出版物原水禁ニュース
2005.4号 

ミサイル防衛(MD)の問題点
一体化する米軍と自衛隊

ミサイル防衛(MD)とは何か

 MDとは、敵国から発射された弾道ミサイルを、自国の迎撃ミサイルで撃ち落すシステムです。現在、日米一体の研究・開発・配備が進んでいます。

弾道ミサイルは人工衛星を打ち上げるロケットと同じ仕組みで、その動き方は(i) 発射後にロケットが加速する「ブースト段階」、(ii) 宇宙空間を飛行する「ミッドコース段階」、(iii) 大気圏に再突入し目標に着弾する「ターミナル段階」の3つに分かれます。

MDは敵国のミサイル基地を人工衛星で監視し、発射された場合はレーダーで追跡し、(i) から(iii) の各段階に合わせた迎撃ミサイルを発射します。小泉政府は昨年末の「新防衛計画の大綱」で、MDを防衛政策の柱とし、装備の導入や法改正を決定しました。

これに伴い、敵国のミサイルを追跡するレーダーを装備し、「ミッドコース段階」迎撃の「海上配備型迎撃ミサイル(SM3)」を搭載したイージス艦と、「ターミナル段階」迎撃の「地対空誘導弾パトリオット(PAC3)」の増強配備を決定しました。

日本が米国の盾に

しかしMDには、様々な問題点があります。

(1)技術的に可能なのか

 敵国から飛んでくるミサイルに、自国の迎撃ミサイルをぶつけるには高度な技術が必要で、米国は未だ迎撃実験に成功していません。MDは実用可能性の不明な研究途中のシステムなのです。

また日本が(iii) の「ターミナル段階」迎撃として配備する「パトリオット」の射程距離は15kmで、日本全土をカバーすることはできません。

(2)国際法上の問題点

(ii) の「ミッドコース段階」では、敵国のミサイルは宇宙空間を飛行しています。宇宙空間での迎撃は、国際法の禁じた「宇宙の軍事利用」にあたります。また日本の真上であっても宇宙空間は「領空」ではなく「領空侵犯」になりません。地球上を回る人工衛星を、どこの国も撃墜できないのと同じです。

(3)集団的自衛権の行使

 日本は、MDに必要な軍事衛星を持っていません。敵国のミサイル発射の情報は、米国から受けることになります。一方で海上自衛隊のイージス艦が補足したミサイル情報も、米国に提供することになります。また政府は、ミサイルの目標が日本か米国かは判断不能であるから、どちらの場合も迎撃するとしています。MDでは日米の軍事行動は一体となるのです。これは憲法の禁じた集団的自衛権の行使です。

 仮に中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)がミサイルを発射した場合、米国本土に到達するには時間かかりますが、日本には約10分で到達します。迎撃できる可能性は極めて低いのです。結果的に日本は約1兆円の予算を投入して、米国にミサイル発射情報を提供する「盾」になってしまうでしょう。

(4)自衛隊が迎撃を判断

 武力攻撃事態法では、侵略の「おそれ」がある場合でも有事法が発動します。しかし今回の自衛隊法改定では、有事法発動以前のミサイル発射に対して、自衛隊指揮官の判断による迎撃を認めています。侵略の「おそれ」すらない状況でのミサイル発射とは、何を想定しているのでしょうか。この改定は国会の判断なく、自衛隊の判断で戦争を開始する権限を認めることになり、文民統制に違反します。

MDが東北アジアにもたらす危機

かつて米ソは迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)を結んでいました(米国は01年に脱退)。これは一方の迎撃ミサイルの配備が、他方の核ミサイルの増強をもたらし、結果的に軍拡につながるという認識からでした。現在の米国は、冷戦期とは比較にならない世界1の軍事大国・核保有大国です。その米国と日本がMDを推進すれば、東北アジアで新たな軍拡競争が始まる危険性があります。

 MDの推進と自衛隊法改定に、強く反対することが求められています。