出版物原水禁ニュース
2004.02号 

原子力物語  核問題入門 第4回
国家機能破壊が目的の戦略核兵器

■意味が薄れてきた戦略・戦術・戦域核兵器の区別

 第二次世界大戦後、米ソ両国による核軍拡競争が進むなかで、戦略核兵器、戦術核兵器、戦域(中距離)核兵器と呼ばれるさまざまな核兵器が作られてきました。
 戦略核兵器は、その核兵器の使用によって相手国に壊滅的な被害を与える、あるいは相手国がもうそれ以上の被害を受けるのを避けるために降伏せざるを得ない威力を持っているという意味で使われてきました。
 しかし戦術核兵器に区別されているものでも、戦略核兵器より破壊力の大きいものがあり、また戦域核兵器と言われていたパーシングIIやSS20(注1)は、ヨーロッパにおいては戦略核兵器としての意味を持っていましたから、本質的には核兵器に戦略、戦術、戦域の区別をつける意味はほとんどないといえます。
 しかし冷戦期の米ソ間で戦略核兵器と呼ばれてきたものは、その射程の長さ、破壊力の大きさでもケタ外れといえます。そして2002年5月には、米ロ間で「戦略攻撃兵器削減条約」が調印されていますので、一応、これまでの区別による説明をします。

■戦略核兵器の3本柱

 戦略核兵器は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)、長距離戦略爆撃機と、直接、相手国を攻撃できる運搬手段によって、その存在を誇示してきました。さらにICBMやSLBMも複数弾頭個別誘導ミサイル(MIRV=後述)のように、1基のミサイルに複数の核弾頭を搭載し、それらを別々の目標を攻撃するように誘導するものまで存在しています。
 このように核弾頭と運搬手段、弾頭の誘導装置などを含めてひとつの核兵器体系がつくられてきたのです。
ICBM(Inter Continental Ballistic Missile=大陸間弾道ミサイル)は、6,400キロメートル以上の射程をもつものをいいます。通常は1万キロメートル前後の射程を持ち、百数十キロトン〜数十メガトンの水爆を装備しています(注2)。
SLBM(Submarine Launched Ballistic missile=潜水艦発射弾道ミサイル)は、原子力潜水艦に搭載され、海中を移動するため、ICBMのように偵察衛星で探知されることなく相手国の近くまで接近できます。核戦争に際して、相手の核攻撃を免れて反撃できる戦略核兵器として、米、ロ共に力を入れています。
 原子力潜水艦には、SLBMを装備する戦略原潜(SSBN)と核魚雷や水中発射巡航ミサイル(SLCM)などを装備し、戦略原潜や水上艦艇、さらに陸地まで攻撃する攻撃型原子力潜水艦(SSN)とがあります。
 米国のトライデント型原潜は、射程7600キロメートル以上のSLBMを24基搭載し、1発のSLBMに100キロトンの核弾頭を6〜8個装着し、異なった目標を攻撃できます。1隻で最大192ヵ所攻撃できます。
 ロシアの原潜SS−N−20は、射程6500キロメートル以上のSLBMを20基搭載し、1発のSLBMに100キロトンの核弾頭を10個、それぞれ異なった目標を攻撃できます。1隻で200ヵ所攻撃できます。

■戦略爆撃機

 ICBMやSLBMが一度発射されれば、それが過誤によるものでも、途中で止めるのは不可能ですが、戦略爆撃機は攻撃命令が出された後でも、途中で引き返し可能なので、柔軟性のある戦略兵器といえます。戦略爆撃機には水爆や巡航ミサイル(ALCM、ACM)が搭載されていますが、巡航ミサイルには核、非核の両方があり、湾岸戦争やイラク戦争では非核の巡航ミサイルが使われました。

 

注1:パーシングII(射程180キロメートル、5〜50キロトンの核弾頭1個装備)はNATOが1979年末にヨーロッパに配備を決定し、ソ連が対抗措置としてSS20(射程5000キロメートル、150キロトンの核弾頭3個を装備)を決定したことにより、ヨーロッパの東西で激しい反核運動が燃え上がり、ソ連崩壊の遠因ともなった。ソ連は極東地域にもSS20を約100基配備していた。1987年12月にINF(中距離核兵器)全廃条約が調印され、地上発射の中距離核兵器は全廃された。

注2:1メガトン=100万トン。広島原爆は16キロトンだから、1メガトンの水爆は広島原爆の62個以上の破壊力をもつことになる。