出版物原水禁ニュース
2003.9号 

〈インタビュー〉
ジョージ・ギャロウェイさん(英国労働党国会議員)に聞く
インタビュアー:福山真劫・原水禁事務局長

■平和運動の新しい出発、200万人集会

福山: 初めての来日、初めての原水禁世界大会への参加ですが、感想からお話ください。
ギャロウェイ: 素晴らしい構成で組織された世界大会で大勢の人が集まり感動しました。女性や若者の参加が多く、私も大変勇気づけられました。これが日本の平和運動の特徴だとしたら未来は明るいと感じました。
 日本の平和運動と英国の平和運動との緊密な交流の新しい出発になればいいと思います。
福山: 今年の開会総会には昨年よりも1000人も多い4500人が参加しました。イラク戦争だとか、有事法制制定などで日本国民に危機意識があって増えたんだと思います。これまでもCND(英国核廃絶運動)の代表が原水禁大会に参加されてますし、今後も日本、英国の運動交流を強めていきたいですね。
ところで今年の2月15日に200万人も集まったと聞きますが、その原動力はなんでしょう、
ギャロウェイ: これまで3回の大デモンストレーションを持ちましたが、集会は開催するたびに大きくなっていきました。
 こんなに集まったのは第1にイラク攻撃に果たす英国の役割に我慢できなかったこと。第2に英国は犬の尻尾ではない(注: 英国で犬の頭は馬鹿を意味する)。だから愛国者の行動だったということ。第3に連合(戦争反対連合)を組織していく上で戦略的にうまくいったことです。連合の指導的な人たちはさまざまな団体を代表しています。ムスリム(注: イスラム教徒、英国には約200万人いる)のグループや毛沢東主義者、トロッキスト、共産主義者、自由主義者、社会民主主義者、緑の党などさまざまなグループが参加していますが、これらグループのセクト性排除に努力しました。私たちのつながりを分断するようなこと、流れを止めるようなことはしないということで、自分たちの考え、立場は脇において、目的で一致しようということでうまくいきました。
 また愛国主義を呼び起こすやり方をとりました。たとえば米国の言いなりにならない、ということなど。このようなやり方が左翼以外の人たちを結集することにつながりました。そのために新しい言い回し、アプローチの仕方をとりました。
 戦争は止められなかったけれど、ブレア政権が次の戦争に協力することは避けられると思うし、多分ブレア首相を辞めさせることもできると思います。これは英国の政治に大きな変化を起こすと考えます。
福山: 米国のAFL−CIO(米国労働総同盟産別会議)などの労組はイラク戦争が始まるまでは国連を通して解決を図るべきだと主張していましたが、戦争が始まると賛成しました。英国のTUC(イギリス労働組合会議)はどうでしたか。
ギャロウェイ: 英国では連合にほとんどの労働組合が参加していて、最後まで反対を貫きました。600万から700万人が労組に加盟していますが、組合員に直接行動を訴えても、うまくいきません。これは連合の弱点でもあります。ギリシャやイタリアのように労働者がストライキを行うことは英国ではまだ難しい。しかし子どもたちが戦争反対で登校拒否の日を設定し、何千人も参加しましたが、これは新しい試みでした。

福山真劫・原水禁事務局長

■石油・イスラエル・そして再選

福山: 世界中で1千万人を越える人たちが反戦運動に参加し、また国連決議もないなかで、米、英がイラク攻撃に踏み切ったことを、どうお考えですか。
ギャロウェイ: ブレアは米国の決めたことになんでも従うという立場ですが、ブレアの誤算はこんなにも困った状況になるとは思わなかったことです。
 イラクへの攻撃は、ブッシュの側近たちがずっと早くから決めていたことで、それは9・11以前に書かれた文書でもはっきりしています。
 まず第1に石油問題があります。いまクウェート、サウジアラビア、カタール、イラクの4カ国に米軍が駐留していますが、これら4カ国だけで550年分の石油があります。英国は7年分、米国は25年分しか石油埋蔵量がないといわれています。これらの石油資源を支配することで競争相手に有利な立場に立てます。
 ですから米国が石油などの天然資源を支配しようとする戦略に、他の国が犠牲になっているといえます。
 第2はイスラエルです。ネオコンやキリスト教原理主義の人々がシオニズムを支持し、アラブの最も重要な国々を破壊しようとしていますが、これはイスラエルにとっての大きな贈り物です。今後、何世代にもわたって、この地域の力関係を変えていくでしょう。
そしてそれはまた、ブッシュ自身のためでもあります。ブッシュは正当に選ばれた大統領ではない。そのため再選の切り札として、イラク攻撃が行われたともいえます。ただブッシュがもう一期、大統領を続けると、2期目の間に、世界すべての国の軍事予算を合わせたものより多い軍事費を必要とします。

