出版物原水禁ニュース
2003.6号 

アメリカの核戦略を考える
新たな核兵器の研究・開発進めるブッシュ政権の危険

核実験再開も視野/14年ぶりプルトニウムピット製造/新型核の研究

■ロスアラモス研究所がピット製造

 米国のロスアラモス国立研究所は、今年4月22日に、96年から製造・テストを行ってきたプルトニウムピット──核爆弾の爆発を引き起こす中枢部分(核の引き金)──の第1号がようやく完成したと発表しました。このプルトニウムピットは89年にニューメキシコ州のロッキー・フラッツ核兵器工場(現在は閉鎖)が、環境保護法違反で米連邦捜査局(FBI)の立ち入り調査を受けて以来、製造が中止されていたため、14年ぶりの製造であり、またロスアラモス研究所としては、最初のピット製造となります。
 米国は今日までに約5000個のピットをテキサス州の核兵器組み立て・解体施設に備蓄していますが、ロスアラモス研究所は今後4年間に6個のピットを製造し、その後は年間10個にまで製造を増やし、新しいピット製造施設「モダン・ピット・ファシリティー」が稼働を始める2018年には年間生産数を500個まで増やす計画とのことです。
 このロスアラモス研究所が製造したプルトニウムピットは、米原潜のトライデントミサイルの「W−88型」の核弾頭用に設計され、費用はこれに3億5000万ドルを要し、さらに今後4年間で12億ドルが必要といいます。

■小型核兵器研究・開発に着手

 米上院軍事委員会は、5月9日、ブッシュ政権が求めていた爆発力5キロトン以下の小型核兵器の研究・開発を禁じたファース・スプラット条項の廃止、さらに特殊貫通弾(バンカーバスター)用に従来の核爆弾を一層強力にする新型核兵器「強力地中貫通型核」の研究予算、核実験の準備期間短縮に必要な費用などを盛り込んだ2004会計年度(04年10月〜05年9月)国防権限法案(国防予算案)を賛成多数で可決しました。
 米・ブッシュ政権は今年2月に総額3799億ドル(約45兆6000億円、対前年度比4.2%増)もの国防予算案を発表しました。同時に09年度までの6カ年計画も発表。毎年約200億ドルずつ増額し、09年度には国防予算案は4836億ドルにもなるという大軍拡案を示しました。
 ミサイル防衛に関しては04年にアラスカ州フォートグリーリーの発射基地に10基の迎撃ミサイルを配備する費用などを含めて前年度比19.7%増(15億ドル増)の91億ドルを始め多くの大型プロジェクトが控えています(詳細はあらためて紹介します)。
 この予算案に94会計年度で5キロトン以下の小型核兵器の開発を禁じた条項の廃止、バンカーバスター(地中貫通爆弾)用の新型核爆弾の研究、核実験再開の準備期間をこれまでの2〜3年から、1年半に短縮する予算などが含まれていたのです。
 ただ小型核兵器の研究、核実験再開の短縮などに民主党が強く反対していて、上院本会議で採択されるかどうかは現在はまだはっきりしていません。

■バンカーバスター用の新型核の開発

しかしブッシュ政権は、たとえ民主党の反対で5キロトン以下の核兵器の研究が否決されても、法律上の縛りがない5キロトン以上の新型核の研究に着手する予定です。04年度から年間1500万ドルで3年間の研究を見込んでいます。計画では地下300メートルまでの破壊を目的としていて、すでにロスアラモス研究所などが研究に着手することを明らかにしています。既存の核弾頭B61、B83を改良する研究が進められるということです。

■核実験再開はブッシュ再選後?

 ブッシュ政権は登場以来、CTBT(包括的核実験禁止条約)反対の姿勢をとり続けてきましたが、いよいよ実験再開を視野に入れ始めました。
 実験の準備期間2〜3年は、クリントン大統領が5キロトン以下の核兵器研究の禁止とともに、いつでも核実験が再開できるようにと定めたものです。短縮の理由を国防総省は、貯蔵されている核兵器の安全管理と核技術者のレベル向上においていて、約2500万ドルを要求しています。
 「実験再開は現時点では考えていない」と米エネルギー省は語っていますが、米政府は今年8月に「核兵器管理会議」を開いて小型核の研究や核実験再開を討議しようとしています。ピース・アクションなど米国の平和団体は、来年秋の大統領選挙でブッシュが再選を果たし、すぐに実験を再開するのではないかと警戒を強めていますが、当面は上院本会議に焦点を当て、軍事予算案反対運動を進めていくと伝えてきています。

(W)