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2003.6号 

ミサイル防衛へ準備進む日本・2

憲法問題は後回しのミサイル防衛(MD)

◆国民に偵察衛星必要の説明なく

 前号で日本が2基の偵察衛星(光学衛星と合成開口衛星)を打ち上げたと書きました。その続きから。
 光学衛星は地表を撮影し、地上1メートルの物体識別が可能ですが、夜間や雲があれば撮影はできません。合成開口(SAR)衛星は、地表に電波を当て反射波をコンピューター合成するので時間や天候に左右されません。
 日本政府の偵察衛星打ち上げ計画は、98年の北朝鮮のテポドン発射から始まりましたが、この衛星によって北朝鮮のミサイル情報が収集できるかというと、それはほとんど無理といえます。政府はこの衛星打ち上げに際して衛星の性能や軌道を徹底して隠しましたが、すでに世界のアマチュア天文家によって毎晩観測され、軌道も計算されてインターネットで公開されています。それによると1日2回、同一コースを同じ時間帯に通過していることが明らかになっています。つまりこの時間帯以外の情報は収集できないのです。
 それでも日本は、今年夏にさらに2基の衛星を打ち上げ、05年、06年に1基ずつの予備衛星を打ち上げる予定です。衛星を多く打ち上げることで、情報収集を密にしようというのです。
 衛星の寿命は5年といわれ、08年には次世代衛星2基を打ち上げるとしています。次世代光学衛星は50センチの物体識別能力をめざしますが、SARは予算の都合で性能向上は見込まれていません。
 打ち上げ費用は1基約100億円ですが、このプロジェクトのためにすでに2500億円をかけています。偵察衛星を保有している国は米国、ロシア、仏、イスラエルだけで、膨大な費用をかけて日本が偵察衛星保有に踏み切る必要があるのかについての議論はほとんどされていません。

◆日米ミサイル防衛協力は憲法に違反する

 防衛庁はこれまでミサイル防衛(MD)について米国と共同研究はするが、開発・配備については慎重な姿勢をとってきました。99年秋に、「海上配備型上層システム」(大気圏外のミサイル迎撃システム)の第2段階の日米共同研究が始まりましたが、このとき政府は開発・配備については「技術的な可能性や将来の日本の防衛のあり方などを十分に検討した上で行う」との官房長官談話を発表し、さらに01年6月22日に開かれた日米防衛首脳会議を前に、米国とのミサイル防衛協力について、「集団的自衛権行使に抵触する協力はできない」との政府見解をまとめています。
 こうした日本政府の姿勢に対して、べーカー駐日大使は「研究が進めば日本は憲法9条を再解釈する必要が迫られる」と述べています(01年7月18日)。

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MDの概念図
─外務省webサイト上の外交青書2002年版より


◆イージス艦発射型システムが急浮上

 ところが米国は、これまで共同研究してきたミサイル防衛システム(第2段階)は時間がかかりすぎるとの理由で、これまで独自で開発してきた第1段階のイージス艦発射型システムの配備を、来年度より独自に進めることを決め、日本に共同運行を求めてきました。
 米国のクラウチ国防次官補は「MDは決して安上がりのシステムではないが、同盟国が一緒にやれば単位当たりのコストは下がる」と石破防衛庁長官にMD参加を促した(4.19福井新聞)と伝えられていますが、日本政府は先に述べた憲法上の問題、予算の問題などから態度を決めていません。第一、これまで共同研究してきたものをどうするのかの問題もあります。
 予算についても、日本は将来のミサイル防衛を考えてミサイル護衛艦の建造を進めてきましたが、イージス艦発射型となると、イージス艦の改修が必要で、その改修費用だけで1000億円必要といわれます。
 日本はとりあえず陸上配備のパトリオット・ミサイル(PAC−3)を考えているようですが、これは下層(低高度)システムで、イージス艦発射型(高高度・大気圏外=上層システム)とは全く異なります。
 そして米朝中三国協議で北朝鮮が核兵器保有を明言したこと、また米国からの強い働きかけなどによって、防衛庁は憲法問題を後回しにしたまま、イージス艦発射型MD導入も視野に、「防衛計画の大綱」を改定し、MDの条項を盛り込む検討に入りました(続く)。

(W)