出版物原水禁ニュース
2002.12号 

<書評>

「東海村臨界事故 被曝治療83日間の記録」

NHK取材班(岩波書店/1600円)

 本書は、1999年9月30日に起こった茨城県東海村の核燃料加工施設「JCO東海事業所」の臨界被曝事故で、大量の中性子線を浴びて死亡した大内久さんの83日間にも及ぶ闘病の記録です。すでに同タイトルで2001年5月13日に放映されたNHKのドキュメンタリー番組をもとにこの記録がまとめられました。
 放映当時、大内さんの状況が刻々と伝えられ、彼を取り巻く医療スタッフの懸命な治療と苦悩、そして限界が映像を通して伝えられ、強い衝撃を受けました。
 本書は、その映像の舞台を活字に変え、当日伝えられなかった部分も含めて、あらためて83日間の大内さんの闘いと被曝治療の模様をドキュメンタリーとして構成しています。
「放射線がDNAを破壊し、体から内側から溶かしていく怖さを感じました。私は、大内さんが、その怖さを多くの人に伝えてほしいと訴えていると思いました」とあるように、原子力の本質的な恐ろしさをこの記録の中から読み取ることができます。
 一度事故を起こせば、本人も家族にも取り返しのつかない事態を招く原子力の持つ本質的な危険性と、それに対処する術(すべ)は、現代医学の限界をはるかに超えるものだということを訴えています。
「例え、あの事故を教訓に、二度と同じような不幸な事故が起きない安全な日々が訪れたとしても、逝ってしまった人達は、戻って来ることはありません。逝ってしまった人達に“今度”はありません」「また同じような事故は起きるのではないでしょうか。所詮、人間のする事だから…という不信感は消えません」と、大内さんの家族の手紙は胸を打つ。大内さんの家族のきずなの強さ、延命治療におけるスタッフの苦悩と懸命な治療の姿が胸を強く打つだけに、原子力の持つ本質に怒りを覚えてきます。
 事故から3年を経た今日、JCO臨界事故は決して過去のものではないことをあらためて訴えるこの本のご一読をお薦めします。


【出版物紹介】
 「開かれた『パンドラの箱』と核廃絶へのたたかい」