出版物原水禁ニュース
2003.12号 

原子力委員会と核燃料サイクルを巡り公開討論

初めて行う再処理問題の公開討論会

 原水爆禁止日本国民会議と原子力資料情報室は、10月11日青森市内で原子力委員会と初めて共催という形をとって再処理問題を中心とした核燃料サイクルについての公開討論会を開催しました。これは、昨年、再処理署名を提出した際に原水禁・情報室側から申し入れ実現したもので、再処理政策のありかたをめぐり反対派とのはじめて公に交わされる議論に、当初300名の枠を遙かに上回り400名を超す(事前申し込み時点で460名)市民が集まり、その関心の高さが伺われました。
 公開討論会は、国側から遠藤哲也委員長代理をはじめ木元敦子委員、竹内哲夫委員、森嶌昭夫委員と近藤俊介参与の5名が参加し、原水禁・資料室側からは、浅石紘爾さん(弁護士)、小木曽美和子さん(原子力発電に反対する福井県民会議)、西尾漠さん(原子力資料情報室)、長谷川公一さん(東北大学大学院教授)の4名がパネラーとして出席。司会を鳥居弘之さん(東京工業大学教授)が務めました。
 公開討論会は、第一部でそれぞれの側から再処理についての考え方や今後の見通しなどについてプレゼンテーションを行った後に、パネラー同士の議論を行い、第二部は、参加者からの質問に答える形で進行しました。ここで議論の主な争点と双方の議論の内容を報告します。

再処理をすすめる理由

 原子力委員会は、この8月に「核燃料サイクルについて」という委員会側の見解をまとめ公表しました。その解説をする形で、森島委員が最初に意見を述べました。その中で再処理を進める理由として、(1)エネルギー安全保障の観点から原子力を進めること。(2)地球温暖化対策として、京都議定書で決めたCO2を90年比で6%削減のためにも原子力が必要だとしてうえで、再処理してプルトニウムを利用することによって、エネルギーの節約と有効利用することになる主張していました。その上で「原子力政策の推進は、50年、100年を先に見てやらなければならない」と決意を述べただけでした。しかし、現実はどうなのか、それが整合性のあるものなのかは一切提起されず、むしろこれまで言い続けてきた抽象的な推進論を繰り返すにとどまりました。

硬直した核燃料サイクル批判

 これに対して原水禁・情報室側からは、まず西尾さんが意見を述べ、原子力委員会の打ち出している核燃料サイクル政策は、高速増殖炉建設サイクルを一直線で目指しているだけで、硬直している。すでに原子力推進派の中でさえ異論がある。さらに「核燃料サイクル」が必要という立場に立っても、それはそのまま六ヶ所再処理工場の早期運転開始の根拠にならないと指摘しました。また、高速増殖炉サイクルなどを繰り返せば、核拡散の点でも問題があるし、事故の危険性も増すと指摘した。核燃料サイクルをやめて、低エネルギー社会をめざすためにも柔軟なエネルギー政策をと訴えました。
 また、浅石さんからは、六ヶ所再処理工場の建設でも、プルトニウムの余剰問題は解決しない。六ヶ所の再処理工場は採算が取れないので撤退すべきだと述べました。特にウラン試験に入れば、工場全体が放射能で汚染され2.6兆円ともいわれる解体費用を残すことになる。本格稼働をする前に「まずは計画をストップして情報公開を十分したうえで国民的討議の場をつくることが必要だ」と、核燃サイクル政策の凍結を求めました。

討論の中で

 双方の意見が出された後でパネラー同士や会場からの質問では様々意見が交わされました。
 小木曽さんからは、核燃料サイクル政策自体が国民的議論もないまま40年間も原子力委員会だけで話し合わされてきた。いま高速増殖炉「もんじゅ」の判決を受け、廃炉を含めて見直しをするべきではないか。また、国民の意見が反映されていないと指摘がありました。また、再処理の経済性についても相次ぐ「民間企業である日本原燃が再処理をやめた場合はどうなるか」との質問に森嶌委員は「場合によっては国費を投じることになるかもしれない」と述べ、遠藤委員は「国策であり、国が責任を負う必要がある。電力自由化の中で民間企業が手に負えなければ国が対応を考えるべき」と国の責任を強調していました。
 その他にも、核拡散問題や国の品質保証体制のあり方などに言及しました。詳しい議論は、原水禁のホームページにリンクされていますので、ご覧ください

国民的な議論を

  現在、再処理は06年7月の操業開始にむけた工事と化学試験が行われており、03年7月末の総合進捗率は約94%まで進められています。しかし、再処理計画の資源エネルギー調査委員会が出した試算では19兆円という試算がでている中で、改めて再処理のあり方が問われています。すでに、もんじゅやプルサーマル計画が頓挫する中、硬直した計画をこのまま進めればその負担は、国民に大きくのしかかります。「国が責任を負う必要がある」ならば、国側がもっとオープンに議論を起こし、国民的合意を形成すべきでしょう。今回の議論は、国側の抽象論に終わり、また私たちも十分に論議を深められたわけでもありませんでしたが、国側は、国民を説得するだけの材料を持ち合わせていないことがあらためて明らかになりました。今後も議論の的を絞った政策論争などを行っていくことの必要性を感じました。その上で、六ヶ所再処理工場の中止を求めて世論を形成していくことが重要です。