出版物原水禁ニュース
2003.2号 

高速増殖炉「もんじゅ」が抱える問題点

「もんじゅ」控訴審判決を控えて
 17年に及ぶ「もんじゅ」裁判

★控訴審判決がどう出ようと、危険に変わりない

 1月27日、名古屋高裁・金沢支部で「もんじゅ」訴訟控訴審の判決が出ます。このニュースが皆さんの手元に届くときにはすでに結果が分かっているでしょう。私たちの感触は勝訴以外にないということです。しかしこれまでほとんどの原発裁判で、国や電力会社に内容的に完勝しながら敗訴してきた経過を考えると、今回の判決も決して楽観は許しません。原発裁判、戦後補償の裁判に限っていうと、裁判所は司法の独立を失っています。1月27日の判決はどうでしょう。

★「もんじゅ」で炉心が崩壊したらプルトニウムの影響は計り知れない

 しかし裁判所の判決がどうでようと、「もんじゅ」の危険性に変わりはありません。万一、炉心崩壊などの大事故が発生した場合、その危険はチェルノブイリ原発事故の比ではないでしょう。大量に放出されるプルトニウム239は半減期(放射能の力が半分になる時間)2万4千年で、しかもわずか1グラムが環境に放出されるだけで、百万人が肺ガンを発病する危険があるといわれています。
「もんじゅ」の一審裁判で、原子力資料情報室の故高木仁三郎さんは、炉心内のプルトニウムの1%がエアロゾルとなって吹き上げられ、高度200m、風速毎秒3mで環境に流れていった場合、24〜25q以内の住民(敦賀市白木地区、美浜町、三方町)は、実効線量当量(全身に被曝した場合にどういう影響を与えるかということに換算した値)で1シーベルト(100レム)の被曝をし、10人に1人以上がガン死に至る。74qの距離にある京都北部は人が住めなくなる。140qの範囲の大阪市や神戸市では、実効線量当量が100ミリシーベルトを超え、国の防災対策で乳幼児、児童、妊婦だけでなく成人もコンクリートの建家に避難しなければならない。集団被曝線量は200万人シーベルト(2億人レム)におよび、放射線によるガン死リスク評価を1万人シーベルト(100万人レム)あたり1000人のガン死とすると、その内部被曝の晩発性効果によって20万人ものガン死をもたらす──と証言しています。
 京大原子炉実験所の故瀬尾健さんは、アメリカのプルトニウムや放射線の影響を研究しているゴフマンの1万人シーベルト(100万人レム)あたり4,000人がガン死するという評価に基づいて、独自の災害評価をしましたが、それによると京都、大阪など人口が密集する関西方面に風が吹いていた場合に300万人、岐阜県や静岡方面に風が吹いていた場合は150万人、東京方面に風が吹いていた場合は140万人、福井市、金沢市方面に風が吹いていた場合は80万人が内部被曝によってガン死するという計算をしています。

★ナトリウム漏れが分かっていたら設置許可はおろさなかった

 前号で、高速増殖炉で冷却材にナトリウムを使うことの危険を述べました。1995年12月8日、「もんじゅ」はナトリウム漏れ火災事故を起こし、3トンものナトリウムが漏れ、床に貼ってあるスチール製のライナーの一部を溶かしました。もしライナーを貫通していれば、その下のコンクリートとナトリウムが激しく反応して、爆発事故になる恐れもあったのです。動力炉・核燃料開発事業団(動燃=現在、核燃サイクル機構)が、その後、事故の再現実験をしましたが、そこでは床ライナーを貫通するという現象が現れたのです。
 事故当時の原子力安全委員会委員長・佐藤一男氏は「もんじゅ」一審裁判で「(床ライナーの貫通は)条件次第で起こりうる。審査当時は問題意識も知見もなかった。今だったら設置許可は下りない」と証言しました。それだけこの火災事故は深刻な内容を含んでいたのです。
 ですから福井地裁の、「動燃が事故後発表した『安全改善』対策が実施されれば安全の確認が可能だから、基本設計は是正する必要はなく、設置許可処分は有効で、違法はない」とする一審判決は大きな間違いを犯しているのです。これも前号に報告しました。

★高速増殖炉の抱えるほかの問題点

 高速増殖炉「もんじゅ」はナトリウムを使うことによるやっかいな問題以外にも、難問を抱えています。

1)核暴走の危険がきわめて高い

 高速増殖炉では、燃料(プルトニウム)の増殖という目的があります。このため軽水炉より約10倍の高密度で炉心にエネルギーを集中させます。
 エネルギーの高い中性子を使って核分裂させるため、炉心のエネルギーがきわめて高く、制御が難しい。ちょっとしたトラブルで核暴走、つまりチェルノブイリ事故と同じような事故になる危険があります。
 燃料棒は高温、高燃焼状態で使うため、曲がることが常識になっています。もし内側に曲がればそれだけで核分裂反応が活発化します。万一、燃料がひっついたり、欠けたり、崩れたりすると、たちまち核暴走事故になります。

2)地震に弱い「もんじゅ」

「もんじゅ」では配管にステンレス鋼を使っていますが、それは高温に強い材質を使わなければならないからです。しかしステンレス鋼は熱を伝えにくいうえに、温度が上がるととてもよく伸びます。このため「もんじゅ」では配管が10ミリと薄く(軽水炉では70ミリ)、曲がりくねった構造になっています。したがって地震などの震動にきわめて弱いという性質を持っているのです。「もんじゅ」の直下には35〜40キロメートルの地震断層が走っていると想定され、その地震の規模はマグニチュード7.3が考えられると、裁判のなかで原告側が明らかにしましたが、安全審査の段階ではではこの断層およびその危険性について、十分に理解されていなかったのです。

3)ほとんど増殖しない

 政府は資源のない国で運転しながらプルトニウムを増殖する高速増殖炉は必要だといいます。しかし「もんじゅ」で増殖の目安となるプルトニウムの倍増時間は90年もかかり、増殖炉の役目は果たさないのです。
次号では二審判決評価について考えます。

(W)