出版物原水禁ニュース
2003.1号 

在外被爆者訴訟・大阪高裁でも勝訴判決
在外被爆者に被爆者援護法の適用の道を切り開く

〜大阪高裁・郭貴勲裁判・歴史的勝訴〜

全国被爆二世団体連絡協議会会長 平野 伸人

 大阪高等裁判所は、12月5日在外被爆者裁判において韓国人被爆者・(カク)貴勲(キフン)さんの主張を全面的に認める判決を下しました。2001年6月1日の大阪地裁の判決を踏襲する判決を下したことは当然のこととはいえ、34ヵ国5,000人の在外被爆者に被爆者援護法を適用する道を切り開いた歴史的な判決となりました。今回の大阪高裁の判決は、1945年8月6日、8月9日に広島・長崎で被爆したにもかかわらず半世紀以上にわたって放置され、現在では高齢化して健康面でも生活面でも厳しい状況に置かれている在外被爆者にたいする差別行政を行ってきた国の責任を厳しく断罪するものであり、国はこの判決を厳しく受け止めなければなりません。判決では、被爆者援護法を「社会保障と国家補償双方の性格を併用する特殊な立法であるということ、とりわけ、同法が被爆者が被った特殊の被害にかんがみ、一定の要件を満たせば、「被爆者」の国籍も資力も問うことなく一律に援護を講じるという人道的目的の立法」「被爆者たる地位をいったん適法・有効に取得した者が、日本に居住も現在もしなくなったからといって、属地主義の原則を根拠に、当然にその地位を失うという解釈を採用することはできない。」とし、「被爆者はどこにいても被爆者である。」と明確に断じています。
 昨年6月1日大阪地裁で、更に12月26日にも長崎地裁での李康寧裁判において「在外被爆者にも被爆者援護法が適用されるべき」といった二つの判決が下されました。それにもかかわらず、国は控訴し、高齢化する被爆者を苦しめてきました。
 その一方で、国は「在外被爆者問題に関する検討会」を開催し被爆者健康手帳取得のための支援策を打ち出してきました。しかし、これらの施策は高齢化し居住地での援護を求める在外被爆者の要求にはほど遠いものでした。当然のことながら在外被爆者はこれらの施策の受け入れを留保しています。このような中で、今回の大阪高裁の判決がありました。そして、郭貴勲さんの主張は全面的に認められました。3度も同じ判断が示されたのだから、司法の判断は明らかです。国は率直にこれまでの被爆者差別政策の非を認め、被爆者が「死に絶えるのを待っている」としか思えない現在の方針を変更し、被爆者援護法を在外被爆者にも適用する具体策を検討すべきです。
 在外被爆者の状況は、高齢化し、非常に厳しいものがあります。韓国人被爆者の場合も、毎年100人近くの被爆者が死亡しています。この数は年々多くなっていくでしょう。厚生労働省はこのような被爆者の実態を把握しているのでしょうか。裁判を続けることは、非人道的極まりない処置であり、裁判の結果に関わらず非難されるべきことです。
 来る2月7日の福岡高裁の李康寧裁判判決や3月19日の廣瀬方人裁判判決も原告勝訴が予想されます。どこにいても被爆者は被爆者であるという判断は定着しました。この当たり前のことが当たり前として認められ、在外被爆者が日本にいる被爆者と同様の援護が受けられる日が1日でも早く来ることを願ってやみません。


在外被爆者訴訟 政府は控訴断念へ

 日本国外に住む被爆者にも被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給を認めた在外被爆者訴訟の大阪高裁判決について、坂口厚労相は12月18日記者会見し、政府が上告しないことを正式に表明した。
 来年度から被爆者健康手帳を取得して手当の支給認定を受ければ、出国した後も支給される。来日が困難な高齢者などのために海外でも認定や更新の手続きができるよう求める声があるが、それを可能にする法改正は考えていないとした。
 同じ被告の大阪府がすでに上告しない方針を国に伝えており、在外被爆者訴訟で国側の敗訴が初めて確定する。広島、長崎、大阪の各地裁と福岡高裁では、出国によって打ち切られた健康管理手当(月額約3万4千円)の支給などを求める計5件の同様の訴訟が係争中で、政府は各裁判所に手当の支給を認めることを申し立てる。
 今後は、過去に支給認定を受けた人に対しても、請求権の時効(5年)がきていない97年12月以降に出国していればさかのぼって支払う。

 〈02年12月19日付「朝日新聞」より〉