出版物原水禁ニュース
2005.2号 

2005年を核廃絶へのターニング・ポイントに

特定非営利活動法人  ピースデポ 中村 桂子

 ヒロシマ・ナガサキの被爆から60周年を迎えた今年、核をめぐる世界の情勢は深刻さを増しています。世界中で核拡散の危機がひろがる一方、米国を筆頭とする核保有国は、冷戦終結後数十年がたったいまも圧倒的な数の核弾頭を保有し、さらには核兵器の近代化をはかるなど、核の力に依存する政策をとりつづけています。既存の核不拡散体制の危機が叫ばれているなか、今年5月2日から27日には、5年に一度の核不拡散条約(NPT)再検討会議がニューヨークの国連本部で開催されます。核を持つ国、持たざる国が一同に会するこの会議の場を、世界の流れを核廃絶に向けて動かすターニング・ポイントにするべく、世界各地の市民団体、NGOが活発に動きだしています。この局面を迎えて、私たち日本の市民が核廃絶へのイニシアティブをとっていくことの重要性はますます大きなものとなりつつあります。

NPT体制と新アジェンダ連合の果たした役割

NPTをめぐってどのような問題が存在するのでしょうか。1970年に発効したNPTは、その名の通り、核の拡散を防止することを目的とした条約ですが、大事なことは、NPTが「核兵器国(米、ロ、仏、英、中)が軍縮にむかって誠実に交渉することを明記した唯一の国際条約」であるということです。5年に1度開かれる「再検討会議」には、その「核軍縮義務」を核兵器国がきちんと履行するよう、非核兵器国(上記の5ヵ国以外)が求めていく多国間交渉の場という役割があります。

1995年の再検討・延長会議を経て、前回2000年の再検討会議においては、重要な進展がありました。非核兵器国のリーダー的存在である新アジェンダ連合(NAC)の活躍により、核軍縮のための13項目の実際的措置を含む「最終文書」が全会一致の合意により採択されました。その中には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効と核実験のモラトリアム、核の役割の低下、米ロの戦略・非戦略核兵器削減の促進など、重要な項目が含まれていますが、もっとも重要な点は、核兵器国が核廃絶を達成するという「明確な約束」が記されたことにあります。

しかし、2000年以後の進展は芳しくないものでした。核兵器国と非核兵器国の主張の対立は激化し、2005年の再検討会議に向けた最後の準備委員会として重要な意味を持っていた昨年の準備委員会は、実質的な成果をあげることに失敗しました。米国を中心に核兵器国は、「ならず者国家」やテロリストの手に核がわたることが最大の脅威であると位置付け、イラン、イラク、リビア、北朝鮮などのNPT不遵守問題、核の「闇市場」問題など、不拡散問題のみに議論の焦点を当てるという主張を展開し、「情勢は変わった」として、2000年をはじめ過去の核軍縮への誓約を「過去の遺物」にしようとする姿勢をあからさまにしました。

このような核兵器国の主張に対し、多くの非核兵器国は、NPTが「核軍縮」と「核不拡散」の両輪のうえに成り立つものと反論しました。不拡散への取り組みの強化の重要性も認識しつつも、最強の核兵器国である米国自身が核軍縮に関する国際合意を無視し、あたかも核保有が既得権であるかのように振る舞い続けていることそのものが核拡散を誘発する原因となっている、という認識です。こうして、両者の議論は並行したまま、2005年を迎えることになりました。

NPT再検討会議成功のカギ

今年5月の再検討会議でどのような進展がありうるのか、見通しは非常に不透明です。しかし、一つ言えることは、2000年会議でのNACの活躍の背景にあった、核廃絶への国際世論の盛り上がりが、今回も成功へのカギを握ることになるということです。2003年の準備委員会をきっかけとして、自治体の首長と市民、NGOが連携し、核廃絶への具体的な道筋をつけようという動きが始まりました。広島、長崎の両市長が会長、副会長を務める国際NGO「平和市長会議」は、2020年に全ての核兵器を廃絶することを目指した段階的行動計画「核廃絶のための緊急行動─2020ビジョン」を立ち上げ、これを支持する動きが世界中に広がっています。5月1日のニューヨークでの大行動をはじめ、来る5月の再検討会議会議の周辺でさまざまな行動が呼びかけられています。2月19日には2020ビジョンに呼応した「核廃絶は市民の手から─被爆60年を核廃絶への転換の年に! 2.19NPT市民集会」が東京で開催されます。いままさに、被爆60周年を迎えた私たち日本の市民の「平和力」が問われているのではないでしょうか。