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2003.5 

ミサイル防衛へ準備進める日本政府・1
〜軍事・偵察衛星の打ち上げ〜

◆米アジア防衛戦略の見直し

 イラク戦の陰に隠れて日本のミサイル防衛システムの準備が着々と進んでいます。これは北朝鮮抑止を目的とするブッシュ政権のアジア戦略見直しに対応するものです。
 米・ラムズフェルド国防長官は、最新兵器の充実による機動力重視の戦略を打ち出していますが、アジアでも日本やグアムの米軍基地で積極的な転換がはかられます。このため陸軍中心の在韓米軍は、現在の約37000人態勢から30000人弱に縮小される一方、日本に対しては2005年以降にイージス艦に迎撃ミサイル搭載を求め、在日米軍と自衛隊の一層の連携をはかるというものです。すでにそのために今年3月下旬の日米安全保障事務協議を出発点に、月一回のハイペースで日米防衛協議が進められる予定です。

◆米、新ミサイル防衛システムの購入を打診

 日本は98年の北朝鮮のテポドン発射を機に、米国と共同でTMD(戦域ミサイル防衛)のうち、イージス艦からミサイルを発射し相手ミサイルを大気圏外で迎撃する海上配備型上層システム(NTWD)の共同技術研究を進めてきました。99年度から5〜6年間で数百億円をかけて研究し、研究成果をふまえて開発、量産配備段階へ移行する予定でした。
 当初は03〜04年には研究を終わらせ、開発移行の是非を判断するとしていましたが、迎撃実験の失敗などから、計画は3年以上も遅れています。また日本政府・防衛庁内にも実際に配備となった場合の費用が膨大なため、配備には消極的な姿勢が強かったのです。
 ブッシュ大統領が登場し、米政府は08年には日米共同研究の迎撃ミサイルの初期配備を実現したいとの構想を日本に伝え、圧力をかけていました。
 しかし今年に入って米政府は、日本に対して米国で独自に開発中のミサイルを購入しないかと打診してきました。このミサイルは直径約34センチで、これは日米共同研究の迎撃ミサイルの直径約53センチよりもスリム化したもので、これは日米共同開発の事実上の白紙化といえます。

◆パトリオット・ミサイル導入

 このような米国の積極的な提案に日本政府はまったく対応できず、結局、当面の策として今夏に配備を予定している地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC2改良型)を配備して日本領空内での迎撃をめざすことにしたと報じられています。しかしパトリオット・ミサイルは湾岸戦争でイラクのスカッドミサイル迎撃用に使われましたが、ほとんど役に立たず、その改良型も今回のイラク戦争で欠陥が明らかになっています。パトリオットの問題点は日本のミサイル防衛の問題点とともに、次号で再度説明します。
 ミサイル防衛には、相手側のミサイル発射の情報が必要不可欠なのです。こうした状況のなかで、日本の偵察衛星2基が打ち上げられました。

◆国会決議違反の偵察衛星打ち上げ

 宇宙開発事業団が3月28日に打ち上げたロケット「H2A」5号機には情報収集衛星2基が搭載されていました。1基は光学衛星で地表を撮影し、1基は合成開口(SAR)衛星で、地表に電波を当て反射波をコンピューターで合成します。衛星の高度は約490キロ、自転する地球に対し縦方向に回ります。光学衛星は地上1メートルの物体を識別し、SARは1〜3メートルを識別するといわれています。しかしこれまで防衛庁が米国の商業衛星・イコノス、クイックバードから購入していた画像に比べると撮影性能はかなり劣ります。また国産衛星といわれていますが、レンズ母体や撮影方向を調整するポインティング機器技術は米国から導入していて、完全に国産とはいえません。
 この衛星は98年に北朝鮮がテポドンを発射した際、「自前の衛星を持つべきだ」との声が国会内で高まったことから始まりました。ですから衛星の目的は、北朝鮮の核関連施設やミサイル発射施設、さらには中国やロシアの軍事施設の情報収集にあることは明らかです。しかし日本は69年に「宇宙開発は平和利用に限定する」との国会決議を行っており、今回の偵察衛星はこの国会決議に抵触しているといえます。
 それでも日本は、今年夏にも同性能の衛星2基を打ち上げる予定で、この4基は「第一世代」と呼ばれ、この4基によって1日に1回、同一地点を観測できることになります。さらに05、06年度に1基ずつ第一世代の予備機が打ち上げられる予定です。
 しかし、この偵察によってミサイル発射が探知できるかというと、それは無理なのです。

 (次号に続く)