出版物原水禁ニュース
2004.03号 

原子力物語  核問題入門 第5回

戦術核兵器と小型核兵器
どう違うのだろうか

◇戦術核兵器とは

 前号で戦略核兵器、戦術核兵器、戦域核兵器の分類は、米・ソが対立していた冷戦時代の区別で、実際に攻撃された国が、どれくらいのダメージを受けるかによって核兵器の区別が決まると書きました。
 しかも戦術核兵器に分類されていても、戦略核兵器よりも核威力の大きいものもあるのですから、戦術核兵器と分類されることによって、破壊力が小さいような印象を与え、ほとんど規制・削減の対象になっていないことを私たちは問題にすべきです。
 戦術核兵器の開発の歴史は古く、1951年1月27日〜2月6日にかけて、米国はネバダ核実験場でロケット弾、原子砲弾、戦闘機携行原爆など、戦術核兵器の実験を行いました。
 また英国もオーストラリアで、52年から63年にかけて行った11回の核実験とは別に、プルトニウムなど核物質を使った爆発実験をふくむ安全性実験を600回も行っていて、これも戦術核兵器の実験と疑うこともできます。
 これらの戦術核兵器については、76年10月にストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の創立10周年を記念して発行された「核時代の軍備と軍縮」(日本では服部学氏の訳で79年、時事通信社が発行)に、米国の核弾頭のついた兵器として
(1)大陸間弾道弾、(2)中距離弾道弾、(3)投下爆弾、(4)空対地遠距離発射ミサイル、(5)空気吸入エンジン巡航ミサイル、(6)地対空ミサイル、(7)空対地ミサイル、(8)空対空ミサイル、(9)陸軍と海軍の大砲、(10)爆雷、(11)魚雷とロケット魚雷、(12)機雷、(13)地雷
の13種類が紹介されていますが、(1)、(2)以外は全て戦術核兵器と見なすことができます。
 そして「弾頭の大きさには非常に幅がある。核砲弾の爆発力は2キロトン程度であり、最大の弾頭は約25メガトンと思われる」と述べられています。
 NATO(北大西洋条約機構)とWTO(ワルシャワ条約機構)が対峙していたヨーロッパでは、米軍が7,000発、ソ連軍が3,500発の戦術核兵器を配備していました。また韓国、フィリピンに計2,000発の戦術核兵器を配備していました。さらに米ソは海洋にも戦術核兵器を配備していました。

インドの核搭載可能なミサイル(アグニ)  

 しかしどのような戦術核兵器が配備されていたのかは、あまり分かっていません。広島原爆が16キロトンの破壊力であることを考えると、キロトン以上の核威力の兵器は、戦術核といえども、通常兵器の感覚で使える兵器ではないでしょう。87年12月に中距離核兵器=INF全廃条約が調印され、地上発射の巡航ミサイルも撤去されましたが、空中発射や海中発射の巡航ミサイルは規制の対象から外れました。それらは核、非核両用があり、検証が難しいという理由からです。
冷戦が終わったいま、核砲弾や、核地雷、核魚雷、核爆雷がどうなっているのかも、明らかでありません。
ブッシュ政権が10年ぶりに研究を再開しようとしている「小型核兵器」は、こうした戦術核とは別個の、低位力の核兵器・ミニ・ニュークであるといえます。

◇ミニ・ニュークとは

 ミニ・ニュークは低威力核兵器ともいわれます。
 80年9月、ワルトハイム国連事務総長が発表した「核兵器に関する包括的研究」でも、TNT火薬換算で数トン程度のものまで可能と述べられています。
 米国で開発されているのは、ごく短時間だけ通常の臨界量(ある量の核分裂物資を集めると、核分裂連鎖反応がおこる)を下げて、その臨界量をこえるように設計された核兵器といわれています。つまりウランやプルトニウムの量を少なくして、核爆弾をつくることができるというものです。
 しかしコストがかかりすぎること、通常兵器との区別がなくなるなどの理由で、米英ソ三国は話し合って、当分の間配備しないことを宣言しました。
 ブッシュ政権の考えるミニ・ニュークは、これまで問題となってきた地中貫通核爆弾(B61型のいくつかの核爆弾で、核威力の大小を調整できるといわれる)の延長上のものなのか、あるいはまったく新しい小型核兵器なのかは明らかではありません。(続く)

(W)