出版物原水禁ニュース
2004.03号 

オーストラリアから核のない未来を求めて

─先住民族による国際平和巡礼─広島・長崎へ行進

4月〜8月 北海道〜青森〜広島〜長崎

 2003年12月10日、オーストラリア最大のウラン鉱山「オリンピック・ダム」(南オーストラリア州ロックスビィダウンズ市)前を出発した国際平和巡礼団の一行は、04年4月初めまでオーストラリア国内を行進した後、4月9日に日本到着、11日に東海村をスタートし、北海道、青森などを経て、8月6日、9日の広島、長崎へ向けて日本縦断行進を始める。

2003年11月に国際平和会議

この行進に先立ってオーストラリア・メルボルン大学で昨年11月15日〜16日、「国際平和会議」が開かれた。この会議は「先住民族と核の連鎖、新たな方向を探る」をサブテーマに、核による先住民族の被害や環境問題、さらには民族の権利などが話し合われた。(写真)
参加したのはオーストラリアの先住民族(アボリジニ)を中心に、日本のアイヌ民族、北米の先住民族・オジブウェ族、そしてオーストラリア、日本、米国、英国、オーストリア、ニュージーランドの平和運動、環境運動の活動家が参加した。原水禁からも井上年弘事務局次長が参加し、オーストラリアで採掘されたウランが、日本で52基もある原子力発電所で使われ、使用済み燃料が再処理され、大きな被害を及ぼしていると報告した。(メルボルン国際平和会議の報告ページ

英国の核実験で先住民に大きな被害

英国がオーストラリアで多くの核実験を行い、実験に参加した兵士たち(英、オーストラリア、ニュージーランド)や住民(白人ら)がヒバクしたことはよく知られている。しかし先住民に大きな被害を及ぼしたことはあまり知られていない。
英国は1952年に、オーストラリア西海岸沖のモンテベロ諸島で最初の核実験を行ったが、英国政府は、先住民族・アボリジニの存在そのものを無視した。実験の後、3,600キロ離れたクインズランド州沿岸のロックハンプトンで自然界に存在するよりも200倍も高い放射能が検出された。しかし2,400キロ以内に約4,500人のアボリジニが生活していたことは、問題にもしなかった。

南オーストラリア州略図 
紺色の線は、平和巡礼のたどった道

英国はその後、モンテベロ諸島と南オーストラリア州の砂漠、グレート・ビクトリアのエミュー・フィールドとマラリンガで63年まで11回の核実験を繰り返した、と公式記録では記されている。だが実際は核物質(多くはプルトニウム)と爆薬を使ったビクセンB(VIXEN−B)12回をふくむ安全性実験を600回近く実施し、プルトニウムなどを大量にまき散らし、深刻な放射能汚染をもたらしたのだ。
エミュー・フィールドとマラリンガには多数のアボリジニが生活していたため、当然のことながら大量の放射性降下物を浴びることになる。
英国政府とオーストラリア政府は一部のアボリジニをグレートオーストラリア湾のヤラタという土地に強制移住させたが、移住させるためにやってきた軍用車両に怯えて隠れた人、張り紙の字の読めない人たち多数が実験場に取り残された。
移住させられた人たちも、生まれ育った土地を奪われただけでなく、なによりもアボリジニの生活・文化が奪われたのである。
彼ら自らの運動によって、ようやく1990年代に入ってオーストラリア政府はアボリジニに補償金を支払ったり、実験場の汚染除去に取り組み始めたが、広大な実験場の汚染除去は遅々として進まず、また補償もきわめて不完全なものである。

世界の35%のウランがオーストラリアに

オーストラリアはまた世界のウラン資源の35%も占めていることでも知られている。北部の「ジャビルカ鉱山」は、世界遺産にも登録されているカカドゥ国立公園の中にあるため、世界的な反対運動が起こり、現在も採掘は行われていない。
しかし南部にあるウラン鉱山にはほとんど世界の目は向けられていない。地図にあるように、すでにいくつかのウラン鉱は掘り尽くされ、現在、二つのウラン鉱が採掘中、一つのウラン鉱が試験的採掘、さらに4つのウラン鉱脈が確認されている。そしてこれらのウラン鉱山周辺にはアボリジニが生活しているのだ。
今回の国際平和巡礼の出発地となったロックスビィ・ダウンズには南半球最大のオリンピックダム鉱山がある。ここでウラン採掘と精錬を行っているウェスタン・マイニング社(本社・メルボルン)は、年間1千万トンものウランを採掘しているが、この先260年間、操業を続けるだけの鉱石が埋まっているという。ウラン鉱石を掘り出すときの粉塵の被害、精錬した後の鉱滓による被害など深刻である。
米国のウラン採掘でも、先住民族に大きな被害を及ぼしたが、オーストラリアでも鉱山会社は先住民族にウランの危険を知らせていない。ウラン精錬のあとに残った鉱滓(テーリング)の巨大な山が放置され、そこに雨水が溜まり沼のようになっている。危険を知らない子どもたちはここで水浴びをして、病気になっている。女性たちに流産が多いことは確認されているが、人々にどのような被害が出ているかは、まだまだ明らかにされていない。
さらに今ひとつの大きな問題は、アボリジニの人々にとって貴重な水が大量に浪費されていることだ。ウェスタン・マイニング社は、オリンピックダム鉱山とロックスビィダウンズの町で使う水を、北へ200キロ離れた「エア湖」南岸の地下水から、1日3,600万リットルもくみ上げ、パイプで運んで使っている。とくにこの水源で暮らすアラバナ族や周辺の部族にとっては、地下水が地上にわき出る泉は、貴重であるだけでなく、砂漠を旅する道標であり、生き物が安らぐ場所であり、なによりも聖地として大切にされてきた。泉の一つ一つがユニークな生態系を保っている。それがいま、急速に破壊されつつあるのだ。

オーストラリアの平和運動史上初めての行動

これまで民族の生存・文化が否定されてきた先住民族が、オーストラリアを行進し、さらに日本の各地を回る平和巡礼は、オーストラリアの平和運動としても初めての試みである。現在、日本人7名、オーストリア人1名、米国人1名、オーストラリア人26人がオーストラリアを行進している。
この行進には民族の自決を求め、核被害の実態を訴えたいという、オーストラリア先住民族・アボリジニ(先住民族は一つではない、多くの民族が存在している)の強い思いがこもっている。
日本で事務局を担当している野川温子さんは、オーストラリアの核開発の実態が多くの人に知らされ、先住民族と共同した行動が広がることを強く望んでいる。地域によっては原水禁の「非核平和行進」と重なる場合もあるが、そのときはエール交換などを是非行いたいと語っている。

国際平和巡礼の日本での日程

4月11日 東海村
4月12〜19日 北海道
4月20〜29日 青森県
4月29〜5月8日 岩手県
5月10〜18日 宮城県
5月20〜25日 福島県
5月25〜6月4日 新潟県
6月6〜13日 富山県
6月14〜21日 石川県
6月22〜7月2日 福井県
7月3〜7日 京都府
7月8〜10日 兵庫県
7月12〜14日 鳥取県
7月15〜23日 岡山県
7月24〜8月6日 広島県
8月7日 山口・上関
8月8,9日 長崎市

詳しくは:日程国際平和巡礼ホームページ国際平和巡礼ホームページ

(W)