出版物原水禁ニュース
2004.12号 

通常兵器と核兵器の敷居を曖昧にする小型核兵器の研究
戦術核兵器にシフトする核保有国の危険(2)

戦略核と非戦略核の区別は存在しない

冷戦期には核兵器に、戦略・戦域・戦術という区別が存在していました。戦略核兵器とは、一般的には爆発威力が大きく、長距離の運搬が可能で、相手国を直接攻撃でき、大きな被害を与える核兵器を戦略核兵器としています。米ロ間では射程が5,500q以上のICBM(大陸間弾道ミサイル)、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)、戦略爆撃機が、戦略核三本柱と呼ばれています。5,500qという数字は、米ソ間のSALTU(第2次戦略兵器制限条約)で定義され、米本国の北東国境と旧ソ連・大陸部の北西国境間の最短距離からきています。
しかし、こうした区分は、あくまでアメリカを中心とする区分であって、イスラエル、インド、パキスタンが核戦力を保有した現在では、射程は大きな問題ではなくなってきました。インドを例にとってみると、インドは98年5月の核実験で約12キロトンのブーストつき核分裂爆弾と、約43キロトンの熱核装置の実験を行ったと説明しました。この二つを組み合わせれば水爆になります。事実、インドは核実験の数日後の記者会見で、あえて別々に実験を行ったと説明しているのです。
原爆と違って、水爆は破壊力をいくらでも大きくできます。インドが現在、水爆を保有しているかについては、意見が分かれていて、ミサイルに搭載可能な小型弾頭に成功しているかについても、はっきりしていません。それでも原爆の保有だけでも近隣諸国にとっては大きな脅威ですし、まして水爆を持っているかもしれないとなると脅威はいっそう大きくなります。
つまり弾道ミサイルの射程の違いは、破壊力、相手への脅威という点では大きな差は存在しないのです。

米のミサイル防衛が中国の核開発を加速させる

一般に非戦略核と聞くと、威力が小さいように思われがちですが、戦術核といわれる核兵器でも、戦略核兵器以上の威力をもつものもあることを理解してください。
現在、長射程ミサイルの開発を行っている国に中国があります。それはアメリカがミサイル防衛(MD)システムへ向かって大きく動き始めたからです。
米・ブッシュ政権は、今年7月からアラスカのフォトグリーリー基地にMDの配備を始めました。またミサイルの探知・追尾能力を備えたイージス駆逐艦15隻、ミサイル迎撃能力を備えたイージス巡洋艦3隻を06年末までに配備する計画で、すでにイージス駆逐艦1隻を今年の10月1日から日本海に配備しました。さらに高性能レーダー(GBR)の日本配備も、今年4月に打診しています。
北朝鮮の核ミサイルに対応するにしては、大げさすぎます。あきらかに長期的な戦略として、中国を意識したものです。でもミサイル防衛を破るのは、MIRV(個別誘導再突入弾頭)ミサイルの開発によって十分可能になりますから、中国はいまそれに力を入れていると思います。結局、冷戦が終わっても核軍拡は進行しているのです。

同じ兵器の開発が核保有国で進む

そしていま、もっとも警戒しなければならないのは、核兵器使用に対する警戒感が薄れることです。ブッシュ政権が小型核の研究を再開しました。当面は、地中深くで爆発し、なお放射能が少ない、地中貫通爆弾の研究に力がそそがれると考えますが、さまざまな低威力の核兵器が研究され、開発される心配があります。
冷戦時の経験からいうと、一方が新しい核兵器の研究・開発に進めば、もう一方も、同じような兵器の研究・開発に進むことは明らかです。核兵器保有国が8ヵ国にまで増えている現在は、それだけ多くの国で、小型核兵器の研究が進むということです。
現在、米軍は精密な巡航ミサイル、精密誘導弾、燃料気化爆弾(ディジー・カッター)、クラスター(集束)爆弾など、核兵器を使用しなくても、大規模破壊、大量殺戮の兵器を数多く開発し、所有しています。唯一の軍事大国なったアメリカは、新しい小型核兵器の研究など必要ないのです。にもかかわらず、アメリカは小型核兵器の研究に進んでいます。それはあくことのない兵器産業・死の商人の利益のためです。その結果、世界で通常兵器と核兵器の敷居がだんだん曖昧になっていくのです。

(W)