出版物原水禁ニュース
2004.05号 

法改悪を許すな!
原発廃材の「スソ切り処分」制度化に反対

末田一秀(核のごみキャンペーン関西)

 廃炉時代を迎えた原子力発電。運転終了後の原発は解体撤去する方針になっている。その際、多量に発生する廃棄物の全てを放射性廃棄物として扱っては、経費が高くつくと考えた原子力推進派は、一定レベル以下のものを放射性廃棄物ではなく一般の廃棄物として扱う法改悪を準備している。放射能の拡散を招くおそれのある法改悪を許さないために、この問題への注目を訴えたい。

安上がり処分を狙う放射能のスソ切り制度化

  1998年に商業用原発で最初に営業運転を終えた東海原発は2001年12月から周辺設備を中心にした解体工事が進められている。熱交換器などの解体を行う第2期工事を2006年から、原子炉本体の解体撤去を行う第3期工事を2011年から行う計画である。東海原発の解体工事では、18万トン近くの廃棄物が発生すると見込まれているが、第2期工事からは放射能で汚染された廃棄物が多量に発生することになる。
放射性廃棄物のスソ切り処分が制度化されれば、発生する廃棄物のうち放射性廃棄物として扱われる予定のものはわずか10%に抑えられ、残りの廃棄物は産業廃棄物になったり、リサイクルに回されたりする予定である。
 関電などが現在使用している標準的な原発は東海原発と形式や規模が違うため、解体すれば廃棄物の量も50万トンから55万トンにのぼると予想されているが、スソ切り処分により放射性廃棄物として扱うものはわずか2〜3%に抑えられる予定である。

原発廃材がフライパンに?!

 これ以下のものは放射性廃棄物としないという基準値を私たちは分かりやすくスソ切り値と呼んでいるが、正式にはクリアランスレベルという。一度、放射能として規制していたものを規制領域から払い出す(規制しない)ことから名づけられた。
 この基準値、既に1999年に原子力安全委員会によって定められている。原発廃材を再利用したり、廃棄物として埋め立てた場合など、いくつかのシナリオを仮定し、その場合の被曝量が一般人の年間許容量の百分の一になるように計算して基準値を決めている。例えば、原発廃材の金属が再利用されフライパンになったケースでは、フライパンの金属が腐食して食品に混入し、食べてしまう場合の被曝量を、フライパンの年間使用時間を180時間と仮定し、フライパンの面積や鉄の腐食速度などを使ってもっともらしく計算しているのだ。そのような計算は仮定を変えれば結果はいくらでも変わり、信頼することはできない。

総合資源エネルギー調査会で進む制度化の検討

 スソ切りの制度化については、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会で検討が行われている。具体的には同会の原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会が検討の場で、その下にさらに低レベル放射性廃棄物等安全ワーキンググループが設けられ議論が行われている。
昨年11月20日に開かれた廃棄物安全小委員会では、当面の検討課題やスケジュールが議論され、今年夏頃を目途にクリアランスの報告書をまとめるとのスケジュールが了承された。東海原発の解体工事でクリアランスレベル相当の廃棄物が発生する第2期工事の開始までにスソ切り処分の制度化を図るべく、来年の国会に原子炉等規制法改「正」案を提案する予定なのだ。

免除レベル導入の放射線障害防止法改悪も

 ところで、クリアランスレベルと同じように、一定レベル以下の放射能を規制しない「免除レベル」を導入しようとする問題の法案が、実は今国会に提出されている。放射線障害防止法改「正」案だ。クリアランスレベルが既に規制の対象にされている放射能を規制から外す場合に適用されるのに対し、免除レベルは最初から放射能として扱わず規制の対象としない場合に適用される。火災報知器に用いられているものなど低レベルの放射能を規制するかどうかのスソ切り値が免除レベルなのだ。
 現行の放射線障害防止法にも、これ以上のものを放射能として定義するという値が決められている。この値に替えて免除レベルが導入されると、756の放射能核種ごとに規制値が定められる。その結果、中には規制が強化される放射能もあるが、使用量の多いトリチウムでは現行法の定義に比べて1万倍以上も緩和されてしまうなど全般的には規制緩和される傾向にあり、特に拡散の危険性が高い非密封の放射能で緩和される場合が多いことは問題だ。
 免除レベル設定にあたっては、クリアランスレベルと同様に一般人の年間被曝基準の100分の1になるように計算していると説明されている。しかし、放射能の影響には、これ以下であれば安全であるという「しきい値」など存在しない。医療などやむをえない場合と比べて不必要な被曝は、たとえ100分の1であっても問題なしとするわけにはいかない。
 今回の免除レベル導入の法案が、放射能ごみのスソ切り処分=クリアランスレベル導入に向けた「露払い」にあたることも見逃せない。

「スソ切り反対」シンポジウム開催

 こうした動きに黙っているわけにはいかない。
 放射能のスソ切りに反対するために、立ち上げられた「放射性廃棄物スソ切り問題連絡会」は、設立シンポジウムでの市川定夫さん(原水禁副議長)の分かりやすい講演録をパンフレット(残部あります。ご活用を)にするなどの活動を続けて問題点を訴えてきた。
 法改悪が現実化してきたことから、3月21日に、東京で反対シンポジウムを行った。最初に、クリアランスレベル導入に向けての総合資源エネルギー調査会の議論などについて報告した後に、廃棄物学会会長で京大教授の高月紘さんから「建設廃材の環境リスク」と題した記念講演を受けた。
高月さんは、防腐処理された廃木材がリサイクルされる場合のリスクを例に、「解体現場での高度な分別の困難さ」「的確な測定の困難さ」「他の廃棄物との混合の危険性」などを解説した。
 続いて、西尾漠さんが、法案提出された免除レベルの問題点や、RI廃棄物の埋設処分を可能にする改悪も盛り込まれていることを報告した。
 また、柏崎から管理区域廃棄物の持ち出し問題や、岩手県でスソ切り反対の要請行動を県知事に行ったことなど、各地報告も行われた。廃棄物処分場問題全国ネットワークの大橋事務局長は、「全国各地に廃棄物問題の団体があるが、原子力問題には一歩おいている現状。分かりやすく伝え、積極的に提携して反対して行こう。」と訴えた。

スソ切り反対の声をひろげよう!

 多くの方にスソ切りの危険を知っていただき、「制度化」は社会的に決して受容されるものではないという世論を国会や政府に届けたい。そのために当面、次の取り組みを提案したい。
 スソ切り制度化を阻止できるかどうかは、今年が正念場である。