出版物原水禁ニュース
2003.12号 

原子力物語  核問題入門第2回
放射能・放射線はなぜ危険か

■前号の簡単な復習

 ウランは天然に存在している原子の中では、最も重い(つまり陽子数が最も多い)物質ですが、そのウランには「ウラン235」(陽子数92個、中性子数の143個)と「ウラン238」(陽子数92個、中性子数146個)の同位体が存在します。どちらも放射性物質──つまり放射線を出します。放射線を出すということは、原子の状態が不安定(陽子と中性子の結合が不安定)なため、崩壊しながら安定した原子に変わろうとして、エネルギーを放出する、それが放射線なのです。
 右の図は「ウラン238」がさまざまな核種に変換しながら(放射性壊変といいます)、最終的には鉛に変わっていく過程を示したものです。放射能の量が半分になるまでの時間を半減期といいますが、ウラン238の半減期が45億年近くもかかるのに、ポロニウムは1秒の1000分の1程の時間しかかかりません。
放射線にはアルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線があり、アルファ線は紙一枚で止められますが、ベータ線はもう少し貫通力が強く、ガンマ線は光の早さと同じスピードで進み、透過力が強く、厚い鉛やコンクリートも通り抜けます。

ウラン238の壊変図

■放射線はなぜ危険なのか

 放射線はなぜ生物に害を与えるのでしょうか?簡単に言えば、生物の細胞が放射線によって破壊されるからです。生物の細胞に照射される放射線は電離放射線と呼ばれます。それは放射線が生体内を通過するとき、原子から電子を引きはがし、細胞を破壊するのです(注)。
 人に放射線がどのような影響を与えるか考えてみましょう。人体は数十兆におよぶ細胞の活動によって維持されています。そして1グラムの細胞には、ほぼ10億個の細胞が含まれています。人が放射線を受けた場合、照射された細胞は死んでしまったり、傷ついたまま残ったりします。ある程度の細胞の死は、残りの傷つかない細胞によって補われ通常の機能が維持されます。
傷ついた細胞がその傷を受け継ぎながら細胞分裂していきます。電離放射線がたった1個の細胞を傷つけ10年、20年後にガンや白血病を引き起こすとしてもその間のメカニズムはまだ解明されていません。しかしそのプロセスが存在することだけは分っています。

(注)ベータ線では高速の電子が生体組織を通過しながら、原子からマイナスの電荷をもった電子を引きはがし、プラスの電荷をもったイオンを残す。それらの電子がまた別の電子をイオン化し、最後には高速電子のもっていたエネルギーすべてが消費される。電子線は莫大な速度で飛び出し、光速に近い速度をもったものもある。そのような多くの電子のエネルギーは、原子間の化学結合10万個を破壊するほど莫大である。X線やガンマ線は組織を通過するとき、電子を動かす。それ以後は、ベータ線の場合と同じである。アルファ線もまたその経路で原子をイオン化して電子を飛び出させ、それがさらに電離作用を起こす。原子をイオン化するこの剥離作用が、放射線が組織を傷つけるおもな理由であるが、ただそれだけではない。電離作用に加えて、原子間の化学結合が壊される。これも障害の重要な一因である。(ダイヤモンド社刊、J・W・ゴフマン、A・R・タンプリン著、小山内訳「原発はなぜ、どこが危険か」より)