■反米の動きに過剰な反応

福山: 米国がイラクに戦争を仕掛けた理由は私も同感です。ただ米国はいまでも勝者で、今後も米国に取って代わる国は出てこないと思います。それなのになぜもっと支配力を強めようとしているのでしょうか。
ギャロウェイ: 米国は反米の風が吹くことを心配しています。権力というのは3つの側面を持っていて、まず権力はイコール軍事力だということです。イラクでは使える軍事力(量)には限界がありますから、もっと強力なものにしたいと考えています。
 次に米国は経済的に強くないということです。いまでも大変な借金国で、中国やEUなどに経済的に脅かされています。さらに米国は文化的な意味でも弱い存在です。すでに米国の覇権に対して世界的なバックラッシュ(反動・反対)が起こっています。一つの例が反グローバリズム運動です。また世界の4分の1はムスリムの人たちで、これらの人たちは米国の文化的支配に反対しています。このような力が結集すれば大きな影響を持ち始めるでしょう。米国は世界に覇権を広げる一方で、このような危惧の念も抱いているのです。だから米国は人為的に経済を活性化させ、市場を作り出すために、戦争を止められないのです。
 日本はイラク復興に協力してどれ位の利益があると思いますか。おそらくゼロに近いと思います。とにかく米国は自分たちのためにだけしか利益を与えないようにすると思う。それは天然資源のコントロールだけでなく、市場のコントロールという意味もあります。
 ただ一番戦略的に重要になっているのは中国です。米国人は21世紀は中国の世紀になるのではないかと心配しています。だから米国はつねに中国を意識しています。

■米国が核で脅すから、核保有に走る

福山: そうですね、米国は軍事力を強化すればするほど財政的な負担も増えて、さらに深刻化していって、結局、米国中心の世界も崩壊する気がしますね。
 ところで北東アジアでも戦争の危険が存在しています。北朝鮮の核兵器問題についてどう考えますか。
ギャロウェイ: 北朝鮮やイランが核兵器を持とうとしている理由は、米国が怖いからです。米国の政策が核保有を進めているのです。自分が危険な存在だと世界に示すことによって、自分を守ろうとしているのです。このため世界で核保有国が広がる危険があります。
 北朝鮮は25階建てのビルの窓から飛び降りるぞと言っているような状態です。丁寧に呼びかけることが必要なのです。パウエルが辞めるという話が出ていますが、彼のような平衡感覚の持ち主が辞めてしまえばブッシュ政権はますます危険な存在になるでしょう。

■9月27日に国際共同行動

福山: 今後の連合の予定と、私たちへの期待をお話しください。
ギャロウェイ: まず日本で自衛隊のイラク派兵に反対し続けてほしい。日本政府は大きな間違いを犯しています。第2に、愛国主義的な運動を広げてほしい。これは自衛隊員の生命の危険を救うことでもあります。そして運動を広げてほしい。仲間でない人たちにも呼びかけて大きな運動を組織してください。
 英国では8月30日に市民による議会をロンドンで開催し、そこでブレア首相を糾弾します。国際的には9月27日に大きなデモを予定しています。スローガンの第1は占領反対です。イラクはイラク人に任せるべきです。第2は、ノーモア・ウォーです。ブッシュ政権の次の攻撃目標はイランだ思います。
福山: 日本でもWORLD PEACE NOWが9月27日に集会を予定しています。私たちもこれに取り組む予定です。これからも連絡を取り合って連帯した行動を作っていきたいと考えます。ありがとうございました。

ジョージ・ギャロウェイ: 英国・労働党下院議員。TVインタビューでブレアとブッシュを狼と呼び、違法な戦争には、兵士は従わなくてよいと語り、労働党から権利停止処分中。今年2月に200万人を集めたストップ・ザ・ウォー・コアリション(連合)の理事