出版物原水禁ニュース
2004.07号 

ブッシュ政権の核戦略(2)

使える核へのつよい執念

□能力ベースとはなにか?

2001年12月31日、国防省によって議会に提出された「核態勢の見直し」(NPR)の特徴の第1は、「脅威ベース」から「能力ベース」への転換にあります。
米ソ冷戦時代には、ソ連の脅威にどう対抗するかが、米核戦略の中心でした。このためさまざまな核兵器による戦争抑止の戦略が考えられ、最終的には「相互確証破壊」へと行き着いたのです。これは核で攻撃すれば、お互いがはかりしれない破壊・被害を受けるというもので、恐怖の均衡の上に平和が存在するという理論です。しかしこのような戦略は、際限のない軍拡を必要とし、結局ソ連は、その負担に耐えられず、経済的に破綻し、国家そのものが崩壊しました。
こうしてソ連邦が崩壊して10年が経過した現在、米国は冷戦時代の「脅威ベース」から「能力ベース」へと変更した──と述べていますが、この「能力ベース」への変更は、予測できない敵が、どう戦うかを考え、予測できない時期に、予測できない不測事態の全てに対処する能力であるとしています。この予測できない事態のなかには、北朝鮮、イラク、中国、ロシアなどとの関係も入っていて、これでは米国の戦力は核兵器も含めていくらでも拡大することができます。
しかし、いくらハード面(軍事力)を強化しても、テロやゲリラ戦に対応できないことは明らかです。

□3本柱の危険

こうして第2の特徴として、「能力ベース」概念による「新しい三本柱」がでてくるのです。それは、(1)ICBM(地上発射核ミサイル)、SLBM(潜水艦発射核ミサイル)、長距離核爆撃機の3本の戦略核兵力に、非核攻撃兵器を加える。(2)防衛能力の強化──ミサイル防衛。(3)指揮・統制・計画・情報など防衛インフラストラクチューの整備です。
そしてこの新3本柱を構成する新たな能力の組み合わせは、米国の配備核弾頭を1,700〜2,200発に削減しても、米国に対する危険を低減させることができるとしています。

□地中深くに存在する標的に核兵器を使用

しかし新3本柱(1)の核・非核兵器による攻撃は、敵を決定的に撃破するための軍事行動において、より高い柔軟性を与えることができる、と述べていますが、これは地中深くに存在する大量破壊兵器に対して、新たな兵器開発を行い、必要なら核兵器による攻撃を行うためであると考えられます。
「核態勢の見直し」では、「地中深く埋設されている標的の撃破」にかなりのスペースを割いています。
「現在70ヵ国以上が、軍事目的で地下施設を使用しており、その数は1万以上である。およそ1,100の地下施設が、公然、あるいは疑惑の戦略的(大量破壊兵器、弾道ミサイル配備、指導部や最高幹部の指揮・統制)基地であり、現在は1,400にまで増加している。これらの施設は、施設が深いことと、正確な位置がはっきりしないことで、撃破するのに困難である」と述べ、「米国は現在、B61−11という地中貫通核兵器を有するのみで、限定されている。より効果的な地中貫通兵器があれば、大威力の地表爆発と同じ被害を与えながらも、より少ない(10〜20分の1)の降下物を発生させるだけだろう。非常に深い、または大きな地下施設を撃破するために、大きな威力の地中貫通兵器が必要だろう」と書いています。
こうして昨年11月ブッシュ大統領は10年ぶりとなる、5キロトン以下の小型核兵器研究に道を開く04年度国防予算案に署名したのです。

□より大規模なミサイル防衛へ

新3本柱の(2)は、防衛力の中心にミサイル防衛をおいています。「いかなる射程の弾道ミサイルも、飛行の全ての段階で迎撃出来る必要がある。米国はあらゆるミサイルに対して効果的な防衛を追求している。(日本でも導入が決まっている)PAC−3以外は、どのシステムを配備するかは決定していないとして、(1)空中配備レーザー航空機、(2)追加的な地上配備中間飛行段階迎撃基地、(3)4隻の海上配備中間飛行段階迎撃の艦船、(4)より短い距離の脅威に対する最終飛行段階迎撃システム。2001年に配備が開始されたPAC−3、2008年までに利用出来る可能性があるTHAAD(戦域高高度地域防衛)などが、2006−08年以降に配備できるだろう、としています。
さらに宇宙配備赤外線システム衛星の開発する予定である、とも述べています。
もしこのような計画が進めば、米国はレーガン大統領時代のスターウォーズ計画を超えた宇宙軍拡をもくろんでいると考えられます。そして日本は、このような米国に従っていくのでしょうか。

(W)