出版物原水禁ニュース
2005.4号 

核拡散の状況と「再処理」工場のプルトニウム生産

 イランや北朝鮮の核開発問題が連日のように報道され、カーン博士などが登場する「核の闇市場」の存在が明らかになるなどの現状は、核拡散防止条約(NPT)体制が崖っぷちにたたされている、そのあらわれです。核の「平和利用」を認めているNPT体制のもとで進められてしまった核拡散という現実の前で、核の拡散防止を目指す国際社会の枠組み作りがようやく真剣に取り組まれています。核兵器の拡散につながるウラン濃縮施設と再処理(プルトニウム抽出)施設の建設に5年間のモラトリアムを課すことなどを5月にニューヨークで開かれるNPT再検討会議に提出する、国際原子力機関(IAEA)の答申がその1つです。

ウラン濃縮とプルトニウムのモラトリアム

2月に出されたIAEA諮問委員会の答申では、NPTが認めている核の「平和利用」の権利を制限する方向に踏み出し、その方法として、ウラン濃縮と再処理施設の多国間管理が提案されています。

また、アナン国連事務総長が設立したハイレベル諮問委員会は、2004年12月、『より安全な世界と国連の強化に関する提言』のなかで、「各国は、NPTの下で認められたこのような施設を建設する権利を放棄することなく、自発的に、これ以上の濃縮・再処理施設の建設に関する期間を限定したモラトリアムを設定すべきである。」と提案しています。国連の大量破壊兵器委員会(WMDC)の委員長を務めるブリックス前IAEA事務局長も、「私の委員会では、すべての国の高濃縮ウラン及びプルトニウムの製造を禁止する条約に向けて進まなければならないとの非常に広範かつ強い意見がある。」と述べています(2004年6月30日)。

これらの提案に対して、国際協議では各国の利害関係の綱引きが行なわれ、簡単にモラトリアムが実現するとは予想できません。現に、日本は3月のIAEA理事会で、「平和利用の不当な制限になりかねない」と上記の答申を批判しました。核開発疑惑で問題のイランは早速、「日本など多くの国が、新規施設の建設凍結に反対だ」と自国のウラン濃縮の権利を正当化する発言に日本の消極姿勢を援用しています。

後ろ向きの日本

日本の後ろ向きな姿勢は、経済性を無視して進める国家プロジェクト・六ヶ所村の再処理施設という特殊な国内事情によります。その特殊性は、自ら行なっていたコスト試算でも再処理が高くつくことが明らかなので隠し、それが発覚した後でも不可解な理論を後づけして再処理路線を維持するなど、「原子力ムラ」以外では、国際的にはもちろん、国内でも全く説得力を持ちません。

日本がすでに持つ分離プルトニウムの量は40トンを超え、非核保有国の中では突出しています。核兵器一発が作れると考えられるIAEAが定めたプルトニウムの有意量、8kg(高度な技術ではより少ない量で製造可能)で割っても、核爆弾何発分になるでしょうか?

すでに貯蔵プール水漏れや、ガラス固化体貯蔵建屋設計ミスなど多くの重大問題を抱える再処理工場の危険性という最大の論議は別の機会に譲っても、高速増殖炉が破綻し、使い道はプルサーマルという不確かで危険なものしか無い今、余剰プルトニウムをさらに増やす再処理工場の稼働は全く必要ありません。新たなMOX工場建設などはもちろん論外です。

足元を見た反核運動を

国連の場で核兵器廃絶を唱える国が、説得力のない国内特殊事情を理由に再処理というプルトニウム生産を始める。こんな不思議が国際的に通る訳がありません。日本以外の別の国がこんな主張をすれば、国内の報道も、世論も全く違う反応をするのではないでしょうか? 日本の再処理工場だけを特別扱いにしろと頑張るのではなく、核物質の拡散をなくすための新しい国際規範作りに協力するべきです。六ヶ所の再処理工場では2004年12月、ウラン試験が始められました。本格的に施設が放射能で汚染されてしまうアクティブ試験がはじまる前にこれを止めて、国際的に責任のある国として核拡散防止策に何をするべきかを決断するときがきています。5月に開かれるNPT再検討会議にむけて、核兵器国に核軍縮をせまる世界中の人々の力を結集させることがもちろん第一ですが、国内で行われているこのようなごまかし=核開発疑惑国に口実を与えるような再処理政策を転換させ、核廃絶へ向かう確実な一歩を踏み出す運動を作り出しましょう。

これらの議論のもとになる詳しい情報は、原子力資料情報室や原水禁が支援する新しいウェブサイトの「NPT特集」コーナーをぜひご覧ください。


(K)