出版物原水禁ニュース
2004.05号 

日本の核武装論を検証する

いますぐにでも日本の核武装は可能

■政府は一貫して核武装は可能との立場

反核運動内部にも根強い核武装論
 現在、日本が核武装するのではないかとの不安が一部に出ている。ここではその可能性などについてさまざまな視点から検証してみたい。まず現在、日本国内から出ている核武装論について考えてみよう。
 一つは、日本政府関係者からの「非核三原則見直し」や、「憲法上核兵器は保有できる」などの発言がある。
 02年2月、安倍晋三官房副長官(当時)が早稲田大学の非公開講演会で「小型であれば原子爆弾の保有も問題ない」と発言し、これに関連して福田官房長官が「私個人の理屈から言えば持てるだろう」と、日本の核兵器保有は可能との見解を示した。この見解は、日本政府が繰り返し主張している立場でもある。
 安倍氏はその後、国会での大田昌秀参議院議員の質問に、「核兵器の保有は憲法上禁止されていないとする従来の政府解釈を紹介したものだ」「政府としては唯一の被爆国という立場から非核3原則を堅持しており、保有することはできない」と釈明し、一応問題は落ち着いた。一方、民間でも積極的な核武装発言が出始めた。「北朝鮮に拉致された日本人を救出する全国協議会」(救う会)の佐藤勝巳会長が、東京での「拉致問題」の集会で「北朝鮮の核開発に対抗して、日本も核ミサイルを持つべきだ」(2003年2月18日)との発言が代表的なものだろう。こうした動きの中で、反核運動に関わっている一部の人たちから、「日本は核武装に動き出した」との発言が強まっている。高速増殖炉実験炉「常陽」の使用済み核燃料の再処理で、兵器級プルトニウムが抽出されている。高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開にこだわるのは、兵器級プルトニウムを取り出そうとしているからだ、このことからも日本は核武装の準備を進めているといえる、などである。
 ここでこれらの発言を検証する前に、日本の核武装は現時点ではどの程度可能なのか?を考えてみたい。

日本はすぐにでも核武装は可能

 ウラン235の濃度がどれくらいあれば、核爆弾になるのだろうか?100%近く濃縮されたウラン235の臨界量=爆発可能量は15キロであるが、20%程度に濃縮されたウラン235でも、250キロあれば臨界に達する(したがってウラン235が20%以上のウランは、核兵器転用可能物質となる)。この量は爆縮という技術によって、もっと下げることが可能で(4頁の核問題入門第6回参照のこと)、現在、六ヶ所村で運転している遠心分離式のウラン濃縮施設で、20%の濃縮ウランも、さらに100%近い濃縮ウランの製造も十分可能なのである。つまり日本はウラン爆弾を製造しようと思えばすぐにでも可能なのだ。プルトニウム核爆弾(長崎型)の場合はどうか? 私たちがまず理解しなければならないのは、原子力発電所の使用済み核燃料の再処理によって取り出されたプルトニウムでも、核爆弾の製造は十分可能だということだ。原子炉の運転で作られるプルトニウムは、ほとんどプルトニウム239なのである。

■プルトニウム240の問題

ただ原子炉の型、取り出す時期によって、プルトニウム240(プルトニウム239の同位体)が多かったり、少なかったりするという問題がある。原子炉内のプルトニウム238は中性子を吸収してどんどんプルトニウム239に転換していく。原子炉内では中性子が大量に放出され続けているから、プルトニウム239は中性子によって核分裂もする。しかし核分裂せずに中性子をさらに取り込んで、プルトニウム240に転換する場合がある。
プルトニウム240は不安定でガンマ線を放出し、また外部から中性子を吸収せずに分裂する「自発核分裂」を起こす性質を持っている。核分裂すれば当然、中性子を放出する。この中性子は、起爆剤で一気に爆発させる前に、プルトニウム239の早期爆発(小爆発)を誘発し、核爆弾としての核爆発をしないといわれていた。このため、核爆弾に適しているかどうかでプルトニウム240が2〜3%のプルトニウムをスーパー級、7%以下を兵器級と呼び、プルトニウム生産用の炉か、それに適した炉でないと作れない(北朝鮮の黒鉛減速炉は兵器級プルトニウム取り出し可能な原子炉)。18%以上を原子炉級プルトニウムといわれている。
しかし軽水炉原発の使用済み燃料から取り出した原子炉級プルトニウムでも、核爆弾の製造は可能である。1994年6月27日、米エネルギー省が、1962年に民間用原発から取り出した商業用プルトニウムで核兵器ができるかどうか試すため、ネバダで地下核実験を実施し、成功していた事実を公表している。さらに94年9月には、米国のロスアラモスとローレンスリバモアの国立核兵器研究所が、原発の使用済み燃料から取り出したプルトニウムで、小型の戦術核兵器を製造できるとの報告書を、ホワイトハウスとエネルギー省に提出している。(続く)

(W)