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2005.3号 

ブッシュ政権の敵意と北朝鮮(1)

核兵器を取引にする危険

 2月11日、北朝鮮外務省は第2期ブッシュ政権の敵視政策が変更されていないとして、「6ヵ国協議参加を無期限中断し、核兵器庫を増やす」との声明を発表しました。同声明はまた「われわれはすでに核兵器を製造した」とも述べています。

「核兵器庫を増やす」とは、核兵器の数を増やすとの意味で、北朝鮮政府はこれまで何回か核兵器の保有をほのめかしてきましたが、このように外務省声明で核兵器保有を言明したのは、今回が初めてです。

前日の緊迫したなかにもさわやかな印象を残したサッカーW杯予選翌日の、なんともいえない重苦しい声明でした。声明は「わが共和国を敵視してあくまで孤立、圧殺しようとする第2期ブッシュ政権の企図が完全に明らかになった」と述べています。

敵意に満ちたブッシュ大統領の就任演説

第2期ブッシュ政権は、ネオコン(新保守派)の象徴的存在であったウルフォウィッツ国防副長官が留任する一方、良識派といわれていたパウエル国務長官が退任し、ブッシュ大統領の思想に最も近いといわれるライス補佐官が国務長官に就任しました。この結果、第2期ブッシュ政権の4年間は保守的な福音主義的使命感をもつ大統領と、力の政策による世界覇権を求めるネオコンの組み合わせで政策が推進されるでしょう。

まず、ライス新国務長官は就任の議会公聴会で、北朝鮮などを「悪の拠点」と呼びました。続いて1月20日、ブッシュ大統領は第2期目就任演説で「圧政国家を終わらす」ことを今後4年間の最優先課題としてすえると述べ、「必要な時には自国と友邦を武力行使によって守る」と言明しています。

就任演説は基本理念を述べたのであって、具体的戦術を語ったのではありません。しかし北朝鮮が強い危機感を抱いたことは十分想像できます。また6ヵ国協議再開に応じたとしても、ウラン濃縮問題で協議がもつれることは必至で、むしろ進展しないという状況自体が、北朝鮮を追いつめつめていくとも考えられます。

六者協議は当初、北朝鮮が黒鉛減速炉から取り出した使用済み核燃料の、プルトニウム協議から始まりましたが、現在は濃縮ウラン施設を北朝鮮が保有していて、ウラン核兵器の製造に進んでいるとの話になっています。

北朝鮮はウラン濃縮施設を保有しているか?

しかし「核の闇市場」問題が発覚し、北朝鮮がパキスタンからウラン濃縮施設を購入したとの疑惑から、すでに北朝鮮はウラン濃縮施設を完成し、高濃縮ウランを製造していると、米国は主張し始めました。

このウラン濃縮について、北朝鮮は否定し、中国もその確証はないとの立場をとっています。米国内でも存在の不確かなウラン濃縮問題で時間を費やしている間に、プルトニウムによる核兵器製造が進む危険がある。もう一度プルトニウムに焦点を当てて、早急な解決を図るべきだとの意見が強まっていました。

その代表的な意見が、米・フォーリン・アフェアーズに掲載されたセリグ・ハリソン(米国際政策センター・アジア研究ディレクター)による「北朝鮮によるウラン濃縮というアメリカの疑惑」です。この論文は朝日新聞発行の「論座・05年2月号」に掲載されています。

ハリソンは、北朝鮮はウラン濃縮施設の建設に動いたが、それは失敗している。「03年4月、仏、独、エジプト当局は、総発注量200トンのうちの22トン分の高強度アルミ管が北朝鮮に送られるのを阻止している」。しかし、米政府によって「発注され、北朝鮮に届いたアルミ管があるのかどうかの証拠は示されていない」。99年に北朝鮮は日本企業から2個の電気変換器を購入しようと試み、03年にも3個の変換器を調達しようとして、当局に阻止された。しかし英国際戦略研究所(IISS)は、「兵器級ウランの生産に必要な高速遠心分離器を備えたウラン濃縮施設を生産体制にもっていくには、数百個の変換器が必要になる」「IISSは、平壌が変換器の調達に失敗している以上、ローターとキャップ用の特殊鉄板、ローターベアリングなどの重要な部品も入手できていない可能性がある、と結論づけている」と紹介しています。

「原子物理学者のリチャード・ガーウィンによれば、初歩的な核兵器1個をつくるのに必要な核分裂物質は60キロ。この量の核分裂物質をウラン濃縮によってつくるには、1,300の高速円心分離器をフルに3年間稼働させなければならない」と紹介して、北朝鮮はウラン濃縮施設を完成させていないとしています。

これに対して、ミッチェル・リース前米国務省政策企画局長が、同じフォーリン・アフェアーズ3・4月号に、北朝鮮のウラン濃縮施設の「現場は押さえてある」との論文を寄稿したと伝えられています。米政府は同じ情報に基づいて、北朝鮮ウラン濃縮の事実を中国に説明したとも伝えられています。次号にリース氏の論文を紹介しながら北朝鮮の核問題を検証します。


(W)