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2003.12号 

国際会議
「チェルノブイリの子どもたち」の決議

チェルノブイリ救援関西
振津かつみ

 ウクライナの「チェルノブイリ医師団」主催、国連人道問題事務局(OCHA)、世界保健機構(WHO)、国際原子力機関(IAEA)などの国際機関の共催で、被害者や支援NGOも参加して、6月、キエフで国際会議「チェルノブイリの子どもたち」が開催された。
会議の最後に採択された「決議文」には、これまでIAEAなどの原子力推進派が主張してきた「健康被害は小児甲状腺ガンのみ」という評価とは明らかに異なった内容が盛り込まれた。
会議を中心になって組織した現地の医師たちの努力と、被災者をかかえる地域の専門家の報告や被害者自身の訴えによって、これまでのチェルノブイリ被害の過小評価が、少なくとも現地で開催される国際会議では通用しなくなってきている。

★決議の冒頭

 「決議」冒頭には、この会議の報告が「長期にわたる医療・精神的支援の科学的基礎になる」と述べられている。そして「事故の健康影響」として、「今後の調査が必要」との条件付きではあるが、放射線の影響で甲状腺ガン以外にも「汚染地域の子どもたちに腫瘍性疾患が増加している」ことが記された。また、「ガン以外の甲状腺疾患(自己免疫性甲状腺炎など)や免疫・内分泌・神経系の障害も放射線の影響で現れてきている」と述べられた。
「放射線の要因と生活悪化などの放射線以外の要因」によって、「汚染地域では出生率の低下、死産、先天障害が増加し」、「子どもたちの神経・精神・内分泌・消化器・呼吸器・循環器など全ての種類の一般疾病が増加している」とされた。また、被災三国(ウクライナ・ベラルーシ・ロシア)では「基準値を上回る食品の放射能汚染が頻繁に見られている」こと、経済困難に伴う「日常的な食料不足のために子どもたちの成長に必要な蛋白やビタミンの補給がされていないこと」なども指摘されている。

★とくに注意が必要な子供たち

 とくにに健康上の注意を要する集団として、「汚染地域に住み続けている子どもたち/強制移住地域から疎開した子どもたち/胎内被曝した子どもたち/事故処理作業従事者・汚染地住民・移住者の(次世代の)子どもたち/放射性ヨウ素に暴露された子どもたち」の5つの集団が挙げられた。「子どもたちは環境因子の影響に対して最も敏感で無防備な集団であり」、「事故の影響を受けた300万人以上の子どもたちの長期にわたる追跡調査」の必要性が強調された。
事故から17年がたち「チェルノブイリの子どもたち」とは、事故を直接に経験した人々やいまも汚染地域に住み続けて被曝し続けている子どもたちばかりでなく、胎内被曝者、直接被曝した若い親たちの二世である子供たちの健康の問題としてもクローズアップされてきている。

★必要な心のケア

 このような健康被害に言及した上で、事故の「精神的影響」として、「事故による直接・間接的心理的影響/汚染地住民の社会、経済、文化的ハンディ/『被害者症候群』(『被害者意識がマイナスに作用している』というニュアンス)/周囲の大人たちによる不安の増幅」などが指摘された。
これは事故の影響が社会全体に及び、それが身体的被害に留まらず子どもたちの「こころ」の問題にもなって現れていることを反映している。「被害者」としての意識を持って悩む子供たちには、そのことを否定したり隠したりすることによってではなく、適切な補償とケアを実現し、「チェルノブイリのような悲劇の起らない世界」をともにめざす中でしかこのような問題も克服できないのではないだろうか。

★決議の勧告

「決議」最後の勧告では、「遺伝的・腫瘍性疾患のモニター/年齢別の疫学調査/低線量被曝についての診断・治療も含めたさらなる研究/分子遺伝学的研究/精神的問題の克服の必要性」などが盛り込まれ、それらを国連主導で組織された「国際チェルノブイリ調査情報ネットワーク」(ICRIN)が中心に担うとされた。ICRINは昨年2月のOCHA、WHOなどによる報告「チェルノブイリ核事故の人的影響―復興への戦略」をふまえ、「環境と健康の科学的調査を強化し、被災住民と政策決定者の要望に応えるために」、今年6月に立ち上げられたものである。
 勧告ではまたIAEA主導の「チェルノブイリ・フォーラム」(2004年までに被害調査結果などをまとめる予定)への支持も表明された。WHOによる放射線健康影響についての報告はIAEAの承認を要する(1959年の合意)という足かせがあり、欧州ではこの合意の破棄を求める運動も取り組まれている。

 「チェルノブイリ」は決して終わらない。次世代の問題、続く低線量被曝の危険性の評価など、新たな問題を提起し続けている。
私たちはこれらの問題を見据えながら、ヒバクシャへの支援を続け、被災地の本当の意味での「復興」をともに模索したい。そして「チェルノブイリを繰り返さない」ための運動、新たなヒバクに反対する取り組みとともに。