出版物原水禁ニュース
2003.6号 

イラク石油の米英管理を許してはならない

「イラク支援基金」管理という名の資源略奪

▽米軍が手を貸した略奪

 イラク戦争に際して、住民が核関連施設に略奪に入って放射能に汚染されたというニュースは、私たちの心を痛めます。イラク南部のツワイサの原子力施設は、81年にイスラエル軍によって原子炉が破壊され、91年の湾岸戦争でも米軍に空爆されています。そして今回は空爆されていないものの、周辺住民が原子力施設に侵入、貯蔵庫から精製されたウラン(イエローケーキ)を略奪しました。中身のウランは施設内や居住地に捨ててしまい、ドラム缶を飲料水用に使っていました。施設の技術者が放射線検知器で住民や家畜を測定したらメーターが振り切れたとのことです。略奪された施設は7ヵ所にも及んでいるとワシントン・ポストは伝えています。想像以上のものですが、この略奪に米軍が手を貸したり(米軍兵士や海外メディアスタッフも略奪していたが)、そそのかしたりしたことが、アルジャジーラTVや各国の新聞(米や日本を除く)特派員によって明らかにされています。
 ニュースは、イラク人は略奪する人々とそれを見ている人々に分かれていましたが、見ていた人々の目には「恥の涙」があふれていたと伝えています(スウェーデン、ダゲン・ニエター紙)。
 そしていま、無政府状態になった各地で不発弾による被害や銃撃によって多くの住民が被害にあっています。「バグダッドにある脳神経外科病院には毎日、米軍のクラスター(集束)爆弾の不発弾を拾って負傷した子どもや、強盗・銃撃事件の被害者ら10〜15人の重傷者が運ばれる」「バクダッドでは毎日100人以上が死傷している。原因は戦争で米、イラク両軍が残した不発弾や兵器類だ。」(5.10共同)。また薬も救急車も極端に不足していると伝えています。

▽戦後復興に何の計画もないままに攻撃

 米国にはイラク攻撃後の具体的な復興計画など何もないまま、イラク攻撃を急いだのです。その結果が、現在の無政府状態を招いているのです。
 イラクでは国連の制裁によって医薬品などの不足はきわめて深刻なものでした。子どもたちを救うためにユニセフなどの国連機関やNGOがイラク国民を助けていました。こうした人道支援のさまざまなネットワークは略奪や混乱のなかで大きな打撃を受けています。ブッシュ大統領の勝利宣言にもかかわらず、イラク戦争は終っていないのです。
▽イラク制裁解除決議案の不当性
 現在、米、英、スペインは国連安保理に「イラク制裁解除決議案」を提案していますが、それは復興支援のために「イラク支援基金」を創設し、イラク政府が適正に樹立されるまでの間、石油、天然ガス輸出の売り上げは支援基金に入れる。支援基金の管理は米英の監督下に置かれる。国連は米英と協力して人道支援活動を調整する、という内容です。
 この決議は、米英のイラク攻撃を正当化するだけでなく、国連の権威を徹底的に否定するものといえます。しかし、イラク復興には国連が決定的な役割を果たす必要があります。米、英、スペインのイラク制裁解除決議はイラクの石油資源を自分たちの都合の良いように管理する案でしかありません。それは米英によるイラクの石油の略奪といえるでしょう。
 この決議案に対して仏、ロシアは強く反発していますが、もともとサダム・フセインから大きな石油権益を受けていた(経済制裁のなかで権益は凍結)仏、ロシアは一定の石油権益と引き替えに、結局は妥協せざるを得ないでしょう。

▽イラク国民自らが時間をかけて新しい秩序を

 イラクの復興、秩序回復はイラク国民自らが行う以外にないのです。いまイラクで秩序回復にもっとも大きな影響力を持っているのはイスラム教です。バクダッドのシーア派のモスク・カズミヤ廟とスンニ派のモスク・アザミヤ廟には「シーア派もスンニ派もない、イスラムは一つだ」と書かれた横断幕が掲げられていて、市内の各地に「イスラム教徒は一つ」のスローガンが多く見られるといいます。そしてそれぞれのモスクにはシーア、スンニ両派の信徒が礼拝に集まっていると伝えられています。
 イラク国民自らが時間をかけて、サダムがいなくなった後の、新しい秩序を作り上げることに私たちは期待します。国民の教育水準は高く、それは可能だと考えます。私たちも米英軍の一日も早い撤退を求めましょう。私たちの運動はまだまだ続くのです。

(W)