出版物原水禁ニュース
2002.12号 

世界の加圧水型炉で共通のトラブル発生
関西電力、九州電力などトラブル隠しの疑惑

圧力容器の上蓋でひび割れ

世界の加圧水型炉で共通のトラブルが

 沸騰水型原発で多発しているシュラウドのひび割れと同じように、世界の加圧水型原子炉で、圧力容器上蓋のひび割れが相次いでいる。
 しかもそれは、かって加圧水型原発の蒸気発生器細管ひび割れが、インコネル(ニッケル合金)600で多発したように、圧力容器上蓋を貫通する制御棒駆動軸の管台にインコネル600が使われている原子炉で多発している。圧力容器の上蓋は直径約4メートル、厚さ約20センチで、全体は炭素鋼だが、制御棒を通すため、インコネルの管台が溶接されている。そこがひび割れるのだ。このため世界でインコネル600からインコネル690の管台を通した上蓋に交換されている。
 1991年9月、まずフランスのビジェイ原発3号機の管台で損傷が発見された。圧力容器に耐圧試験をした際、上蓋内側の管台の溶接部の亀裂から一時冷却水が、表側に漏れだしたのである。
 その後フランス原子力庁が各原発で上蓋貫通部の検査を実施したところ、93年8月までに29機中19機の原発でひび割れが発見された。同じひび割れは、スウェーデン、スイス等の他の原発でも見つかった。
 アメリカでも2001年以降、加圧水型原子炉69機のうち33機で検査が実施され、うち13機でひび割れが見つかったが、うち4機では円周方向のひび割れ、9機で一次冷却水の漏れが発見されている。しかしこれらの検査の多くは目視検査で、超音波検査はわずかであった。
 ところが今年2月にデービス=ベッセ原発(オハイオ州、91.5万キロワット)で上蓋貫通部の管台3本に亀裂が発見された。うち1本の周辺では、深さ15センチ、幅約10〜12.5センチ、長さ17.8センチの空洞部が圧力容器の内部に生じていたことが明らかとなった。もっとも腐食している部分では、圧力容器内側にある厚さ9.5ミリのステンレスの内張が露出している状態だった。NRC(米原子力規制委員会)は「冷却剤喪失事故(LOCA)の可能性があった」と報告している。まさにステンレス1枚でかろうじて大事故を防いでいたという状態であった。

日本の電力各社では自主的に上蓋を交換

 このように欧米で原子炉圧力容器上蓋の制御棒駆動軸を通す管台のひび割れが発見されるなかで、加圧水型原発を運転する関西電力、四国電力、九州電力が上蓋の交換を次々とおこなった。関電は美浜1・2・3号機、大飯1・2号機、高浜1・2号機(95〜01年)、四電は伊方1・2号機(2000〜01年)、九電は玄海原発1・2号機(2001年)について管台をインコネル690の上蓋に交換している。

 もちろん応力腐食割れの生じやすいインコネル600から690に交換されることは、安全上から見て望ましいことである。しかしその場合、フランスやアメリカと同じようなひび割れがなかったのかという問題が浮上している。
 関電は上蓋交換について「現状でも健全性は確保されているが、海外で損傷事例があり、将来の健全性維持のため」と説明してきた。しかしフランス、アメリカとほぼ同じ加圧水型原発を運転し、日本だけ全く損傷がなかったとは信じがたい。健全性が確保されているなら、一つで30億円もする上蓋交換を次々に交換するだろうか。
 そして今ひとつの問題は、同じインコネル600の高浜3・4号機、大飯3・4号機などではひび割れは生じていないのだろうかとの疑問である。
 これについて関電は、交換した上蓋に「問題となる損傷はなかった」という微妙な言い回しつつ、資料の提供を拒否し続けている。また高浜3・4号機、大飯3・4号機については「圧力容器炉頂部の温度を下げて運転しているから問題ない」と答えた。九州電力も他の原発について、温度を下げて対応している。しかしフランスでは炉頂部の温度が低くいなかでひび割れが発生している。温度低下は安全の担保ではないのだ。
 四国電力は交換した上蓋の損傷について調査するとしているが、九州電力は関電と同じく調査を拒否している。しかし川内原発1号機では、96年に制御棒駆動系でひび割れによる冷却水漏れが事故が起こっている。交換した上蓋に損傷がなかったと信用することはできない。

(W)