出版物原水禁ニュース
2003.8号 

キエフ国際会議・報告
「チェルノブイリの子どもたち」

チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西
振津 かつみ

☆第4回国際会議として−「深刻な被害が続く」

 6月2〜6日、ウクライナ・キエフで国際会議「チェルノブイリの子どもたち―健康影響と精神社会的リハビリテーション」が開催され、当会からも代表が参加しました。この会議は2年前の「チェルノブイリ事故の健康影響―15年間のフォローアップ研究の結果」 に引き続いて第4回国際会議として行われたものです。
 会議のプログラムの冒頭には、昨年ウクライナを訪れた国連事務総長コフィ・アナン氏の次のような発言が引用されました。「何百万人もの人々がこの惨事による直接的な影響を受け続けている。…事故とその結果によって今なおもたらされている問題の多くを認識している者がわずかしかいないことがとくに気がかりだ。深刻な被害が続いている。少なくとも300万人の子供たちが身体的治療を必要としている。広大な森や農地が汚染されたまま。いくつかの地域では未だに通常レベルをはるかに上回る量の放射能が残っている。人々は今も大きな不安を抱いて暮らし、子供を持つという人生のなかでも最も幸せなはずのことが、新たな不安の種になるのではないかと感じている。この惨事は地球的な問題なのだ。…」これらの言葉には、会議の主催団体であり、チェルノブイリ事故による健康被害を現地の医師の立場から明らかにしようと努力してきたウクライナの「チェルノブイリの医師」団の思いもこめられているように感じられます。
 共催団体として国連機関の立場から被災者への国際支援を呼びかけている国連人道問題事務局(OCHA)、世界保健機構(WHO)、国連子ども基金(UNICEF)、ウクライナ国連代表事務局、さらには国際原子力機関(IAEA)、国際放射線防護委員会(ICRP)、国連科学委員会(UNSCEAR)など「原子力の平和利用」推進の立場のグループ、また、ウクライナ保健省などの政府機関、キエフ市当局なども名を連ねました。
 これらの諸グループ間では、チェルノブイリの被害評価について必ずしも意見が一致していないにもかかわらず共催を重ねてきたのは、被災国ウクライナなどで、経済困難のために被害調査・治療・被災地復興などの課題を遂行してゆくための資金が決定的に不足しているという現実が背景のひとつにあると思います。

☆被害者を抱える国々からの参加

 会議に集まったのは医師・心理カウンセラー、研究者、被災者や支援団体の代表、国際機関の代表など60〜100名で、多くは開催国ウクライナからの参加者でした。ベラルーシやロシアからの参加者が少なかったのはキエフへの旅費や滞在費が捻出できなかったことも大きな理由のようです。プログラムに掲載されていた報告予定者も、ポスター発表も含めるとその半数くらいは参加していない状況でした。被災三国以外では、キルギス、グルジアなど、旧ソ連の共和国で、事故処理作業に加わった元兵士を抱える国々や、移民として元事故処理作業者が多数いるイスラエルなどからの医師や被災者団体の代表、そしてアメリカ、キューバ、イタリア、ドイツ、日本などの医師やチェルノブイリ支援団体も参加。また、日本からはJCO臨界事故のあった茨城県の職員1名が「事故後のメンタルケアの問題をチェルノブイリから学ぶため」とかいうことで参加。テーマが特に「子供たちの健康問題」に限定されていたこともあってか(あるいは戦争やテロなど、世界では他の問題がクローズアップされているのでチェルノブイリの問題が後回しになっているのか…?)2年前の会議よりは規模が小さくなり、討論もやや低調な感じがしました。欧州のNGOの参加者はほとんどいなかったようです。

☆「精神社会的」影響だけけでない様々な健康被害

 会議では、子供たちの健康に放射能がどのような影響を与えて続けているかについても語られましたが、全体として「精神社会的リハビリ」という視点に重点が置かれた枠組みが気になりました。
 甲状腺疾患についてはガンだけでなく自己免疫疾患の増加も指摘されました。また事故処理作業者の子供たちの健康調査についての報告やベラルーシの汚染地でのダウン症の増加傾向についての報告(次世代への影響を示唆するもの)なども興味深いものでした。白血病については、ベラルーシ全土では減少傾向であるにもかかわらず、汚染地ゴメリで増加傾向にあるという報告(マルコ氏)がされましたが、ウクライナ側からは「白血病は増加していない」との報告でした。被災地で活躍するカウンセラーたちからは、「チェルノブイリの被害者」という事実がストレスとなって子供たちの精神状態に及ぼしている影響、生活難に伴う家庭環境の悪化とあいまって問題が深刻化している実情などが語られました(続く)。

〈ふりつかつみ:医師〉
■この報告の続きは10月号に掲載します。