出版物原水禁ニュース
2003.11号 

原子力物語  核問題入門第1回
原子・元素、放射能、ウランの話

私たちは核兵器や原子力発電に反対しています。しかしなかなか難しいという声もあります。
何回かに分けて、核兵器や原子力発電、放射能ヒバクについて、分かりやすく解説していきます。
一緒に考えましょう。

■原子(元素)とは

水素原子・同位体 現在、天然には92種類の原子(元素)があり、地球上に存在するあらゆる物質は原子から成り立っています。例えば水は水素原子2個と酸素原子1個でできています。さらに原子は小さな核と、その周囲をまわる電子に囲まれています。核は原子全体の100万分の1の大きさしかありませんが、非常に密な構造をしていて原子の質量の大部分を占めています。核の部分はお互いがしっかりくっつきあった粒子の塊です。
 粒子のいくつかはプラスの電気(正確には電荷)を持つ陽子ですが、陽子の数で、その原子がどの元素であるかが決まります。水素原子は1個の陽子、酸素は8個、ウランは92個の陽子を持っています。それぞれの原子は陽子と同じ数の電子を持っていますが、電子はマイナスの電気(電荷)なので原子自身はプラスでもマイナスでもない中性です。残りの粒子は電気を持たないので中性子と呼ばれます(図・2参照)。

 同じ元素でも陽子数が同じで、中性子の数の異なる場合は、同位体、または核種と呼びます。放射線を出す同位体を放射性同位体とか放射性核種と呼びます。例えば水素原子を例にとると、陽子の数は1つですが、中性子が〇個(水素)、1個(重水素)、2個(三重水素)の3種類があります。

■ウラニウム(ウラン)について知ろう

原子の構造 天然に存在している92種類の原子のうち、原子力爆弾や原子力発電に使われるウランは、天然に存在する原子の中では、もっとも陽子数が多い(もっとも重い)原子です。ウランには陽子92個と中性子143個のウラン235と、陽子92個と中性子146個のウラン238とがあります。
 ウラン235はウラン全体の中でわずか0.7%しかなく残りの99.3 %はウラン238です(このほかにも中性子142個のウラ
ン234がありますが、ウラン全体の中で10万分の6しか存在しないので、普通は問題にしません)。
 ウラン235は1個の中性子を吸収すると核分裂し、ウラン238に中性子をぶつけるとプルトニウム239という人工の原子が生まれます。そしてプルトニウム239も1個の中性子を吸収して核分裂します。
 プルトニウムには232から246までの同位体がありますが、一般にプルトニウムといえば、プルトニウム239のことをいいます。プルトニウム239はウラン238から簡単に作れ、簡単に核分裂し、さらに寿命が長く(半減期※2万4000年)、使用中に減ってしまうことがないからです。(※放射能の力が半分になる期間。原子が100個あるとして、50個になる時間。半減期1年とすると100個が1年後に50個になり、次の1年で25個になる。なおプルトニウムについては後で詳しく書きます。)
 

■核分裂連鎖反応

 1938年、オットー・ハーン、フリッツ・シユトラスマン、リーゼ・マイトナーらによってウラン235が核分裂することが発見され、翌年の1939年にはマリー・キュリー、ジョリオ・キュリーによって、ウラン235が核分裂すると2個〜3個の中性子を出すことが発見されました。
 ウラン235の核分裂によって2個〜3個の中性子が飛び出し、この中性子が別のウラン235を核分裂させ、また新しい中性子が核分裂を起こし、その核分裂はネズミ算式に増えていきます。
このように次々に核分裂を起こすことを連鎖反応といいます。このような核分裂の連鎖反応を起こすことができるのは、自然界にある物質ではウラン235だけです。原子力発電にウランが使われるのはこのためです。
 核分裂の連鎖反応はものすごいスピードですすみます。広島に投下された原子爆弾(64キロのうち1キロ弱のウラン235が核分裂)は、10万分の1秒という時間で爆発しました。
 原子力発電の場合は、ゆっくりと核分裂させます。100万キロワット発電の原子力発電では、1キロのウラン235を8時間かけて核分裂させます。

■核分裂で作られるエネルギーは1000分の1だけ

 残りは危険な放射能物質
 ウランが核分裂すると、あとにできる物質(核分裂生成物=放射性核種・死の灰)は、最初のウランより少しだけ軽くなります。この軽くなった分がエネルギーとして放出されるのです。
 1グラムのウラン235が核分裂すると、約1000分の1グラムだけ軽くなります。つまり1000分の1グラムの質量がエネルギーに変わるのですが、これは約20億カロリーに相当します。
 同じ重さの石油や石炭と比較した場合、ウランは石油の230万倍、石炭の300万倍のエネルギーを出すのです。
 しかし1000分の1だけエネルギーを放出するウラン235の残りは、すべて放射性核種になります。ここに核兵器、原子力発電の残虐生、危険性があるのです。

■不安定な核種が崩壊しながら放射線を出す

放射線 ウラン235が核分裂してできる放射性核種は200種類以上にも及びます。これら放射性核種は寿命(半減期)の短いものや長いものまでいろいろあり、大部分はアルファ線やベータ線、ガンマ線を放出します。
 この放射線に曝されることを被曝(ヒバク)といいます。ヒバクについては別の号で改めて書きますが、なぜ放射性核種が放射線を出すのか、難しくいえば、原子核の陽子と中性子の結合が不安定なために、自己
崩壊しながら安定した核種に変わるためです。
 例えばウラン238は、さまざまな核種に変化しながら最終的に鉛に変わります。ウラン238はまず2個の陽子と2個の中性子を放出し、トリウム234(90個の陽子と144の中性子)に変化します。このトリウム234も不安定で、中性子が陽子に変わり、91個の陽子と143個の中性子を持つプロトアクチウム234に変化する、といった具合にです(次号に変化の図を載せます)。
 核種によって変化する時間は数秒間から、数億年までさまざまです。プロトアクチニウムは1分ほどで半分が変化(半減期1.17分)しますが、ウラン238の半分がトリウム234に変化するには、45億年もかかり、トリウム234の半減期は約24日です。
 核種が変化するたびに、エネルギーが放射線として放出されます。放射線には、アルファ(α)線、ベー(β)線、ガンマ(γ)線などがあり、このほかにも中性子を放出する核種もあります。エックス(X)線も人工的に作り出される放射線の一種です。
 このように不安定な核種が変化し、放射線を出す現象を「放射能」といいます。
 陽子と中性子を持つアルファ線(プラスの電気を持った粒子)は紙1枚で止められます。皮膚の表面も通りません。しかし傷口や、吸い込んだりして体内に入った場合は極めて危険です。ベータ線はマイナスの電気を帯びた電子で、アルファ線より貫通力は強く、組織の中を1〜2センチ通り抜けます。ガンマ線は光の速さと同じスピードで進み、透過力が大きく、厚い鉛やコンクリートも通り抜けます(放射線の危険はヒバクのところで詳しく書きます)。続く

 ★この項は「国連環境計画(UNEP)」が編集した「放射線、その線量、影響、リスク」(吉澤康雄、草間朋子訳、同文書院・1988年発行)を参考にしました。図についても同書からの引用です。