出版物原水禁ニュース
2003.4 

アメリカの核戦略(4)

アメリカの石油戦略と戦費負担の矛盾

◆米国の石油は11年で掘り尽くされる

 このニュースが発行された時点でイラクはどうなっているでしょうか。安保理・中間派6カ国が武装解除履行期限の45日延長案を出し、英国も独自に6条件を決議案に加える提案を出すなど(3月12日)、米英間の亀裂も見えてきました。英国は武力攻撃するためにはなんとしてでも国連安保理の決議が欲しいのです。反戦運動の高まりが英政府を動揺させているのです。
 逆に米国は一日も早く攻撃を行いたい。一日遅れればそれだけ米国内の反戦運動が広がっていくと焦っています。今号では石油埋蔵量の比較から、ブッシュ政権がなぜイラクの石油に固執するのかを見ていきます。
 下の表は石油メジャーBritish Petroleum(英国石油)社の統計資料で、かなり信用できる数字といえます。

国名 2001年末埋蔵量 01年末可採年数

サウジアラビア
イラク
イラン
ベネズエラ
ロシア
アメリカ
イギリス
(×10億バレル)
261.8
112.5
89.7
77.7
48.6
30.4
4.9

85
100〜
67.4
63.5〜
19.1
10.7
5.6

 この表によると米国の石油はあと11年弱で掘り尽くされます。イラクは世界第2の石油埋蔵国で、サウジアラビアが探査され尽くしているに対して、イラクは未探査地域が多く、米国の石油戦略にとっては大きな魅力だということが分かります。

◆イラク攻撃派で占められたブッシュ外交

 また「軍縮問題資料」3月号にチャルマーズ・ジョンソン(日本政策研究所長)の「なぜアメリカはイラク攻撃にこだわるのか」が掲載されていて、ブッシュ政権の外交政策関係を占めている「PNAC」に触れているので紹介します。
「PNAC=新しいアメリカの世紀のためのプロジェクト」は、1991年の湾岸戦争に関わった人たちによって共和党が政権復帰した場合の政策を立案し97年に組織されました。98年1月にクリントン大統領に「サダム・フセイン体制の打倒」を要求する手紙を出しますが、そこには「われわれは、この地域に強力な米軍のプレゼンスを確保すべきであり、(ペルシャ)湾岸におけるわれわれの死活的な利益を守るために武力行使する準備を進め、必要ならばサダムを権力の座から引きずり降ろさねばならない」。この手紙に署名した人たちはドナルド・ラムズフェルド(現国防長官)、ポール・ウォルフヴッツ(現国防副長官)、リチャード・アーミーテージ(現国務副長官)ら7人で、この人たちにディック・チェイニー(現副大統領)らが一緒になってPNACを創設したとあります。
 PNACのメンバーは全員ブッシュ政権の外交政策を担当する部署についています。ですからブッシュ政権は発足当初からイラク攻撃の機会をうかがっていた政権だったのです。9.11事件後、ブッシュの補佐官コンドリー・ライスは国家安全保障会議を招集し、メンバーに「9月11日の衝撃の中で、アメリカのドクトリンと世界のあり方を変えるために『この機会をいかに生かすかについて考えるよう』求めた」といいます。

◆イラク攻撃が“世界大不況”引き金の不安

 しかしイラク攻撃が秒読みの段階に来て、石油の高騰と、ドル安、世界の株安が始まっています。イラクが油田に火をつけた場合、石油不足は深刻になります。米国のイラク攻撃後の戦略もはっきりしていません。中途半端に投げ出すわけにはいきませんが、さりとて戦費負担はいまの米国には大きな負担です。クリントン時代にため込んだ財政黒字はブッシュ政権の2年間で食いつぶし、昨年6月に議会が国債発行上限を5兆9千億ドルから6兆4千億ドルに引き上げましたが、すでに国債発行残高は6兆4千億ドルと上限に達しています。これは米国のGDPに相当する額です。一般にGDPの60%までが健全財政といわれ、90%以上は不健全と見なされます(日本は120%)。国債のさらなる増発には共和党内でも反対が多く、このため連邦政府の公務員の年金基金から借り入れるとしています。
 戦費と戦後復興費で1兆ドルともいわれる費用をどうねん出するのか。湾岸戦争のときにはドイツやサウジアラビア、クウェート、日本などが進んで戦費を負担しました。しかし国連決議なしで攻撃が行なわれた場合、どれだけの国が協力するでしょう。日本は早くからイラクの戦後復興に協力すると言明しています。「ドル神話」が急速に失われようとしている危ういときに、日本は米国と心中するつもりなのでしょうか。