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2005.1号 

防衛計画大綱と中期防の問題点

 ─海外派兵国家への道を宣言した小泉内閣─

ミサイル防衛と海外派兵を主任務に

「見通し得る将来において、わが国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断される」。
小泉内閣は12月10日に閣議を開き、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下、大綱)と、「中期防衛力整備計画(平成17年度〜平成21年度)」(以下、中期防)を決定しました。冒頭の一文は、大綱と中期防の中で繰り返し記述されている文書です。
侵略の可能性が低下したのであれば、防衛予算の削減と自衛隊の縮小が行われるべきです。ところが大綱と中期防は、自衛隊をコンパクト化する一方で、質的強化を打ち出しているのです。新規に購入する兵器で特徴的なものとしては、装甲車104両、輸送ヘリコプター11機、護衛艦5隻、新型哨戒機4機、地対空誘導弾パトリオットミサイル部隊2個群、新型輸送機8機、空中給油・輸送機1機などを上げています。
小泉内閣は、侵略の可能性が低くなった時代の自衛隊に、新しい任務として以下の2つを提起しました。(1)大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散と国際テロ組織の活動(新たな脅威や多様な事態)への対処と、(2)国際的な安全保障環境の改善(国際平和協力活動)──です。簡単に解説すれば、米国の推進するミサイル防衛(MD)計画や、アフガニスタンやイラク侵攻のような米国の先制攻撃戦略に、今後一層協力していくということです。イージスシステムを搭載した護衛艦やパトリオットミサイル部隊の増強はミサイル防衛計画のためであり、装甲車や輸送機の増強はより早く海外派兵を行うためのものです。

恒常的な海外派兵をめざす

 しかし新しい自衛隊の任務には、多くの問題点があります。ミサイル防衛計画とは、敵国の発射した弾道ミサイルを軍事衛星やレーダーで察知し、イージス艦や地上から発射した対空ミサイルで撃ち落すものです。ところが米国は、弾道ミサイルを迎撃する実験に一度も成功していません。この計画は、中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射を想定しています。中国や北朝鮮が発射したミサイルが、米国に届くまでには時間がかかりますが、日本には数分で届いてしまいます。ミサイル迎撃の技術が完成したとしても、日本の防衛に役立つかは疑問です。
 また「本格的な侵略事態生起の可能性は低下」しているのに、なぜ中国や北朝鮮が日本に弾道ミサイルを発射するのでしょうか。侵略目的でないミサイル攻撃とは何を想定しているのか、肝心なことが大綱にも中期防にも書かれていません。
 国際的な安全保障環境の改善が、周辺国との外交関係や友好関係を深めるという意味であれば、日本国憲法の精神に合致するものであり、積極的に推進するべきです。しかし大綱は、北朝鮮と中国の国名をあげて警戒の対象としています。また「中東から東アジアに至る地域」の安定に努めるとしているのです。
米国は現在、中国と北朝鮮のミサイル攻撃を抑止しつつ、「不安定の弧」(中東から東アジア)で発生する紛争への介入を軍事の基本戦略としています。大綱の提起する国際的な安全保障環境の改善とは、米国の軍事戦略と一体となることを意味しています。
大綱は、そのために教育体制・部隊の待機態勢・輸送体制を整備し、自衛隊の本来任務に格上げするとしています。これは、中東から東アジアで紛争が発生した場合には、米軍と共に積極的に軍事介入を行うという宣言に他なりません。

軍事力至上主義への転換

 大綱では防衛力を、「安全保障の最終的担保」と定義しています。また「国際平和維持活動を外交と一体のものとして主体的・積極的に行っていく」とうたっています。日本国憲法は第9条で「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めています。ところが大綱は、軍事力の行使を安保の最終担保、外交と一体のものと位置づけているのです。これは事実上の憲法否定です。
 1941年12月8日、日本は太平洋戦争に突入しました。それから63年後の2004年12月9日に日本政府は国際法違反の米国のイラク占領への協力延長を決定し、10日には憲法を否定する大綱と中期防を決定しました。戦争に反対し、東北アジアの共存を求める私たちは、平和のための取り組みを一層強めなければなりません。