出版物原水禁ニュース
2002.12号 

核不拡散体制を不安定にする
朝鮮民主主義人民共和国の核開発に反対しよう

北朝鮮の核疑惑が抱える問題

 小泉首相の訪朝によって急進展するかに思われた日朝国交正常化交渉は、拉致問題と新たな核開発疑惑によって膠着状態に陥っている。とりわけ核開発疑惑については、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は“核問題は米朝間の問題”との態度をとっていて、核開発放棄を国交正常化の前提とする日本と根本的な立場の違いを見せている。
 原水禁では1994年に北朝鮮の核開発疑惑が持ち上がったときから、核兵器問題を外交交渉の駆け引きに利用することに危うさを感じ、批判してきた。北朝鮮の態度は核不拡散体制そのものを不安定にしかねない。核不拡散(non proliferation)方式は、一種のモラトリアム方式といってもよく、世界がこれに無力感を感じ始めたら大変である。後はアメリカの武力を背景にした強硬策しかないという状況だけは、なんとしても避けなければならない。それは世界の人々によって築き上げてきた核廃絶運動に強いダメージと無力感を与えるであろう。
 原水禁を含む世界の反核・平和運動の真価が問われるときであるが、まず北朝鮮の核問題について94年の米朝合意までの経過などをまとめてみたい。

北朝鮮の核兵器疑惑の始まり

 北朝鮮最高人民会議は92年4月にIAEA(国際原子力機関)との間でNPT(核不拡散条約)に基づく保証措置(核査察)協定を批准した。申告した核施設は別表の通りであるが、これら原子炉は旧ソ連から供給されたもので、黒鉛減速炉で天然ウランを用いるため、使用済み燃料にはプルトニウムの含有量が多い。
 こうしてIAEAによる核査察が92年5月から93年2月にかけて計6回おこなわれた。このおり北朝鮮は「90年に1回だけ、あくまで『実験的』にプルトニウムの抽出をおこなった」と報告した。
 しかしこのプルトニウムのサンプルと、使用済み燃料からプルトニウムを抽出した残りの廃棄物のサンプルの分析結果が食い違っていたため、IAEAは北朝鮮が複数回のプルトニウム抽出をおこない、申告以上のプルトニウムを保有している疑いを抱いたのである。
 一方すでに92年には、フランスとアメリカの偵察衛星が北朝鮮の寧辺(ヨンピョン)近郊に核物質生産施設の存在を疑う映像を撮影していた。
■IAEAに申告した北朝鮮の核施設

  1. 研究用原子炉(熱出力8000kw)
     60年代初め旧ソ連から導入
  2. 実験用臨界炉(出力不明)
     70年代に旧ソ連から導入と推定
  3. 実験用原子炉(電気出力5000kw)
     旧ソ連から導入した炉をもとに自力で開発し86年から運転
  4. 発電用原子炉(出力5万kw級)
     90年代半ばに完成予定
  5. 発電用原子炉(出力20万kw)
     90年代に完成予定
  6. 発電用原子炉(出力63.5万kw)
    3基を計画中
  7. 放射化学研究所(再処理施設)
  8. 核燃料製造工場
  9. 核燃料貯蔵施設
  10. ウラン鉱山2ヵ所
  11. ウラン鉱石精錬施設2ヵ所

 このためIAEA理事会は寧辺(ヨンピョン)近郊の「核廃棄物処理・貯蔵施設」二ヵ所の「特別査察」を受け入れるようにとの決議を採択した。

北朝鮮、NPT脱退を発表

 これに反発した北朝鮮は決議受け入れ期限(3月25日)前の93年3月12日、NPTからの脱退を表明した。その後、米朝間の実務者会議、高官会議などで北朝鮮はNPT脱退を保留するが、8月のIAEAの査察は北朝鮮の拒否によって核疑惑施設への査察が不可能なまま終わった。
 米朝実務者協議が精力的におこなわれ、94年1月(1)通常査察と南北対話の実施、(2)第3ラウンドの米朝高級会談開催、(3)米韓合同演習「チームスピリット」中止──の「一括同時解決」が合意され、3月3日よりIAEAの査察が始まるが、このときも再処理施設と見られている「放射化学研究所」の査察が妨害されたため、IAEA特別理事会は、問題を国連安保理事会に付託することを決議する。米朝合意も反故となる。
米、北朝鮮攻撃を考える
 94年4月になると、ペリー米国防長官がNBCテレビで、北朝鮮が「1年間に12個以上の核爆弾を製造する計画に着手している」「この計画を凍結させるために経済制裁を含む圧力をかけることも辞さない」と発言。さらにIAEAスポークスマンは「3月の査察でプルトニウム生産に利用できる第2再処理ラインを建設中であることが判明した」と発表し、アメリカ国内では北朝鮮制裁の強硬論が高まっていく。
 クリントン政権も核疑惑が問題となった93年には、かなり本気で北朝鮮への武力攻撃を考えており、北朝鮮に攻撃を仕掛けた場合、日本政府に1000項目以上の協力について打診している。このときのアメリカの打診が現在の有事法制につながっているといえる。

北朝鮮の危ないかけひき

 米朝間で実務者協議が続いた。北朝鮮はアメリカ、韓国が要求している「南北特使交換(実務者会談)」を米朝高官会議の前提条件からはずせば、核査察に応じると提案、韓国は条件を受諾。
 さらに4月20日、北朝鮮はIAEAに書簡を送り、数週間以内に実施予定の実験用原子炉の燃料棒交換に、IAEAの立ち会いを認めると通告。アメリカも4月28日、ニューヨークでの実務者協議で、米朝高官会談第3ラウンド開催に向けて、IAEAの追加査察実現に的をしぼり、南北特使交換の除外と米韓合同演習の中止を提案。
 北朝鮮は外相声明などで、放射化学研究所への追加査察を一部条件付きで認め、実験炉については燃料棒からのサンプル採取は断固拒否しながらも、(1)同燃料棒をIAEAの監視下におく(2)実験炉の核物質の査察方法は現地(寧辺)で協議するなどの代案を提示。
さらに何回かのやりとりの後、5月11日、北朝鮮はIAEAに対して追加査察の受け入れを表明し、IAEAも12日、「北朝鮮が4月20日に予告した実験用原子炉の燃料棒交換作業の先送りを条件に、査察団を派遣する」と回答。
 だが同日、北朝鮮はIAEAに書簡を送り「IAEAの立ち会いなしで5000kw実験用原子炉の燃料交換作業を開始した」と通告。こうしたなかでIAEAの査察チームが北京から平壌に到着する。
 このような駆け引きが延々と続くのである。この時点で問題は、放射化学研究所の査察とともに、実験用原子炉の燃料棒査察にまで広がった。それはこの実験炉燃料棒からプルトニウムが分離されていたからである。
 北朝鮮はきわめて危険な駆け引きをおこなっていたが、6月15日、ついにアメリカは2段階の制裁案を発表するのである。(以下次号につづく)

(W)