出版物原水禁ニュース
2004.08号 

動き出したプルサーマル計画(3)
ウラン、MOX二重炉心の危険

──小林圭二さんに聞く──

プルサーマルではMOX燃料は4分の1だけ

ニュース6月号でプルサーマルの燃料は、MOX燃料集合体が全体の4分の1しか挿入されないと書きました。まず、プルトニウムと燃えるウラン235がわずか0.2%の劣化ウランの粉末を混ぜ合わせた燃料(ペレット)を製造するのですが、プルトニウムの比率が多いのを高富化度、少ないのを低富化度といい、高、中、低の3通りの燃料棒を製造し、組み合わせたのが、MOX燃料集合体です(6月号の図を参照して下さい)。

プルサーマルでは、ウラン燃料集合体とMOX燃料集合体の2種類の燃料集合体が、原子炉に入れられますが、4分の1MOX炉心というのは、4分の3がウラン燃料集合体で、MOX燃料集合体が4分の1ということです。なぜ4分の1しか入れられないのでしょうか?プルサーマルの危険が、ここに象徴的に示されているといえます。京大原子炉実験所で原子炉工学の研究をしてきた小林圭二さんに、なぜ4分の1炉心なのか、その危険はどこにあるのかを聞きました。図も小林さんの作成です。

二重炉心による中性子のばらつきが問題

まず図をみてください。この図はウラン集合体だけの場合と、MOX燃料集合体が入った場合の、熱中性子(スピードの遅い)の分布が示されています。
ウラン集合体だけの場合は、熱中性子の分布はなめらかな線になっていますが、プルトニウムを含んだMOX燃料集合体が部分的に入った場合は、その部分を中心に凹んだ線になっています。これはプルトニウムがウランの約2倍も熱中性子を吸収するからです。

制御棒の効きが悪くなる

その結果何が心配されるのか? 制御棒は原子炉の運転中に熱中性子を吸収することで、核燃料の燃焼を抑える、つまり一定の燃焼を保つ役割を担っているのです。熱中性子の多いところでは制御棒はよく効きますが、MOX燃料集合体のところでは熱中性子が減りますから、制御棒の効きが悪くなります。ですからプルサーマルでは制御棒はなるべくMOX燃料から離れたところに配置しますが(加圧水型軽水炉では、ウラン燃料集合体内)、限界があって、炉心に入っている制御棒全体としては、制御棒の効きが低下します。この結果、原子炉停止能力の余裕が減ってしまうのです。原子炉のなかのMOX燃料を4分の1しか入れられない理由はそこにあります。

電力会社は運転中の軽水炉でもプルトニウムが沢山できて、その一部は燃えているのだから、プルサーマルも同じだといいますが、ウラン燃料集合体だけで運転する軽水炉の中でできるプルトニウムは、均質に燃えていて、プルサーマルのように、非均質にプルトニウムが集中している状態とはまったく違います。プルサーマルではウラン燃料集合体とMOX燃料集合体の境界での、炉の局所的性質、中性子の挙動や性質が突然変わることになり、その結果、ウラン集合体だけの原子炉にない、安全上の問題が生じます。
例えば熱中性子の多いウラン燃料集合体から、少ないMOX燃料集合体の方へ、水が流れるように熱中性子の移動する流れができます。1体の燃料集合体には、高浜4号機では17×17本の燃料棒が束ねてありますが、MOX燃料集合体の一番外側にある燃料棒が、一番よく燃えます。内側にある燃料棒は、外側の燃料棒に大部分の熱中性子をとられて、内側まで入ってこないので、燃えにくくなります。

このようにMOX燃料集合体の中でも、燃えやすい、燃えにくいと、ばらつきがでます。原子炉というのは、平均的な情報で制御していますから、部分的に燃えすぎたところがあっても、知らないうちに過熱して燃料被覆管が破損して、死の灰の漏洩が起こることもあります。

プルサーマルでは、そういう燃え方にバラツキがあるのが特徴で、そのバラツキを減らすために、燃料集合体の外側にはプルトニウムが少なく、内側に多くするような複雑な成分分布になっていて、炉心管理が難しく、製造ミスの恐れもでてくるのです。
(小林さんは、原水禁広島大会・分科会に講師として参加されます。)

(W)