出版物原水禁ニュース
2004.02号 

巨額な原発のバックエンドコスト
それでも楽観的な費用計算

勝田忠広(原子力資料情報室)

○ようやくはじまったバックエンドの議論

 原発のバックエンドコストとは、原発を動かした後に発生する、使用済み燃料の再処理やMOX燃料加工、さらに工場の解体や廃棄物処分に係る費用をいいます。この試算が、去年10月の総合資源エネルギー調査会のコスト等検討小委員会で、ようやく明らかになりました。日本は2005年に電力自由化の範囲を拡大しますが、本格的な制度改革を目前に、国民だけでなく電力会社にとっても負担となっている原子力発電全体の収益性を明らかにしようとするものです。

○40年間事故なし操業を想定

 電気事業連合会が提示した試算の想定は次のようになっています。(1)六ヶ所再処理工場の運転期間は2046年度末まで。(2)対象の使用済燃料は、この運転期間に再処理される約3.2万トン(使用済燃料の残り約3.4万トンは中間貯蔵で、貯蔵後の再処理は計算には含めない)。(3)バックエンド事業の費用の起点は、電力小売自由化範囲の拡大する2005年4月から。(4)海外からの返還廃棄物、MOX燃料加工も考慮する、等です。
 右図が試算結果です。費用は合計で18兆8000億円にも達しており、中でも再処理事業が11兆円で、全体の59%を占めています。
 再処理工場は、2004年から徐々に再処理量を増やしたのち、2009年度以降、常に定格操業が想定されています。再処理能力年間最大800トンなので、40年間で3.2万トンを処理する計算になりますが、この前提自体がかなり無謀です。稼働率の低下、操業そのものの停止によってこの金額は一気に増えるでしょう。また中間貯蔵分の再処理コストは、本来試算に想定されてもいいはずなので、さらに10兆円程度は増加するという考えもあります。
 再処理施設の操業費用を下げられる要因として、例えば点検保守費、再処理施設の更新費の想定をゆるめることで、合計で1兆円程度が下げられることを挙げています。想定の妥当性の問題はもちろん、コストを下げるために古い施設を使い続けるという、安全面から言えば全く逆の姿勢が伺えます。

○原発は安いとする発電コストの単価

 なお、発電単価についても12月に試算結果が明らかになりました。1999年から2003年度までに運転開始をするプラントについて発電コストを算定したものです。運転年数40年、設備利用率80%とすれば、原発は5.3円となり、石炭(5.7円)、LNG(6.2円)、石油(10.7円)よりも安くなるという結果です。しかしこの試算も、再処理やプルサーマル計画が順調に進む、原発も事故なしで運転され設備利用率が低下しない、という極めて楽観的な前提に立っているのです。つまり原発の優位性を示すための計算なのです。
 もともとは自由化範囲拡大を目前に、現在の原発に回収不能なコストが出るのかが問題でした。それがなぜか、今後運転開始する原発のコスト試算にすり替わっています。電力会社や国の狙いはいったい何なのでしょうか。

○被ばくの問題

 試算の想定について、その妥当性を第三者がチェック出来るようになっていないことは問題ですが、それでも核燃料サイクルが実際に動いたときの恐さは伝わってきます。
 例えば被ばく問題です。廃止措置は、密閉管理ではなく、運転停止後に即時解体する方法が予定されています。大部分は作業者による直接解体ですが、遠隔操作でないと解体出来ない高線量のR区域があります。解体物量としては全体の13%(1万6千トン)であるものの、解体工数は全体の61%(420万人日、例えば420万人いれば一日で済む作業)と想定されています。つまり、それだけ危険で大変な区域があるのです。このようにコストの高さだけでなく、再処理事業によって大勢の被ばく者が出てしまうことも問題です。