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2003.5 

不正義なアメリカのイラク攻撃を終わらせよう

4月12日・銀座

犠牲者の数は公表されない

 最初から何の正当性もないイラク攻撃でした。この戦争によって何人のイラク人が殺されたのでしょう。被害情報が極端に少ないなかで、わずかに伝えられる肉親を失った人たちの悲しみと怒り、傷ついた子どもの不安と恐怖が私たちの心に突き刺さるのです。
 圧倒的な軍事力を誇る米・英軍は、核兵器以外のありとあらゆる大量破壊兵器を投下し、多数のイラク国民を殺傷しましたが、これら死傷者数はずっと後になってからでないと明らかにならないでしょう。
 9.11事件はもちろん、アルカイダとイラクの関係も明らかにされず、そして生物・化学兵器も発見されない(4.14現在)なかで、ブッシュ政権はいつの間にか、先制攻撃、大量破壊投下・殺りくの理由をイラクの民主化にすり替えてしまいました。
 ブッシュ政権のいう「民主的イラク」国家の建設が、「親米的イラク」国家の建設にあることはいうまでもありません。米国・ネオコンの人々は中東全体の民主化を考えているといわれます。しかし民主化は、その社会の内側から人々自らの手によって行われなければ意味がないでしょう。ベルリンの壁は市民の手によって壊されたのです。
 フセイン体制が崩壊してイラク各地で略奪などが始まったとき、ラムズフェルド国防長官は住民が抑圧されてきた反動と語り、略奪を扇動するような発言をしました。さすがに国際的批判を受けて治安回復に乗り出そうとしていますが、そこには自爆攻撃を恐れる姿と、イラク人の生命・財産など少々どうなってもよいという、アラブ人に対する蔑視感が存在しています。

新しい動乱の始まりか

 イラク戦争の終結は、新たな紛争の始まりです。米国は日本占領時のマッカーサーのような行政官として、ジェイ・ガーナー退役少将を予定していますが、ガーナー退役少将はネオコンに近く、イスラエル寄りの姿勢を隠そうとしていません。
 イラク戦争の前、3月10日に開催された「対イラク戦争と日本──中東研究者が鳴らす警鐘」の集会では、「米国がイラクに仕掛けた戦争は、イラクという枠のなかで済む戦争でなく、中東全域にわたる変化を引き起こしていくことになる」「石油資源をもコントロール下に収めようとする米国の戦争は、ある意味で中東を植民地時代に逆戻りさせる」「対イラク戦争が黙認されてしまえば、今後はイラン、シリア等の、米国もしくはイスラエルにとって「脅威」であるとされた国の体制も順次転覆の対象とされていく危険性が高まる」と指摘しています(世界5月号・栗田禎子)。
 すでに米国はシリアに対する批判を強めています。イラクの米国支配に批判的な勢力・国家を沈黙させるために、シラク攻撃を早める心配もあります。このブッシュ政権の暴挙を止める力は、世界の反戦・平和運動です。米・ピースアクションや世界の平和運動グループは、これまで以上に運動を広げようとしています。
 最後にはアフガンの現状をお知らせしたい。「首都・カブールのバザール(市場)」は賑やかで活気にあふれ、電化製品その他なんでも買うことができる。しかしそれはお金があればの話で、仕事がなく、多くの人が失業している。子どもたちはトイレットペーパーなどを売り、バザールのまわりでは、夫を亡くした女性たちがマイナス何度という凍てつく寒さの中で、早朝から地面に座って物乞いしている」、と「アフガン女性と子どもを支援する会」の川崎啓子さんは報告しています。タリバンがいなくなっても女性や子どもの状況は何も変わっていないのです。


〈ドイツからの報告〉

 福本榮雄(在ベルリン)

