出版物原水禁ニュース
2005.4号 

ブッシュ政権の敵意と北朝鮮(2)

時間はあまりないのかも知れない

進展望めない6ヵ国協議

 北朝鮮の核問題をめぐる6ヵ国協議は、当分開催は難しく、仮に開催されたとしても進展は望めないでしょう。

2月11日に北朝鮮外務省が「6ヵ国協議参加を無期限中断し、核兵器庫を増やす」との声明を発表した後、2月19日〜21日に中国共産党の王家瑞・対外連絡部長らが訪朝しました。金総書記は中国代表団に対して「条件が整えば、いつでも6ヵ国協議に応じる」「米国が信じるに足る誠意を示し、行動することを期待している」と述べたと伝えられました。

北朝鮮外務省は3月2日、「正当防衛のため核兵器をつくり、またつくっているのは当然だ」とした上で、(1) 米国が「圧政国家」とした発言を謝罪、撤回、(2) 制度転覆を狙う敵視政策を放棄、(3) 敵視政策放棄を実践行動で示す──の3条件を米国に要求し、3条件に米国が応じればいつでも6ヵ国協議に出席する」との長文の備忘録を発表しました(3月2日・共同)。

これに対して米国は北朝鮮が「前提条件なしで協議に戻るよう」求め、3条件の要求を拒否しています。しかし2月26日にソウルで開催された日米韓の6ヵ国協議・主席代表会合では、平和的解決の方針は合意したものの、日米が前提条件なしの「6ヵ国協議への復帰」を求めたのに対して、韓国は「北朝鮮の要求は前提条件とはいえない」として「無条件復帰」に同意せず、三国合意は得ることができませんでした。

本来なら日本政府が米国に柔軟な姿勢を求めるべきなのに、日本政府は拉致問題を含めてまったく政策を出せないでいます。このような状況のなかでは、北朝鮮の核問題解決は当分望めないでしょう。

北朝鮮はどこまで核兵器開発を進めているか

このように進展の望めない情勢ですが、米国は北朝鮮の核兵器について、明確な保有を言明していません。これまでのところ米CIAが1,2個の核兵器保有を議会で証言しているだけです。中国は保有について否定も肯定もしていませんが、韓国は保有を否定しています。

ただプルトニウムについては、かなりの量を再処理し、保有していると想定されます。IAEA(国際原子力機関)は、封印されていた使用済み核燃料棒8,000本の一部は04年末までに再処理され、現在も再処理工場が操業しているとしています。さらに実験用黒鉛原子炉も操業していると推定しています。 IAEAの推定が正しければ、北朝鮮は核爆弾数発分のプルトニウムを保有し、今後さらに増やしていくと考えられます。ただプルトニウムの保有と核兵器保有とは別です。

核兵器の原理は簡単で、高濃縮のウラン235や純度の高いプルトニウム239を一定量集めれば、爆発(核分裂)します。しかし、核兵器の製造は簡単そうで難しいといえます。ロシア原子力庁のアンティポフ副長官が3月上旬に来日した際、「北朝鮮には核爆弾を製造する能力はない」とのべたと伝えられています(3月10日・共同)。

ただ北朝鮮が核兵器製造を目指していることは明らかで、現在はまだ技術的に困難でも、いつかは解決すると考えられます。つまり時間はあまりないのです。いったん核兵器保有への道を歩み始めたなら、さらなる核兵器拡大路線へと進むことは歴史が教えています。

ウラン高濃縮施設については証拠がない

先月、米・フォーリン・アフェアーズでセリグ・ハリソン(米国際政策センター・アジア研究ディレクター)が、「北朝鮮はウラン濃縮施設の建設に動いたがそれは失敗している」と述べ、それに対してミッチェル・リース前米国務省政策企画局長が、同じフォーリン・アフェアーズ3・4月号に、北朝鮮のウラン濃縮施設の「現場は押さえてある」と反論していることを紹介しました。

リースの反論を読むと、「北朝鮮はウラン濃縮計画をもっている」と述べてはいても、ウラン濃縮を進めている具体的証拠は提示していません(ハリソンも同じ論旨で再反論している)。リースは「03年4月にフランス、ドイツ、エジプトの当局は、北朝鮮がドイツ企業から購入し、(中国を経由して)本国へ送ろうとしていた22トンの高強度アルミ管を摘発している」ことを、北朝鮮がウラン濃縮を行っている証拠だと述べていますが、ハリソンは逆にこの摘発を、北朝鮮の濃縮計画失敗の一つとして紹介しているのです。

高濃縮ウラン製造計画を北朝鮮がもっていたことは中国も認めています。しかし、それが実行に移されているかはまた別です。存在のはっきりしないウラン濃縮施設も含めた廃棄を求めることは、事態を複雑にするだけです(ハリソンとリースの主張はそれぞれ雑誌「論座」2月号と4月号に掲載されています)。

北朝鮮は出すべきカードはほぼ出し尽くしたといえます。中国政府も韓国政府も、米国が現在のような北朝鮮敵視政策を少し改めるべきだ、そうすれば北朝鮮は6ヵ国協議に参加するといっています。いま必要なのは、被爆国日本の未来を見通した対応です。


(W)