出版物原水禁ニュース
2003.1号 

アメリカの核戦略・1
イラク攻撃に固執するアメリカ

◆アメリカの武力攻撃準備進む

 アメリカは何がなんでもイラクへの軍事攻撃を進めたいようです。イラクの大量破壊兵器開発疑惑に対する国連監視検証委員会(UNMOVIC)と国際原子力機関(IAEA)の査察が11月27日から始まり、12月8日には大量破壊兵器開発計画の申告書もUNMOVICを通じて国連安保理事会に提出されました。
 UNMOVICの査察はイラクによる妨害もなく順調に進んでいて、現時点では大量破壊兵器開発の証拠も出ていません。しかし国連はイラクから受け取った大量破壊兵器開発計画に関する申告書を、真っ先にアメリカに、ついで他の4常任理事国に渡してしまった。これは1万2千ページにものぼる申告書をアメリカが独自に分析するためと、申告書にイラクへの化学兵器と弾道ミサイルについて技術支援国や企業の名前が明記されているため、それの対策と推測されています。
 しかし申告書をまずアメリカに提供したことは、国連が査察の主導権を放棄したと言わざるを得ません。またUNMOVICのブリクス委員長は「微妙な部分は公表しない」と発言していて、アメリカがイラクの化学兵器開発に手を貸した事実が明記されていたとしても、公表されないおそれがあります。
 イラクはイラン・イラク戦争中の1987年4月にイラク北部のクルド人居住地で化学兵器を使用したのを皮切りに、88年2月から9月にかけて、60以上の北イラク(クルド人居住地域)の町や村に対して化学兵器を使用しています。最もよく知られているのは88年3月に北イラクのハラブジャでイペリット(びらん性で通称マスタードガス)、神経ガスのサリン、タブン、VXの混合ガスなどの毒ガスを使用し、住民約5000人を一瞬に殺害した「ハラブジャ事件」です。
 しかし、このときアメリカは、イラン・イラク戦争でイラクを政治・経済・軍事の面で支え続けていました。このため、イラクを声高に非難するアメリカもこの「ハラブジャ事件」にはまったく言及していません。

◆アメリカのエネルギー戦略とイラクの石油

 アメリカを含めて西側諸国、そして旧ソ連もまたイラクが保有する石油にからんで、さまざまな援助を──核施設を含めて──行ってきたのでした。
 現在、イラクの軍事力は湾岸戦争時の半分以下で脅威ではなく、しかも大量破壊兵器の95%は破壊されたともいわれています。それでもアメリカはイラク・フセイン体制を崩壊させたいと考えています。その理由は三つ考えられます。
 第1はアラブ民族主義への恐怖です。サダム・フセインが独裁者であることに変わりはありません。それでも強大な軍事力を誇るアメリカと対抗している姿は、アラブ民族主義に大きな力を与え続けています。それは湾岸諸国の石油利権を手中に収めているアメリカや西側諸国、さらに石油による富を享受している産油国の施政者にとっても脅威です。サウジアラビアはイラクと比較して決して民主主義国家とはいえません。
 第2はイラクの膨大な石油です。ブッシュ政権は2001年5月、「国家エネルギー政策報告書」を発表しましたが、2000年のアメリカの石油消費量の半分は輸入石油で、今後20年間にアメリカの石油消費量が33%増大し、輸入石油の比率も3分の2にまで増加すると予測し、石油とガスの増産、原子力発電の推進を強調しています。
 イラク政府の発表によれば、イラクの確認石油埋蔵量は1,120億バーレル、未確認を含むと2,140億バーレル、サウジアラビアに次ぐ世界第二の埋蔵量です。
 アメリカの軍事評論家マイケル・クレアは、近代史における最大規模の石油略奪となるかもしれない、と述べています(「世界」1月号)。
 第3にイスラエル支援です。これはブッシュ政権内にネオ・コンと呼ばれる新保守主義者が増大していることから取りざたされています。
 広島市立大学のオマール・ファルーク助教授(マレーシア出身)は毎日新聞のインタビューで次のように語っています。
「国家としてのイスラエルの存在をなお認めず、パレスチナ人の解放の闘いをオープンに支援しているフセイン政権を打倒し、イラクに親米政権を樹立することで、イスラエルに対してイラクと同じ立場に立つイランやシリアなど周辺国への無言の圧力にもなる」と。

(W)