出版物原水禁ニュース
2004.12号 

PSIで核拡散は防止できるか?
     核軍縮の推進以外に道はない

アジア初のPSI(対抗拡散)訓練

04年10月26日、ブッシュ米大統領提唱の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)による訓練が相模湾沖で、27日には横浜沖で行われました。最初の訓練は03年9月にオーストラリア沖で行われ、今回は12回目の訓練で、アジアでの実施は初めてとなります。
訓練には日本、米国、フランス、オーストラリアの艦船が参加し、ロシア、英国、フィリピン、タイなどがオブザーバーとして担当者が参加したとのことです。米国からはボルトン国務次官が参加しました。
 訓練は大量破壊兵器関連(今回はサリン)の疑いの貨物を積んだ船が、洋上で受け渡しをするという通報が米国からあったという前提で、海上保安庁の巡視艇が容疑船を追跡、海上自衛隊のP3C哨戒機が容疑船を発見・通報し、海保と外国部隊が容疑船に乗り込み、物資を押収するという内容でした。
PSIにはもともと北朝鮮をけん制するという目的が存在しており、このため中国や韓国は、最初から慎重な姿勢をとっていて、今回の訓練に際しても、日本がオブザーバー参加を働きかけましたが、参加しませんでした。北朝鮮は10月の訓練は「日朝平常宣言に反する」と非難しており、今後の6者協議に影響すると考えられます。

NPTの欠陥をPSIで補えるのか?

PSIは、03年5月31日、米ブッシュ大統領はポーランドで演説し、「大量破壊兵器の拡散を阻止するため、航空機、船舶の臨検を可能にする『拡散防止構想』」(PSI)を提案したのが始まりです。日本、英国、オーストラリアなど10ヵ国に呼びかけ、G8(主要八ヵ国)を含む15ヵ国が中核メンバーとして参加し、臨検など具体的な行動の取り組みと、情報収集の二つの専門委員会を設けています。
とくに今年に入って「核の闇市場」が明らかとなり、訓練にも熱が入っています。しかしこのような監視の強化、臨検・物質押収だけでは(それも公海上の場合、国際法の問題から限界がある)、現在の核兵器拡散を防ぐことは難しい。核保有国、とくにNPTにおける核兵器5カ国が、積極的な核廃絶への努力を行うなかでこそ成果が現れるのです。

原子力供給国グループと「トリガーリスト」

NPTは最初から5カ国だけを核兵器国と規定し、それ以外の国に核兵器の保有を認めない条約です。
しかも核兵器国は軍縮への努力が義務づけられているだけで(第6条)、核兵器廃絶は義務づけられていないため、非核兵器国から差別条約だとして批判されました。このため第4条の「原子力の平和利用」で、非核兵器国に大きな便宜を図ることが決められています。しかしイラク、北朝鮮、リビアなどが平和利用を目的に機材や原料を集め、核兵器開発を進めたことから、新たな対応策が必要となったのです。
すでに74年のインドの核実験を機に、現在44ヵ国が参加する「原子力供給国グループ」(NSG)が組織され、「ロンドン・ガイドライン」と呼ばれる原子力関連資機材・技術の輸出に関する指針が作成されています。指針・1の「トリガーリストでは、核兵器に関連する資機材と技術の一覧表で、このリストに関連する資機材、技術を非核国に移転する場合は、IAEAの保障措置の適用など4条件の確認が決められていますが、法的拘束力のない、自主的な指針であるため、限界があります。

クリントン政権と「対抗拡散」政策

米・クリントン政権は、湾岸戦争後にイラクの核開発が明るみに出たことや北朝鮮の核開発疑惑などに関連して、93年に「対抗拡散措置」導入を表明しました。これはNPT体制の欠陥をおぎなうだけでなく、新たな核兵器保有国に対する先制攻撃を含む、きびしい措置が含まれていました。北朝鮮に対する軍事攻撃計画も、この「対抗拡散」政策によるものでしたが、結局、クリントン大統領は、軍事攻撃を実行しませんでした。

核兵器国の核軍縮努力こそ最も有効な「対抗拡散」

ブッシュ大統領が登場し、「対抗拡散」政策を積極的に進める政策がとられています。その一つがミサイル防衛であり、PSIなのです。しかし米国は、イスラエルの核兵器保有を容認し、インド、パキスタンの核武装も、アフガン、イラク攻撃のなかで、なかば容認の姿勢をとっています。このような二重基準、さらに核兵器国が核軍縮への努力を見せていない現状では、新たな核兵器国の出現は避けられないでしょう。
12月にはIAEA理事会が開かれ、イランに対する措置が決定されます。NPTも崩壊の危機に直面しています。核兵器国の軍縮努力こそが、最も有効な対抗拡散なのです。

(W)