 時折小雪の散らつく寒い日にもかかわらず、03年2月15日にベルリンで行われた米英両国のイラク攻撃反対デモには、約50万人が参加した。主催者側は20万人程度の参加を見込んでいただけに、予想を遥かに上回る結果となった。ドイツでの2月15日反戦デモは、平和団体と人権擁護団体、環境団体、労働団体青年部、Attac、政党関連団体(青年部など)がデモの支援主体となって実施された。デモを前にある企業家のイニシアチブで新聞紙上に公開文書を載せて教会と労組、経営者団体にデモへの支援を呼びかけたが、それに対して教会と労組がデモへの支援を約束したことが、反戦デモとしてはこれまでで最大規模となった要因と見られている。デモ当日、ドイツ各地からデモ参加者を運んできた観光バスがデモ会場近くの大通りに所狭しと並ぶ光景は、壮大なものであった。
 イラク戦争に反対するデモはベルリンだけではなく、ドイツ各地で展開されている。ライプツィヒでは旧東独の民主化のきっかけとなった月曜デモが復活し、毎週月曜日の夕方、数万人が反戦デモに参加している。このライプツィヒのデモは各地に拡がり、現在全国80箇所以上で月曜反戦デモが続けられている。その他、毎週金曜日に反戦デモを行っている地区もあり、毎日とはいかないまでも、それに近い状態でドイツのどこかで反戦デモが行われているといっても過言ではない。
 今回の反戦デモでは、NATO軍のユーゴ爆撃やNATO軍コソボ派兵に反対するデモなどに比べると、一般市民の参加が特に目立っている。さらに、子どもから高齢者までと年齢層も広い。そのため、反戦デモには自然と市民が集まる状態が続いている。たとえば、ベルリンの牧師さんがイニシアチブを取った3月15日夜のデモには一般市民約10万人がろうそくや懐中電灯を持って参加、ベルリンの東西に35キロメートルの灯明行列が成立した。学校の授業でイラク戦争をテーマに取り上げているクラスもあり、ベルリンではイラク侵攻が開始された3月20日の11時に小中高生による反戦デモが行われ、約5万人が参加した。
 政界からは、シュレーダー首相が閣僚に反戦デモへの参加を控えるように要請したにもかかわらず、ティールゼ連邦議会(下院)議長、ヴィーツォレク・ツォイル経済共同開発相(いずれも社民党)、キューナスト消費者保護相、トリティン環境相(いずれも緑の党)が2月15日反戦デモに参加した。
 一般市民を反戦デモに駆り立てている要因は何か。欧州大陸は過去に何度となく悲惨な戦争を経験しており、もう戦争はこりごりという思いがあるからだ、と分析する向きもある。また、戦争で一番犠牲になるのは一般市民と子どもたちだとか、今回は親としてわが子に戦争をしなければならない理由を説明できない、ブッシュ大統領のように一般市民を標的とした暴力をテロと定義すれば一体誰が最大のテロリストだ、ブッシュ政権の一国主義的なやり方は容認できない、戦争による暴力はテロを拡大させるだけだ、などという声が聞こえる。
 運動体側で見ると、各団体の連携が目立つ。反戦デモを共同主催したり、他の団体が主催する反戦デモを支援するなど、横のつながりが密になっている。たとえば、2月15日反戦デモでは45団体が支援主体となったが、そのまとめ役となったのは平和団体の上部組織として各団体をネットワーク化している平和共同体(Friedenskooperative)という組織だ。
 今回の反戦運動では、米国製品のボイコットをアピールする団体もあるものの、それはむしろ少数派だ。運動は反米的なものではなく、あくまでブッシュ政権による違法な侵略に反対するものだ、とされる。各団体はバグダッド制圧後も、米英軍の撤退と国連主導による人道支援と戦後復興、国際法違反の追及などを唱えて、反戦運動を継続する意向だ。また、劣化ウラン弾の使用を厳しく批判する団体もある。国際法専門家の一部は、米英軍によるイラク侵攻は国際法に違反していないかどうか、国際司法裁判所に判断を仰ぐ手続きを開始するようドイツ政府に要求している。
 バグダッドが制圧されて、戦後復興がこれからの焦点となる。これまでのところ、ドイツ政府は人道支援ばかりでなく、戦後統治と復興支援も国連主導で行わなければならないとの立場だ。国連主導の場合にそなえてドイツ兵の国連平和維持軍への参加も検討されている。人道支援についても、中立性を確保する意味から、米国防総省のイラク復興支援室(ORHA)が中心となるべきではないとしている。