出版物原水禁ニュース
2004.04号 

核燃サイクル基地の閉鎖を求めて
まず再処理計画を放棄させよう!

原子力資料情報室・澤井 正子

 日本では現在、52基の原子力発電所が運転をしています。発電を終えた核燃料には燃え残りのウランと新たに生み出されたプルトニウム、そして「死の灰(核分裂生成物)」が含まれています。
 日本政府は、このプルトニウムを再び原子力発電で再利用する「核燃料サイクル」を、原子力政策の基本としています。そのため使用済み燃料からプルトニウムを取り出すための施設、再処理工場を青森県六ヶ所村に建設中です。

核燃料サイクル基地

 六ヶ所村の施設概要 
さよなら原子力の日・プレゼン資料より

 六ヶ所村は、青森県の太平洋側、下北半島の付け根に位置しています。村には再処理工場も含めて核燃料サイクル基地と呼ばれる四つの施設があります。「ウラン濃縮工場」は天然ウランを濃縮して、核分裂を起こしやすい濃度ウランを作り出す施設です。原発の運転によって発生する低レベル廃棄物(黄色いドラム缶)の埋め捨て施設「低レベル放射性廃棄物埋設センター」、さらに海外委託再処理によって日本に返還輸送されたガラス固化体を保管する「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」があります。

再処理工場

ガッテン再処理・市民サイトより 再処理工場は、原発から輸送された使用済み核燃料を化学処理して、プルトニウムとウランを取り出す施設です。したがって核施設として臨界や被曝の危険性と、化学工場として火災・爆発などの危険性を合わせ持っています。工場ではまず核燃料を濃硝酸に溶かし、液体状で死の灰を分離、さらにウランとプルトニウムを分離します。
 死の灰の部分は高温のガラス原料と混ぜ、ステンレスの容器に入れて冷やし固められます。これが高レベルガラス固化体で、人間が近づけば即死してしまうような非常に強力な放射線と熱を出します。ウランは、乾燥し粉状で貯蔵されます。プルトニウムの方は、一度分離したウランと1対1の割合で混合され,粉状で貯蔵されます。このプルトニウムを、再び原発の燃料として利用するのがプルサーマル計画です。

施設の概観

 原発1年分の放射能を1日で出す再処理工場は、たとえ事故が起きなくても、日常的に大量の放射能を放出しなければ運転できません。巨大な排気筒からは、クリプトン、トリチウム、ヨウ素、炭素などの気体状放射能が吐き出されます。また海洋放出管からは、トリチウム、ヨウ素、コバルト、ストロンチウム、そしてプルトニウムまであらゆる種類の放射能が廃液として海に捨てられます。再処理工場は「原発1年分の放射能を1日で出す」といわれ、最悪の核施設です。そしてひとたび大事故が起これば、放射能の被害は日本全体に及ぶ可能性があります。

続発するトラブル

 再処理工場は建屋と呼ばれる非常に大きなビルが30以上、これらを結ぶ配管の総延長が約1,500キロメートルもある、とてつもなく大きな施設です。93年から建設が進められ、最初に完成したのは燃料貯蔵プールです。98年から燃料の受入れを始めましたが、2001年の春、プール水の漏えいが発見され、最終的には5ヶ所の漏えいが確認されました。
 プールの縦・横の大きさは小・中学校にあるようなサイズですが、核燃料を常に水の中に置いておくために、20メートル近い深さがあり、内側には放射能が漏れないようにステンレスが内張されてます。このステンレス板の溶接で、下請け業者が不良工事を行い、結局291ヵ所の補修工事が必要となりました。
 そのために工場の操業予定が1年延期され06年7月になっています。このような大規模なトラブルは、工事を監督した日本原燃の品質保証能力の欠如を物語るもので、工場の運転に重大な問題が発生することが心配されています。

ウラン試験で施設を汚すな

 プールの不祥事が続く中、工場本体では着々と稼働に向けた試験が行われています。いきなり使用済燃料のような非常に強力な放射性物質を使用するのはあまりに危険なため、水や蒸気→硝酸などの薬品→ウラン→使用済み燃料という4段階で試験が行われます。
 しかし薬品の試験がやっと終わりかけた頃、燃料プールでの漏えいが大問題となり、試験計画は止まっています。私たちは、この段階で試験を中止することを日本原燃に求めています。ウラン試験を始めれば、施設全体が放射能で汚染され、工場の計画が挫折した場合でも、その除染・解体に膨大な費用がかかってしまうからです。

使い道のないプルトニウム

さよなら原子力の日・プレゼン資料より 六ヶ所再処理工場は、年間最大800トンのプルトニウムを作りだします。ところが、このプルトニウムの使い道は全くないのです、日本の電力会社は、フランスやイギリスに委託している再処理で、すでに約32トンものプルトニウムを保有しています。
 ところがそのプルトニウムさえ、福島や新潟など原発立地県の住民の反対で計画どおり使うことができません。まして六ヶ所工場のプルトニウムについて、具体的な使途は何も示されていません。

バックエンド費用19兆円

「バックエンド・コスト19兆円」の内訳

バックエンド・コスト19兆円の内訳 工場でトラブルが続発し計画が遅延する一方、05年4月からの電力自由化を控えて、電力会社は今日までのような殿様商売が出来なくなり、危機感を抱いています。それは六ヶ所再処理工場にかかるコストが、今後電力会社の経営を圧迫することが確実だからです。 そこでその費用を「広く薄く」国民に負担させるシステムつくるため、今までは公表していなかった六ヶ所再処理工場にかかる費用を2003年末に公表しました。電気事業連合会の試算によると、今後の増設分を含んだ 建設費 が約3兆3700億円、工場の運転・保守費に約6兆800億円、施設の解体・廃棄物処分費用が1兆5500億円、総額約11兆円もの経費がかかるというのです。この試算は工場が40年間100%フル稼働、無事故で動くという、非常識な前提で試算されていますから、実際はこれ以上の額になるでしょう。

 さらに六ヶ所工場の費用を含めたバックエンド費用の総額が約19兆円にも達することが明らかにされました。核燃料サイクルにこんな経費がかかることを一度も国民に説明せず、作ってしまったのだから出してくれ!と居直っているのです。しかし六ヶ所再処理計画を中止すれば、工場の運転費用、解体費用、MOX燃料工場やTRU廃棄物の処分費用も必要なく、19兆円のうちの実に7割が削減可能です。

六ヶ所再処理計画の放棄を!

 使い道のないプルトニウムのために、大量の放射能をまき散らし、大事故の可能性を抱え、11兆円以上のコストを必要とする六ヶ所再処理工場を正当化する理由は、何もありません。それでも日本が再処理計画に固執するならば、東アジア地域の平和にとって、大きな混乱要因となる可能性があります。広島・長崎を原点に持つ私たちの運動にとって、六ヶ所再処理計画は絶対に許してはいけないものです。