出版物原水禁ニュース
2003.12号 

広島・長崎から58年・2
─核兵器の現状報告─ スティーブン・シュウォーツ

『ブリティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』誌発行人・事務局長

 ブッシュ政権が提出した『核態勢の見直し』、『国家安全保障戦略』、それに続く『大量破壊兵器と闘う国家戦略』は、米国の核ドクトリンと拡散防止政策の方向を相当に変えることになった。

米国の核のリバイバル

 こうして北朝鮮は、深刻な地域的・国際的脅威だとみなされる一方、パキスタンは(北朝鮮をその核計画で助けたにもかかわらず)脅威ではないことになる。そして、ブッシュ政権の高官は、イランの核の野望については非常に心配している一方で、イスラエルの核兵器所有については何も語らない。
 このアプローチの主たる問題は、その首尾一貫性のなさにある。核拡散は、それがどこで起ころうと受け入れられないものであり、危険だとする長年の政策を放棄することによって、ブッシュ政権は、道徳的な高みを失い、政治的に有用で都合のいいときには核拡散防止を唱え、そうでないときには核拡散を無視しているとの非難にさらされる立場に置かれてしまっている。この政策とそれがもたらした反感が、ブッシュ政権が核兵器に改めて置いている力点と合わさる時、核兵器を作る能力を持っている国がなぜ将来もNPTを支持し続けなければならないのか理由を探すのが難しくなる。
 同じく重要なのが、ブッシュ政権が、抑止を放棄して、先制核攻撃・予防的核攻撃を選ぶというレトリックを使っていることである。抑止は、テロリストに対しては働きそうにない。これといった攻撃目標や資産をほとんど持っていないし、自分たちの大義のためには死ぬ用意があるからである。しかし、抑止が、もはやいかなる場合も機能しないと考えるべき理由は全くない。関係は以前より穏和なものになっているとはいえ、米ロは今も抑止を実施しているし、米中の抑止関係も続いている。インドとパキスタンは、今もその核能力で抑止し合っている。しかし、予防戦争(最近イラクに対して実施されたようなもの)や先制攻撃が今や核の脅威を扱うために必要だと論じることによって、ブッシュ政権は、次の核拡散の波を加速する方向に進んでいるのである。

「核態勢の見直し」と「大量破壊兵器と闘う国家戦略」

  『核態勢の見直し(NPR)』は、北朝鮮、イラク、イラン、シリア、リビア、ロシア、中国に関連した「目前の、潜在的な、あるいは、予測できない事態」に対応する「核攻撃能力」が必要だとしている。「非核攻撃に耐えられるようなターゲットに対して核兵器を使うことが可能だ」とNPRが述べているのは、重要な点である。他国の核兵器あるいは核兵器能力を破壊するための核兵器による先制攻撃も今や計画されているのである。『大量破壊兵器と闘う国家戦略』によると「われわれは、ならず者国家やそのクライアントであるテロリストが、米国や我が国の同盟国及び友好国に対して大量破壊兵器で脅しをかけたり、使用したりする前にこれらの国を止める用意がなければならない。」
この目的のために、ブッシュ政権は、米国の核兵器製造システムを若返らせるための大がかりで金のかかる計画に着手している──米国のこのシステムが最後に新しい核兵器を作ったのは1990年のこと、そして最後に核爆発装置の実験を行ったのは92年のことである。2004会計年度用として、ブッシュ政権は、64億ドルを要求した。03年と比べ7.1%の増額であり、また冷戦時代に核開発と核実験に使われた平均年額(03年の価格で42億ドル)の1.5倍である。「核弾頭概念設計チーム」も、ロスアラモス及びローレンスリバモア両国立研究所で復活した。「強固な地中貫通型核兵器(RNEP)」を開発するための最善の方法についての研究が現在行われている。地中深く埋められた硬化ターゲットを破壊することを目的とした核兵器である。
一部のマスコミ報道の内容とは異なり、これは、威力の大きな兵器となるもの(TNT換算にして数百キロトンからメガトン級のもの[広島の最新の推定は16キロトン])で、意図通りに使われれば、何万人もの人々を殺戮し、広範な地域に放射性降下物を撒き散らすことになる。それにも関わらず、この研究を支持しているある米国上院議員は、これを「考慮すべき非常に人道的な努力」と呼んでいる。
 ブッシュ政権は、また、核実験の再開に必要な時間を18ヶ月に短縮するための予算を要求している(ただし、現在のところ何かを実験するという計画はないと主張している)。
米国の核兵器体制の維持のために新しい世代のプルトニウムの芯(ピッツ)を製造する巨大な施設を建設するための計画が準備されつつある。最大で年間900個作れるというものである(中国の全保有量の倍に当たる)。
さらに、新しい世代の核兵器についての概念的な作業が進行中である。たとえば、低威力核兵器、放射線強化兵器(いわゆる中性子爆弾)、それに、化学・生物兵器を破壊するための核兵器などである。八月七日、核兵器設計者、軍部指導者ら、それに核ターゲット設定担当者などが、ネブラスカ州オマハの戦略司令部に集まって、これらの問題を初めさまざまな問題を論じ、20年以上前のレーガン政権以来の最大の核兵器リバイバルの舞台を用意することになっている。

(翻訳:田窪雅文)