出版物原水禁ニュース
2003.10号 

【書 評】

ビキニ事件の真実

大石又七著 みすず書房刊

 今年も3・1ビキニ・デー集会 に登壇し、貴重な証言をしていただいた第五福竜丸の元乗組員の大石又七さんが、すでに自らもヒバクの病魔に犯されながらも、自分たちに降りかかった核の実相とその真実を追求し、それを若い世代に伝えていこうとする実践が綴られています。ビキニ被災から半世紀を迎えようとするいま、当事者自らがあらためてビキニ事件とは何だったのかを明らかにしようとしたことに大きな意義があります。当事者だからこそ明らかになる「核」が持つ脅威や不当性、差別性などの問題に触れるとき、あらためて私たちに「核」のリアリティを突きつけます。
 なんの変てつもない漁師が、ビキニの水爆実験に巻込まれ、その後の人生を大きく狂わされて、肉体的にも精神的にも傷付き、職も変わり、住み慣れた土地を離れざる得なくなるなど、核が奪ったものは久保山愛吉さんの命だけではありませんでした。200万ドルという政治的な解決金により、事件そのものにフタがされましたが、その後、当時の乗組員の多くが放射能の影響によるガンなどに犯されていました。しかし中には、「差別」を恐れて被爆したことすら語ることなく無念の死を迎える仲間がいるといいます。大石さんは、亡くなった仲間の声を引き受け、平和を求めて、原水禁運動をはじめ各地でビキニの実相を伝えています。
 いまだ事件の全体像が未解明な中で、いまも事件を引きずらざるを得ない人々がおり、決して過去の出来事でないことを本書が示しています。被災50周年を前に、あらためてビキニ事件を知る最良の本です。ぜひご一読を。