出版物原水禁ニュース
2005.4号 

放射線作業離職者に健康管理手帳を

全造船機械労組 健康手帳問題プロジェクト 石川島分会

退職後組合員の労災

 放射線作業従事者には離職後の法的保護が全くありません。放射線管理手帳(俗に青手帳)は交付されていますが、これも被曝線量管理の為で健康管理には全く役に立ちません。

 全造船機械労組は長尾光明さんの元職場がIHI(石川島播磨重工業)の100%子会社であったことから、企業内に組織を持つ関係で加盟申請を受け石川島分会を窓口として原発疾病の労災認定に係わりました。長尾さんは1977から1982年の4年3ヵ月間に東電福島第1原発等で作業に従事し70mSvを被曝し、退職13年後に多発性骨髄腫を発病、福島県の富岡労働基準監督署に労災申請したものです。原水禁、関西労働者安全センター(相談受付から申請の道筋をつけた)、そして全国の諸団体の支援協力が労働災害として長尾労災を認定(04年1月)させましたが、全造船は問題の解決を強く意識させられました。少なくとも健康手帳交付で離職後発症の不安の一部は軽減できるのではないかという思いです。

白血病認定基準で労災申請

 職場にはなじみ深い労働安全衛生法、その第67条には「健康管理手帳」と題して「がんその他の健康障害を生じるおそれのある業務に従事する労働者」には離職時、健康管理手帳を交付し、12業務(粉じん、コ−ルタール等)について健康診断・治療する権利を保障しています。手帳交付者数は最多は粉じん業務で17,564名、しかし、ベリリウム業務は1名で、交付条件は業務の危険性判断によるという考えです。この業務に放射線作業がありません。

 長尾さんは国の労災認定基準「電離放射線に係わる業務上外の認定基準について」に多発性骨髄腫の記載がありませんが、その白血病認定基準(1) 5mSvx従事期間A被曝開始から1年以上たってから発病(3) 骨髄性ないしリンパ性白血病、に則り申請しました。放射線作業に従事した結果のがん発生であるからです。

労災認定へ原子力事業者の本音

 原子力利用が始まってから30年間、労災申請数は14件、うち白血病関係は申請8件、認定5件という実態です。ところが、この認定結果にも東京電力をはじめとした電力事業者からは白血病と被曝との因果関係には「みなし認定」の主張がつきまとっていました。つまり、労災認定は労働保護の政策上でいわば甘く認定しているとの主張です。こうした底流にある力関係が放射線作業が、がんその他の障害を発生させるおそれの有る業務には該当しないとの雰囲気を醸成させてきたものと言えるでしょう。

厚労省多発性骨髄腫を検討

 富岡労基署から「りん伺」された厚生労働省は専門家検討会を3回に亘り開催する中で、多発性骨髄腫と被曝との関係には(1) 50mSv以上の被曝(2) 40−45歳以上の年齢での被曝(3) 発症年齢は被曝時年齢が高齢ほど高い、として長尾さんの多発性骨髄と被曝との因果関係を認めました。この検討と認定結果は恩恵・みなし認定という理屈に根拠を持って反証するものでありその意義は大きいのです。放射線作業従事者に健康管理手帳を交付することは無理難題ではなく合理性を持つ主張となりました。

放射線管理手帳は国が管理を

 放射線管理手帳を正しい位置に、手帳は健康保護の要である被曝線量把握にあります。この危険量管理は放射線作業従事中の本人の保護は勿論の事、後々の労災認定等で因果関係立証で必要になった際にも決め手になり、物証にもつながる重要なものです。企業から言えば作業上の必要から労働者以上にシビアに管理しています。「被曝線量は時間に正比例するので作業場所の空間線量率が50ミリレントゲン/時間の場合、1日の被曝量の限度が100ミリレムとすれば、2時間の作業しかできないということになる。船で2人ペア1日作業(8時間)は、放射線下工事では8人の作業者をあてなければならない。……延べ人数はこうした制約から割り出されたのである」(原発メーカ社内報)

 手帳の発行・線量は中央登録センターで一括管理されます。センターは原子力事業者と建設・保守事業者で経営管理上、作業者の線量把握を目的として設立されたもので、国の法的根拠はありません。だから手帳は退職時に事業者から本人に返却されますが、離職後紛失などで登録センターに照会しても、設立の経過から事業者経由でと、取得は容易ではありません。二重三重の重層請負の実態は、線量開示をますます難しくさせてしまっていると言えます。海外での放射線作業者の被曝線量登録管理制度は個人線量を国が把握し統計処理を行っています。

職場・地域から法制度をつくる

 私たちは原発の可否は国民的論議の場で、加えて現場の放射線作業従事者、特に離職者の健康保護問題がとり残されてはならないと考えます。まず、離職時に健康管理手帳を交付するようにし、従来から放射線管理手帳は離職時に本人に返却されていることから、現実的な取扱いとして健康管理手帳発行機関レベルで調整して「健康管理手帳」プラス「放射線管理手帳」を合わせて一括交付する取扱いを求めていきたいと思います。

 そのため、放射線作業を抱えて関連する産業別労組を軸に原水禁・全国労働安全センター・原子力資料情報室を構成団体として、全国の職場とそれを包む地域に理解を求め、手帳交付を求める全国署名とパンフレットを提起し、国政段階の取組みにも反映しつつ、働く者の放射線作業離職者の法的保護実現に向けて取り組みたいと思います。