出版物原水禁ニュース
2004.06号 

ブッシュ政権の核戦略(1)

「核態勢見直し」のねらいは?

ブッシュ大統領再選だけはごめんだ

  米国でブッシュ大統領が就任してから早くも4年が過ぎようとしています。今年11月には大統領選があり、ブッシュ大統領が再選されるのか、ケリー候補が当選するのか、現時点では明らかではありません。ケリー氏が大統領に当選したとしても、米核政策の根本的な変化は期待できないでしょう。それでもブッシュ米大統領の再選だけは、米国民に拒否して欲しいと望むのは私だけではないでしょう。
ブッシュ大統領というより、大統領をとりまくラムズフェルド国防長官やネオコンの人たち、そして軍需産業が一体となって進めている核戦力態勢は、あまりにも危険なものです。ブッシュ政権がこの4年間に発表してきた核政策を考えてみたいと思います。

すべては「核態勢見直し」から始まった

ブッシュ政権の核政策を見る上で一番基本的なものは、2001年12月31日に米国防省が議会に提出した「核態勢見直し」(NPR)です。この核態勢見直しは、議会が、5年から10年にわたる米国の核戦力の指針を立案するため、包括的な核態勢見直しを行うよう国防省に指示した結果、出されたものです。
国防省は02年1月9日に、核態勢見直しの「序文」のみを公表し、他は秘密扱いとしました。3月に入って「ロサンゼルス・タイムズ」紙などが非公開部分を暴露し、今日ではある程度、概容が明らかとなったといえます。その核態勢見直しをまず検討してみます(なお、資料としてピース・デポが発行している「核軍縮と非核自治体・2002」などを参考にしました)。

脅威ベースから能力ベースへの変更

「核態勢見直し」は、北朝鮮、イラン、イラクに加えてロシア、中国、リビア、シリアを核攻撃対象国としてあげていることでも知られていますが、このことは後で書きます。
「核態勢見直し」で最も重要な点は、米国の戦略戦力計画を、冷戦時代の「脅威ベースのアプローチ」から、「能力ベースへのアプローチ」へと変更したこと。これまでの攻撃的核戦力のみに依拠する戦略態勢は、21世紀に米国が直面する潜在的敵を抑止するうえで不適切であると結論したことにあります。
この脅威ベースから能力ベースへの転換は、「今後数十年にわたり、米国と同盟国の安全保障に合致した最低水準の核兵器をもった信頼性のある抑止力を提供する」と述べ、さらに大量破壊兵器で武装したテロリストやならず者国家が、米国の同盟・友好国への安全保障を試す可能性があるが、それを思いとどまらせるために、より広範な選択肢のある能力が必要である、と述べています。
脅威ペースから能力ペースへの転換の上に、冷戦時代の攻撃的3本柱に替わる、広範な選択肢をもつ新3本柱が必要だとしています。
しかし「能力ベースへのアプローチ」と言いながら、どのような能力を追求するのかは、はっきりしていません。作戦配備戦力の規模は、緊急な不測事態、潜在的な不測事態、予期しない不測事態すべてに対応できる能力、米国の防衛目標を満たすのに必要な能力としていて、その中には北朝鮮、イラク、イラン、シリアや、中国、ロシア問題も含まれています。つまり、軍事力をいくらでも拡大できるのです。

新3本柱制定のねらい

こうして新たな3本柱が設定されました。
それは(1)核兵器および非核兵器による攻撃的打撃力システム、(2)能動的および受動的防衛手段、(3)将来発生する脅威に即応できる新たな能力を提供する、再活性化された防衛基盤(インフラ)であり、この新しい3本柱は、強化された指揮・管制および情報のシステムによって結びつけられる──と述べています。
冷戦時代の核戦略の中心は、ICBM(大陸間弾道弾)、SLBM(潜水艦発射弾道弾)、戦略爆撃機という3本柱でした。それに替わる「新3本柱」の設定です。
また「新3本柱の確立は、大量破壊兵器の拡散にもかかわらず、指揮・管制、情報が強化された防衛手段と非核攻撃力を加えることによって、核兵器への依存を低減させ、抑止能力を向上させる」としています。

核兵器使用へのあいまいな対応

こうして第1の柱、核兵器と非核兵器による攻撃的打撃力システムの確立は、核兵器と通常兵器使用の境目を曖昧にすることになります。暴露された「見直し」では「非核攻撃能力は、被害や紛争のエスカレーションを制限するのに利用でき、核兵器は、非核攻撃に耐えうる標的(地中深くにある壕や生物兵器施設)に対して使用できるだろう」と述べています。


(W)