、如何なる段階においても、これ以上の核軍縮は安全保障に対する脅威であると感じさせないことを保証する必要がある。このためには、核兵器の廃絶は、そのための今後の行動が、プロセスの夫々の段階で安全かつ確実に行われることに全ての国が満足出来るよう、段階的に検証しながら削減する一連の方法が取られるべきである。

直ちに取るべき段階
最初に要求されるのは、5大核保有国が、核兵器の廃絶を明確に決意し、その達成のため必要とする実務的な段階や交渉に関わる作業を、直ちに開始するのに同意することである。この決意は最高の政治レベルでなされなければならない。核非保有国は核保有国の決意を支持し、その実施のための国際的協力行動に加わるべきである。この決意は討議の性格や戦争計画の推進力、さらに近代化計画の時期、事実、その必要性まで、直ちに変更させることになるであろう。これは、核兵器の使用とさらなる拡散という二つのリスクを担った世界の、核兵器に対する無期限の管理から、核兵器廃絶の管理へと、核兵器の範疇を移行させるであろう。この決意の交渉は、第一段階の1997年実施を目標に、直ちに開始すべきである。

核保有国の核兵器のない世界実現への決意には、一連の実践的 、現実的かつ相互に強化し合える段階を伴うべきである。このような段階には即刻実行できるものが数多くある。これによって核戦争の危機が大幅に削減され、全ての国、特に核保有国の安全保障が促進されるであろう。その実施によって、安全保障態勢の中での核兵器の役割を、一層軽減しようとする核保有国の意図が、明確に確認されることになるであろう。勧告する段階は次のとおりである:

・核戦力の臨戦態勢解除
・運搬手段から核弾頭の取り外し
・非戦略的核兵器配備の停止
・核実験の中止
・アメリカとロシアの核保有削減交渉開始
・核保有国間における相互の核兵器先制使用放棄と、非核保有国に対する核兵器使用禁止の同意

核兵器保有国は、全ての核戦力を臨戦態勢から外すべきで、これによって偶発的あるいは正当に指令されない核兵器発射の機会が劇的に減少できる。先ず、臨戦態勢の削減は核保有こが独自に行うべきである。

運搬手段から核弾頭を実際に取り外すことは、核戦力の臨戦態勢解除で達成された成果を大幅に強化するであろう。この措置は、核戦力が、知らされたか同意された時間の枠内でのみ、臨戦態勢に再編成できるという限度まで実施可能である。

核保有国は独自に、全ての非戦略的核兵器を配置した地点から、夫々の領土にある一定数の安全な格納施設に移動すべきである。

包括的核実験禁止条約(CTBT)の全世界的な適用はこれからであるが、全ての国は直ちにこの条約が核実験に関して規定している通り、実験の凍結に従うべきである。

アメリカとロシアは、冷戦中に蓄積された核兵器の削減で、引き続き指導性を発揮すべきである。その目的は、全ての核保有国の核戦力レベルを、信頼できる検証が可能になった時点で核兵器を廃絶しようとする決意を、明確に反映した方向に向かわせるものでなければならない。

核保有国は、互いに先制使用をせず、あるいは核兵器使用を威嚇を行わず、そして非核保有国との如何なる紛争に際しても核兵器を使用せず、使用の威嚇をしないことに同意し、公言すべきである。このような合意は、早急に実行に移すべきである。

強化段階
直ちに取るべき行動として勧告した段階の実施によって達成される決意、業績、善意の堅固な基盤の上に、次の段階が取られるべきである:

・水平的拡散防止の行動
・核兵器のない世界実現のための検証協定の促進
・核爆発を目的とした核物質の生産中止

核拡散の問題は、極く少数の国家による継続した核兵器保有と複雑に関連している。拡散が管理されている世界環境は、軍縮の過程と最終的な廃絶への動きを促進するであろうし、その逆もありうる。廃絶過程での如何なる新しい核保有国の出現も、核兵器廃止の過程を深刻に脅かしかねない。民間ならびに軍事的核活動に対する効果的な非拡散を保証し、非拡散の義務を全世界が受け入れるよう努力する行動が必要である。

