出版物原水禁ニュース
2003.8号 

北朝鮮との対話路線の重要性
軽水炉建設中断
国連安保理決議が大きな分岐点

◆米中朝三カ国協議以降、事態は悪化している

 4月の米中朝三カ国協議は、本来は膠着した事態を打開するはずでした。しかしそれ以降の状況はむしろ北朝鮮を追いつめる方向へ加速しています。
 米中朝三カ国協議は今年4月23日〜25日に北京で開催されましたが、このとき北朝鮮は使用済み核燃料再処理の完了から、さらに核兵器の保有を宣言し、核実験の可能性も示唆したと伝えられています。その上で

──という提案を行いました。
 しかし、北朝鮮の発言にもかかわらず、使用済み核燃料8,000本の本格的な再処理はまだ行われていないと認識されていました。核爆弾については1、2個分のプルトニウム保有から、2個ほどの核爆弾は持っているのではないかとの推測に変わってきました。さらにその核爆弾をノドンに積載する小型化に成功しているかとなると、賛否は分かれます。北朝鮮にとっても数少ない核爆弾のテストはリスクが大きいのです。

◆使用済み核燃料の再処理がレッドライン

 結局、封印されてきた8,000本の使用済み核燃料の再処理を本格的に行うかどうかが、北朝鮮にとっても、韓日米にとっても大きな意味を持つことになります。核爆弾を2個位保有しているかもしれないというのと、5、6個以上保有するというのとでは、国際社会に与える影響は根本的に異なります。
 そのような状況を招かないために、米国は北朝鮮の孤立化政策を進め、韓国、日本は対話解決を求めているのですが、それは根本的に異なった政策です。
 7月7日に中韓首脳会談が開催され、9日〜12日には南北閣僚級会談が開催されました。日韓が参加する多国間協議問題は前進しませんでしたが、「対話を通じた平和的な解決」という点では二つの会談とも一致しました。しかし南北閣僚級会談の終了した12日(米国は11日)に、米NBCテレビが使用済み核燃料の再処理をしている物証をつかんだ、と報道しました。
 この情報は米政府からのリークといわれていますが、米国は北朝鮮を否応なく追いつめる政策を取っているとしか考えられません。米朝関係は確実に緊張を高めています。
 米国は北朝鮮に対して偵察衛星だけでなく、RC135S電子偵察機を北朝鮮周辺に展開していますが、3月2日には、米偵察機に北朝鮮戦闘機が15メートルまで接近する事態も発生しています。偶発戦争の危険も高まっているといえます。
 国連安保理でも、米国主導によって北朝鮮の核問題を非難し「国際的義務」を果たすよう求める議長声明草案の協議が中国を除いた4常任理事国で行われ、いつでも議長声明が出せる状況だと伝えられています。

◆軽水炉の中断、国連安保理声明の危険

状況の大きな分かれ目は、軽水炉の建設中断と国連安保理決議でしょう。米国は米日韓外務省局長級非公式会議(7月3日)で、軽水炉建設中断を強く求めましたが、韓国、日本が反対し、先送りとなりました。しかし国連安保理議長声明の発表は早まる可能性があります。声明の求めに応じなければ、安保理決議へとエスカレートする危険があります。
 状況は94年当時とかなり似通ってきていますが、姜尚中さんの著書「日朝関係の克服」(集英社新書)に、94年の米軍の北朝鮮攻撃計画の詳細が書かれているので、紹介します。
 米国防総省は寧辺の核施設を爆撃する詳細な緊急作戦計画を実施する段階に突き進もうとしていました。米空軍のハイテク兵器を使用すれば、放射能を遠くまで拡散させずに、核施設を短期間で効率よく破壊できるという想定でした。しかし限定された標的に対する「外科手術的な」攻撃は、北朝鮮の報復攻撃を招き、全面戦争に発展。死者100万人以上(内米国人10万人)、戦争当事国や近隣諸国を含めて、損害総額は1兆ドル、米国が負担する戦費は1000億ドルを超えると見積もられていました(米軍派兵の三つの選択肢も想定されていました)。
 北朝鮮はイラクの例を大きな教訓として、攻撃されるかもしれない事態を座して待つとは考えられません。北朝鮮が軍事暴発に踏み切る危険も大きいのです。日韓の参加する多国間協議は、事態解決の大きな鍵になると思われますが、それだけが解決への道とはいえません。とにかく対話を継続すること、その国の将来はその国の国民に決めさせる以外にないことは、イラク攻撃の教訓でもあります。
 私たちも北朝鮮核問題の解決は、対話以外に道はないことを訴えていかなければなりません。