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2003.11号 

日本・韓国・台湾
ミサイル防衛(MD)システム導入
アジアで広がる軍拡

◆防衛庁、来年度にMD予算要求

 北朝鮮の核開発疑惑、ミサイル開発を理由として日本、韓国、台湾でミサイル防衛(MD)システムの導入が一気に進展する情勢になってきました。
 日本は8月5日に閣議決定した「防衛白書」でミサイル防衛を「重要な課題」と位置づけましたが、防衛庁が8月末に発表した来年度予算の概算要求総額4兆9600億円(今年度比0.7%増)の内、1423億円をミサイル防衛(MD)の初期費用として盛り込みました。
防衛庁はミサイル防衛システムを、米国が開発したイージス艦発射型迎撃ミサイル(SM3)と地上発射の迎撃ミサイル・パトリオット(PAC3)を組み合わせて構築する予定で、このため日本が保有しているイージス艦4隻の改修(毎年1隻の改修)。現在4個高射群(27個高射隊)に配備されているパトリオットの発射システムの改修、さらに地上レーダーの開発など行うとしています。
 先のMD費用1423億円は、MDシステムの整備(新規)1341億円、将来のMDシステムに関する研究等に82億円としていて、99年から行っているMDシステムに関する日米共同技術研究を引き続き行う姿勢を示しています。
 MDシステム整備費用の総額は5000億円という膨大な額が見積もられていて、MDシステムの導入によって、他の主要装備費用の削減が不可欠といわれていたのですが、防衛庁は1423億円の内1122億円を後年度負担(借金として後払い)とすることによって、主要装備費も予定通り計上しています。
 しかしそれでも防衛庁は、日本全土の防衛は無理だとして、MDシステムの配備を首都圏や京阪神、道央、青函、北九州、沖縄などに限定する方針だと伝えられています(8月19日、福井新聞)。

◆韓国・台湾もパトリオット(PAC3)の配備を

 韓国・国防部はすでに6月に来年度の国防予算を、これまでの国民総生産(GDP)2.7%から3.2%に引き上げ、17兆4264億ウオンから28.3%増の22兆3495億ウオン(約2兆2千億円)とする案を要求していますが、そのなかには、韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)が含まれています。内容としては、最新型パトリオットとミサイル迎撃および探知システムで構成するとしていますから、米国からPAC3を購入することになります。国防部はまた米国のMDシステムに条件付きで参加すると示唆しています。
 一方、台湾の湯曜明国防相は8月30日の記者会見で、パトリオット(PAC3)を来年度から配備できるように、予算措置をとると発表しています。もちろん台湾のパトリオット導入は、中国を意識したものです。
 こうした日・韓・台のMDシステム推進をうながすかのように、米軍も独自で、04年度から在日米海軍基地に迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦の配備を検討していると伝えられています。

◆中国を刺激し、アジアの軍拡につながる

こうした北朝鮮の核開発を理由とした北東アジアでのMDシステム導入は、中国を強く刺激しており、9月初めに石破防衛庁長官が訪中し、曹・中国国防相と会談した際、「世界の戦略的バランスが崩れる恐れがある」と懸念を表明しています。
 米国のミサイル防衛を含めた軍事力増強が、長期的には中国を念頭に置いていることは明らかで、すでに中国自身、短距離弾道ミサイル450基を配備し、さらに今後数年間に、年75基の割合で配備する、また台湾、沖縄を射程とする「東風15」(射程600キロ)の改良型を開発中と伝えられています(8月30日、米国防総省、中国の軍事動向に関する年次報告)。

◆PAC3もSM3も迎撃能力は期待出来ない

 このように日・韓・台三国でMDシステムの配備が始まろうとしていますが、これらのシステムが有効に機能する保証はまったくありません。
 日本などが配備しようとしているパトリオットは、湾岸戦争の際に使用されたパトリオット2の改良型です。米軍は湾岸戦争で使用したパトリオットの命中率は100%に近いと発表していましたが、その際のビデオ映像を分析したマサチューセッツ工科大学(MIT)のセオドア・ポストル教授(元国防総省顧問)が「ビデオを見る限り、一発も当たっていない」と発表し、さらに改良型のPAC3についても、「使いものにならない」とする分析結果を発表しています。
 イージス艦発射型のSM3についても、迎撃能力には大きな疑問が出されています(詳しくはニュース7月号参照)。膨大で無駄な費用が、米国と日本の軍需産業のために使われようとしているのです。