核兵器のない世界実現の達成と維持には効果的な検証が欠かせない。各国が核兵器廃絶に同意する前に、検証の取り決めによって密かに兵器、兵器部品、兵器生産手段、あるいは未申告の核物質を保有あるいは入手して、軍縮の過程を欺瞞しようとする如何なる企ても直ちに探知できるという高度の信頼性が求められる。核兵器廃絶後の世界で安全保障を維持するため、各国の核活動の継続した平和的、非爆発利用に対しては、検証システムが高度の保証を与えるべきである。検証システムから得られる保証のレベルで充分かどうかについては、政治的判断が必要であろう。完全に確実な検証システムがないので、現存の全ての兵器管理や軍縮の協定には、こうした性格の政治的判断が求められてきた。

核兵器のない世界実現のために核拡散防止条約で重要となる点は、場所が公表されていてもいなくても、未公表の核活動が探知出来る極めて高度に開発された能力であろう。核兵器保有国、非公表保有国および保有瀬戸際国における核活動に対する保護の段階的延長は、全ての国で保護政策が普遍的に適用されるまで必要であろう。核弾頭が取り外されたり、破壊されていて、その核物質は兵器に再使用することが不可能であるという、最大限の信頼性を持たせるための検証システムが必要である。

核兵器を廃絶しようとする政治的決意には、効果的な検証を含めて核軍縮のために必要な資源を喜んで提供しようとする意欲が伴わなければならない。各国は、違反が探知されれば直ちに行動が起こされることを信頼すべきである。こうした意味で、安全保障理事会は、与えられた特定の指令に基づき、国連憲章に則って、どのように討議して行くかを引き続き考慮しなければならない。これによって、憲章にもられた集団安全保障が如何にこの分野で効果があるかを実証出来るに違いない。

米ロ戦略兵器削条約(START)や核に対する信頼醸成措置は、全世界的な核兵器削減交渉を受け入れる、国際的な環境を作り上げるべきである。アメリカとロシアは、核軍縮の過程にイギリス、フランス、中国を参加させるプロセスを開始出来るであろう。その先で早期に取るべき段階は、アメリカとロシアが、核保有国と戦略兵器削減条約の検証や兵器削減、破壊した兵器からの核物質検証と管理などに関する情報や知識を分かち合うことによって、削減検証のための基盤を整えてやることであろう。核に関する信頼醸成でアメリカとロシアの経験は、他の核保有国やそれらの国が関係して促進された新しい措置にも波及させ得るであろう。

将来の環境
中心的な軍縮の過程と同時に、核軍縮と拡散防止に向っての環境構築のために、全ての国、特に核保有国によって支援された活動が必要になってくるであろう。

核兵器絶滅を追及するためには、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABMT)の正当性を、全面的に擁護することが極めて重要になるであろう。

核兵器のない地帯は、核兵器のない世界を有効に推進、支持出来る構造の一部である。核兵器のない地帯が、夫々の地域の安全保障に関する懸念に対応出来るような、特定の機構を備えて全世界に広がれば、核兵器のない世界へ移行するための段階的な体系化が可能になる。

国家的行動のレベルにおいて、各国は、様々な条約の下で、夫々の国の規制や管理の下に置かれていて高度の慎重さが要求される核物質、装置、技術などを、これらを誤用する恐れのあるものの手に渡さないことを保証する基本的な義務を負っている。

キャンベラ委員会は、核兵器の威嚇あるいは使用に関する法的正当性についての勧告的意見を求めた国連総会の要請に対する、1996年7月の国際司法裁判所の回答に満足して注目した。厳格で効果的な国際管理の下に、あらゆる面での核軍縮を誠実に求め、その交渉を終結に導く義務があるとした裁判所の見解は、正に委員会が実施を望んでいる義務である。

委員会は、核兵器廃絶の精密な時間枠を設定することの利点を慎重に考慮したが、敢てそれを行わなかった。しかしながら、このことは委員会が、弾頭解体施設数が限られているといった、現状の制限からくる期限の延長を認めていることを意味するものではない。こうした制限は、政治的決定や解体促進のために必要な買源の配分によって解決されるであろう。さらに、その他の制限要因は、廃絶を達成する最終段階で必要となる検証制度に必要な信頼性の醸性であるかも知れない。こうした関連から、キャンベラ委員会は、出来る限り早急に、最終的廃絶という究極の目的達成に向かって、このプロセスを突進させる目標と指針で合意を見ることが、根本的に重要であると現在も確信している。

以上

資料に戻る