出版物原水禁ニュース
2004.12号 

イギリス再処理工場をたずねて

小林 晃 

私は、この10月イギリスのカンブリア地方を訪れ、セラフィールドを中心にアイリッシュ海の沿岸を写真撮影してきました。この撮影旅行は私に様々な印象と感慨を与えてくれました。以下に出来るだけ俯瞰的に、イギリスの原発事情を報告します。
 ここに一枚の写真があります。これは、英核燃料会社(BNFL)の工場群の主要部分です。この写真の説明で、イギリスの核利用の歴史が垣間見えます。BNFL
 まず、ビールグラスを伏せたような、巨大な煙突が2本あります。写真には写っていませんが、右の奥にも同じものが2本あります。これは、コールダーホール型原子炉(マグノックス炉、天然ウラン黒鉛減速ガス冷却炉)の煙突で、1956年に運転を開始し2003年3月に廃炉になりました。廃炉費用は1基あたり約1,000億円で、BNFLは占めて4基約4,000億円の巨大な負債を抱えたことになります。この写真の右端前面に天然ガスの火力発電所が建設され、皮肉にも現在、原発の代わりに地域の電力事情に応えています。

 つぎに、右端の黒い巨大な煙突です。これは、10年程前には2本ありました。1957年に大火災を起こし、英国の秘密主義で詳細は明らかにされませんでしたが、一説では、チェルノブイリを上回る地球規模の放射能汚染をもたらしたといわれるプルトニウム生産炉1号基の煙突です。事故後、2号基ともども閉鎖されましたが、今回の訪問で、最近2号基の煙突は解体されていることが分かりました。それにしても、1号基は、事故から50年近くたった今日も、その高い放射能汚染ゆえに、解体が遅れ、醜い残骸をさらしています。
 また、その向かって左隣の比較的高い煙突は、イギリスで最初の国産の原子爆弾に使われたプルトニウムを再処理したB204棟とよばれる再処理工場で、後に酸化燃料用前処理施設となった所ですが1973年に放射能漏洩事故をおこし、その後、閉鎖されました。
したがって、この工場群の中では、操業している工場を捜すほうが難しいわけです。

 さて、使用済み濃縮ウラン用燃料再処理工場ソープですが、左端の、アイリッシュ海に面してたっています。これが、日本から4,170トンもの使用済み核燃料を受け入れ再処理しているところです。その隣右側に使用済み燃料保管用の長い建屋があります。
 再処理後のプルトニウム保管建屋はこちらからは見えませんが、B204棟の向こう側にあります。最近、日本の経済産業省は2003年末時点で英仏に約35トンのプルトニウムがあると発表しましたが、ここには再処理用使用済み燃料比にすればおよそ、20トンを超える分が貯蔵されているはずです。その周辺には、1999年、関西電力高浜原子力発電所用のMOX燃料がBNFLの組織的にデーターが改ざんされていることが発覚し、最大顧客である日本の信用を失い、運転再開もおぼつかないMOX燃料用成型加工工場(SMP)があります。
 2003年のイギリスの原子力発電量は1185.2万キロワットで総発電量の23.7%をしめていますが、今年、チャペルクロス原発が閉鎖され、この比率はさらに下がるでしょう。残された原発は、8基がガス冷却炉、残り14基が改良型同炉で、ほかに加圧水型軽水炉が1基あります。これも、旧型が多く、2010年代の半ばには18基が廃炉になり、新設がない場合総発電量の5%になると推定されています(次号につづく)。