出版物原水禁ニュース
2003.11号 

新たな核軍拡競争の危険
ロシア軍近代化の指針発表

核の限定使用を検討

 10月2日、ロシアのイワノフ国防相は、ロシア軍最高司令官会議で、今後10年間の軍事戦略の指針となる「ロシア軍近代化の指針」を発表し、会議に出席していたプーチン大統領に提出しました。
 指針は、外国などの脅威に対抗するために(1)軍事力行使の決意をいつでも示す。(2)「核抑止戦略」を限定的に使用することもありうるーーとし、「戦略抑止力」の限定的使用の例として「さまざまな規模による通常兵器と核兵器、またはいずれかによる攻撃」をあげています。また新たな脅威として国際テロや、大量破壊兵器の拡散などをあげ、アフガニスタンや中央アジアを「潜在的危険地帯」と指摘しています(10月3日、毎日新聞電子版)。
 さらにNATOに対しても、ロシアに対抗するための軍事同盟であり続けるなら、「核戦略を含めたロシア軍の計画や原則を根本的に見直す」として核戦力強化の可能性を示唆しています(10月3日、共同)。
 ロシアは2000年に、ロシアと同盟国に対する攻撃に、核兵器の先制使用を明記した新軍事ドクトリンを決定していますが、今回の指針は核使用の可能性をより具体的に説明しており、米国の小型核開発に対抗した小型核の開発へ進む可能性もあります。
 ブッシュ大統領の登場以来、米国は「国家安全保障戦略」などのドクトリンによって、核先制使用の意志を世界に明らかにしてきましたが、それは米国の世界に対する一極支配宣言ともいえます。
 しかしそのような米国の一極支配は、ロシアを限りなく不安にしていることも事実です。米国のミサイル発射地域に対するロシアの衛星監視は、いまや存在しないに等しく、地上配備のレーダー網だけに頼っている状況で、しかもそのレーダー網も冷戦終結後は老朽化する一方なのです。これはロシアの経済的な困難が原因です。
 ロシアは核ミサイル発射態勢を、いまだに冷戦時代のままにおいていますが、それは米国に対する警戒態勢の不安定さが大きく影響しているのです。このため米ロ間は、現在でも偶発戦争の危険性が極めて高いといえます(原水禁ニュース8月号参照)。
 「ロシア軍近代化の指針」は、新たな米ロ間の核軍拡競争を招くとともに、偶発戦争の危険をさらに大きくするといえます。